前田 秀典 院長の独自取材記事
まえだ耳鼻いんこう科
(八尾市/河内山本駅)
最終更新日:2025/06/05

近鉄大阪線の河内山本駅から北へ歩いてすぐ、クリニックビルの2階にある「まえだ耳鼻いんこう科」。地域で長く親しまれてきた「あまの耳鼻咽喉科」を継承し、2019年に前田秀典院長が開業した。前田院長は、近畿各地の総合病院や耳鼻咽喉科クリニックで幅広い診療経験を積んできた。「患者さん一人ひとりのことを考え、診療することにやりがいを感じています」と、穏やかな口調で語る。患者数が多い難聴に関しては、専門に診る外来を設けている。これまでの診療経験を生かし、見落としのない診断と総合病院との連携も行う。自身も父親であり、子どもにも気持ち良く通ってもらいたいと語る前田院長に、診療への思いや最近導入した機器などについて聞いた。
(取材日2025年4月25日)
難聴の相談など、患者に寄り添った診療を行う
先生が医師をめざした経緯を教えてください。

高校卒業後は、医学部ではない大学に進学していたのですが、進学後から人の役に立ちたいという思いが強まっていきました。自問自答する中で、行き着いたのが医療系の仕事だったんです。親には申し訳ない気持ちもありましたが、正直な気持ちを伝え、当時の大学を辞めて再受験し、医学部に入学しました。医学部では、5歳年下のフレッシュな学生が多かったのですが、私と同世代の学生もいましたね。さまざまな友人と交流しながら充実した学生期間を過ごすことができました。その後は初期研修先の医師や先輩の影響で、耳鼻咽喉科を専門として選択し、勤務先で担当した患者さんからはオールマイティーな診療技術を学ばせていただきました。特に旧NTT西日本大阪病院(現大阪けいさつ病院)では、頭頸部がんの治療に携わった経験も。今までの積み重ねが、重大な疾患を見逃さないための丁寧な診察スタイルに結びついていると思います。
こちらの場所で開業された経緯について教えてください。またどんな患者さんが多いですか?
以前、この場所では天野先生が「あまの耳鼻咽喉科」として、長い間地域の耳鼻科診療に尽くされていたんです。以前の勤務先の上司から、天野先生が後任者を探していると紹介があり、ご縁があって継承させていただくことになりました。継承前には一緒に診察させていただく機会もあり、天野先生から患者さんに私をご紹介してくださったので、とてもスムーズに診療を引き継ぐことができたと思います。当院は、河内山本駅から近いこともあり、子どもから年配の方まで幅広く来院いただいています。18時半まで外来受付を行っていますので、会社や学校帰りの方にも通っていただきやすいですね。再診以降であれば、ウェブ予約を取ることも可能です。また、この近辺は長年お住まいの方が多い地域ですので、ご近所からは高齢の方が多く通われています。
高齢の方からは、難聴についての相談が多いそうですね。

そうですね。家族に指摘されて来られる方が多く、ご本人に自覚症状がないこともあり、ためらってなかなか来られない方もいます。原因として、単純に耳垢が詰まっていたというのが一番多いのですが、中には病気が隠れている場合もあります。中耳炎が原因で聞こえにくくなることもありますし、気になる症状があれば早めにご相談いただきたいですね。診察では、これまでの経過や困っていることをお聞きし、聴力検査を行います。場合によっては補聴器をお勧めすることもありますが、検査結果から難聴が認められても、補聴器を使うかどうかの判断は、あくまでも患者さんの症状を総合的に診ながら相談するようにしています。
耳のかゆみにも対応。独自の対策法を提案する
補聴器に特化した外来を開設されているとお聞きしました。

