磯ノ上 正明 院長の独自取材記事
いそのかみ皮フ科
(大東市/住道駅)
最終更新日:2024/07/03

学研都市線の住道駅から北へ、寝屋川を渡ると左手に「いそのかみ皮フ科」が見えてくる。磯ノ上正明院長は、親しみやすい笑顔と気さくな口調が印象的なドクター。開業当初から今日まで、社会の変化を見つめながら「皮膚科の医師として、今必要な医療は何か」を常に考えてきたという。現在は「肌・髪・爪」のさまざまな悩みに対して、専門性を追求しながら独自の工夫も凝らした診療を行う。また高齢者の下肢静脈瘤では「歩ける」ことを軸に置いた診療を重視し、日帰り手術も実施。費用面などにも配慮した上で、各患者にとって真にプラスになる治療の提案にこだわるのが、磯ノ上院長ならではの診療スタイルだ。「患者さんのお役に立ち、社会に貢献できるクリニックでありたいですね」と話す磯ノ上院長に、診療の実際やその奥にある思いを聞いた。
(取材日2024年5月29日)
肌・髪・爪の悩みから下肢静脈瘤まで幅広く対応
この地域で、長年にわたって診療されているそうですね。

1998年に、ここから少し離れた場所で開業しました。それ以前は勤務医として下肢静脈瘤の治療を専門にしていたので、当時は一般的な皮膚科診療と下肢静脈瘤の手術がメインでした。その後、2010年には現在の場所へ移転。「肌・髪・爪のクリニック」というコンセプトを掲げ、審美面に特化した診療も行うようになりました。「肌・髪・爪」はひらがなにすると「はだ・かみ・つめ」ですが、「・」の位置を変えると「はだか・みつめ」になりますよね。その人の本質を見つめた、ありのままを大事にした医療をしたいという思いも込めています。さらに最近は、ご高齢の患者さんが急速に増えています。そこで「私に何ができるかな」と思ったときに、いつまでもご自身で歩いていただくために、特に爪や足のケアが大事であろうと。そこで、「爪は一生涯の伴侶」という新たなコンセプトを設け、今後はさらに足や爪の診療に力を入れたいと考えています。
具体的には、どういった診療を提供されているのですか。
皮膚科の診療技術や治療薬は、この数年でかなり高度化したように思います。ですので広く浅くというよりは、手術を中心にした爪の治療や、円形脱毛症・男性型脱毛症・女性の薄毛などの髪のお悩み、また皮膚ではアトピー性皮膚炎や乾癬、掌蹠膿疱症等に加えて、エイジングケアの観点からのアドバイスにも対応しています。そのほか、以前から下肢のむくみや静脈瘤の診療にも取り組んでいます。アトピー性皮膚炎や乾癬、脱毛症などでは、生物学的製剤やJAK阻害薬といった新しいメカニズムを持つお薬も処方しています。また下肢静脈瘤の手術では、先進のレーザー治療も実施。1つの病気に特化するのではなく、地域で暮らす方に必要とされることが多い診療に対してオールラウンドに、しかもハイクラスに対応できればと考えています。
爪や髪の診療では、独自の工夫もされているとか。

爪の病気で多いのは水虫ですが、当院では爪の変形の診療にも力を入れています。若い方では、陥入爪という爪が皮膚に食い込んだ症状が多く、ご高齢になると爪が分厚くなって鷹の爪のように曲がる鉤弯症(こうわんしょう)も増えます。これらは外からの力で起こることが多く、靴を履くと痛み、歩くのが嫌になってしまうんですよね。実は、私の師匠にあたるドクターが爪の専門家でしたので、その教えをアップデートした手術を行っています。また髪に関しては、急速に進む円形脱毛症に対して、ステロイドの点滴治療を外来診療で行います。成果が見込める治療ですが、通常は入院で行われることも多いため、患者さんには費用や時間の負担の大きい治療です。当院では安全性を重視しながら通院でこの治療を受けてもらえますので、患者さんにとって大きなメリットになると思います。
ファイナンシャルな視点も加味し、患者本位の診療を
では下肢静脈瘤の診療で、大事にしていることはありますか?