ご高齢の方の場合、補聴器の販売店まで行くことが難しく、家族に頼んでまで買いに行くことを躊躇される方も。当院では、患者さんの負担を少しでも軽くできればと、提携している補聴器の販売業者さんに来てもらっています。外来では診療を受けながら院内のスペースで補聴器を試してもらうことができますので、わざわざ店に行く必要がありません。通い慣れた場所で、さまざまな種類の補聴器を体験できますし、必要に応じて私から患者さんにアドバイスをさせていただくこともできます。患者さんのニーズも高いため、より充実させていきたいですね。
新しく検査機器を導入されたそうですね。診療に変化はありますか?
継承の際に引き継いだエックス線撮影機器があったのですが、新しい物に更新するにあたり、エックス線の撮影だけではなくCT機能を兼ね備えた物を導入ました。副鼻腔炎をはじめ鼻骨骨折の診断など、鼻に関する診察においてかなり役立てることができています。副鼻腔炎といっても、歯が関係する副鼻腔炎、カビが原因となる真菌性副鼻腔炎など種類があり、治療方法も異なります。エックス線検査だけでは診断が難しい症状でもCT機能を利用すれば診断がつきやすくなるものがあるんですよ。喉に関するがんに関しては、主にファイバースコープで診断を行い、精密検査を行ったほうが良いと判断した場合には、総合病院を紹介させていただきます。声が出にくい、飲み込みづらいといった症状がある方には、早めの受診をお勧めしています。
その他に先生が力を入れていることがありましたら教えてください。

実は、耳でいうと難聴の次に多い症状が「耳のかゆみ」なんです。些細な症状だと思われるかもしれませんが、耳のかゆみで悩まれている方は、非常に多いんですよ。年齢を問わず起こりますし、ご本人にとってはとてもつらいもの。基本的にはアレルギー体質の方が多く、かゆみのせいでしょっちゅう耳を触ってしまうのが特徴です。触るとまたかゆくなるという悪循環で、傷がついて痛くなったり、じゅくじゅくしたりしてから受診される方も多いですね。「耳を触らないで」と言うのは簡単ではありますが、ご本人には難しい。当院では、これまでの経験から私なりに工夫した方法で、耳のかゆみのコントロールが図れると感じています。「こんなことで」と思わずにぜひ相談してほしいですね。
一人ひとりに寄り添った治療を大切にする
診療の際に、先生が大切にされていることを教えてください。

勤務医時代には、幅広い耳鼻科疾患の治療にあたってきました。一つの病気や症状であっても、いくつかの治療方法が考えられますし、使うお薬も複数の中から選べることもあります。当院では、患者さんを診た上で、私がお勧めできるすべての治療法・治療薬をご提示し、その中から患者さんの生活や要望に合った治療法を相談しながら決めていくようにしています。同じ症状であっても、AさんとBさんでは最適な治療法は違う、いわばオーダーメイドの治療。それぞれの患者さんの事情をしっかりと知るためにも、診察では患者さんのお話をよく聞くようにしています。患者さんは、ご高齢の方も多いですから、私もスタッフも大きな声でゆっくりとお話しするように心がけていますね。
子どもで気になる耳鼻咽喉科疾患はありますか?
小さなお子さんはよく鼻水が出るものです。その症状に慣れてきてしまうと、親御さんも、いつものことだからと受診をせずに様子を見られる方も少なくありません。しかし、子ども自身がそれに慣れてしまい、大人に言わないまま鼻水が出る症状が続くと、知らず知らずのうちに中耳炎になってしまうこともあります。子どもの鼻の調子が悪いと感じたら、様子をよく見ていただき、一度は耳鼻咽喉科を受診してほしいですね。私の経験では、3〜5歳くらいのお子さんはあまり自分のことを言わないので、受診した時には「もっと早くに来てくれていれば」となりがちです。不思議と6歳くらいになると、鼻水が出ている、聞こえにくい、と教えてくれることが多いようです。
最後に、これからの展望をお聞かせください。

患者さんが来院しやすい、相談しやすいクリニックを今後も進めていきたいと思っています。患者さん一人ひとりのことを深く考え、診療することが私にとっての大きなやりがいです。今後も地域の皆さんとの関係を育てていき、患者さんと丁寧に向き合い、わかりやすい説明を心がけて診療していきたいと思います。患者さんが通いやすいクリニックであるために、スタッフの働きやすさも大切にしたいですね。開業当時からずっと働いてくれているスタッフが3人いるのですが、とても頼りになる存在です。患者さんにとってもなじみあるスタッフが対応することで、安心して通っていただけるかと思います。ミーティングや面談などを重ね、スタッフの声にも傾ける姿勢を忘れないようにしたいですね。