下肢静脈瘤はご高齢の方に多く、足の表面で静脈の凸凹が目立ったり、足がむくんだりだるくなったりしますが、基本的には良性の病気です。最近では下肢静脈瘤の治療に特化したクリニックが増えていて、見た目の観点から手術を積極的に勧めることも多いようです。ただご高齢の方は「本当に手術をする必要があるのか」と思われることも多く、当院へ相談に来る患者さんもおられます。私は、その方の生活や今後の健康を考え、手術でむくみやだるさの軽減や歩行機能の維持や改善などが見込める場合には、手術を積極的にご提案します。現在のレーザー治療は痛みがかなり軽く、治療後の傷の回復も以前より早くなっています。単に手術件数を増やすのではなく、本当に必要な場合にのみ手術を行うという姿勢にはこだわっています。
患者さんの立場になって、治療方針や治療内容を考えているのですね。
そこは大事にしています。例えばアトピー性皮膚炎や乾癬では新しい薬である生物学的製剤が登場していて、当院でも治療が可能です。ただ投与には条件があり、すべての患者さんで使えるわけではありません。また非常に高価ですので、高額療養費制度の利用を検討したり、いつまで治療を続けるのかといった出口戦略も描いた上で、治療を始める必要があると思います。当院では高額療養費制度に詳しいスタッフや院外薬局さんと連携しながら、各患者さんにとって負担が少ない方法を一緒に見出し、安心して治療に取り組めるように努めています。
費用についても親身に考えてもらえるのはとても心強いです。

実は私の父は銀行員で、私自身も昔から金融や経営などには興味がありました。だから、治療を受ける患者さんにも有効にお金を使ってほしいと思うんです。また、日本の医療保険制度は素晴らしい仕組みだと感じています。というのは、私の家族も以前、長期にわたって高額な治療が必要でしたが、保険制度のおかげで十分な治療を受けることができました。だからこの制度は存続してほしいですし、活用してほしいという気持ちがあるんですね。ですから、患者さんには治療に関するファイナンシャルな情報についてもしっかりお話ししますよ。
見た目のケアにも取り組む「皮膚の養生所」へ
では、そんな先生が医療の道へ進まれたのはなぜですか?

私が学んだ高校の影響が大きいですね。政治家や実業家、学者などを多数輩出している伝統校ですが、そこの校風が「自分のことよりも社会の役に立つ人間になれ」というものでした。今でも同窓会に行くと、お金儲けより社会貢献を尊ぶ雰囲気があります。もちろん、クリニックを続けるためには経営的な視点も欠かせませんが、日々の診療に加え、健康や医療に関する考え方を発信したり、広げていくような役割も担っていきたいという気持ちは、ずっと持っていますね。
患者さんと向き合う際に大事にしていることはありますか。
特にご高齢の患者さんに対しては、できるだけお顔を見ながら、わかっていただけるようにお話をします。カルテの入力はスタッフに任せて私は患者さんとの会話に専念する、同じ説明を待合室でスタッフからもしてもらう、などの工夫もしています。私は「この患者さんにはこの治療が適している」と見通しがつくと、ついうれしくなって早口になりがちですので、そこは気をつけています(笑)。
スタッフさんも、さまざまな役割を担っているのですね。

そうですね。例えばマイナンバーを活用して高額療養費制度をスムーズに利用する方法があるのですが、それはあまり知られていません。ですので詳しいスタッフが、マイナンバーを登録するところから説明してくれています。また、爪や下肢静脈瘤の手術後に行うケアの説明や、アトピー性皮膚炎の自己注射に伴う患者さんへの指導でも、看護師が力を発揮してくれています。気さくなスタッフが多く、患者さんからも慕われていて、人材には恵まれています。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
高齢化やがん治療などの副作用に伴う見た目の変化、今後は性別を問わずここに悩む人が増えるのではないかと考えています。ですので今後は、医療的な観点から見た目のお悩みにアプローチできないかと、準備を進めているところです。また、足元や爪を大事にする必要性や方法も伝えていきたいですし、さまざまな相談にも対応したいと考えています。頭のてっぺんから足の先までつながる皮膚を診ているわけですから、最終的には「皮膚の養生所」というコンセプトで、幅広く地域のお役に立てればうれしいですね。