岩浅 義彦 理事長の独自取材記事
医療法人 イワサクリニック
(枚方市/香里園駅)
最終更新日:2021/10/12
枚方市の産婦人科「イワサクリニック」へは、京阪本線香里園駅東口から3分ほどで到着。岩浅義彦理事長は大学卒業後渡米し、アメリカのセントルイス大学病院で産婦人科診療を習得した。帰国後は大学教授を経て地元である香里園で1986年4月に開業、以降今日まで約2万人の分娩を手がけ、不妊治療や体外受精も行い、精度の高い治療に努めている。女性の生涯にわたる健康や心身のサポートにも注力し、患者とは長いつき合いになることも多い。2017年には京都府立医科大学大学院准教授だった新院長を迎え、さらに充実した治療体制を構築。「全ての患者様はVIP待遇を受ける権利がある」との理念を掲げ、適切な判断で安全な医療を追求し続けてきた岩浅理事長に、診療内容やこれまでの歩みについて聞いた。
(取材日2018年3月20日)
香里園で開業し30年超、地域と共に歩む
趣があって歴史を感じさせる素敵な外観で、通院しやすい立地にありますね。
私は京阪香里園の出身です。アメリカやカナダで産婦人科の医師としてのスキルを学び、帰国後は国立大学で教授をしていましたが、より実地診療に関わりたいと考えるようになり、思い切って地元であるこの場所に開業しました。香里園は京阪の芦屋と呼ばれる高級住宅地であり、駅からは多くのバスが発着しますので、近隣から多くの患者さんが来院されています。また、私が米国で医療技術を習得したことを知り、国内外から外国人の患者さんも多数受診されます。
現在の診療内容について教えてください。
最近では、分娩で受診される方が約4割、体外受精を含めた不妊治療で受診される方が約4割、更年期などの婦人科診療が約2割です。開業から現在まで約2万例の分娩を実施してきましたが、安全に十分配慮したお産を積み重ねてきました。産科関連では他に、マタニティ教室や、小児科の医師による乳児検診も行っています。不妊治療については、窓口は当クリニックですが、香里園の駅前に不妊治療専門の施設を新たに設け、新しい機器を導入して、体外受精や顕微授精はそちらで行っています。また2017年には新たに京都府立医科大学大学院准教授の岩佐弘一先生を院長として迎え、更年期や思春期など女性の生涯にわたるサポートにも、これまで以上に一層力を入れています。このように、産科婦人科に関する患者さんの幅広いニーズに対応できる体制を整えています。
分娩については、どのような点を大事にしていますか。
何よりも、「お母さんと赤ちゃんの健康と安全」です。分娩が始まると、短時間のうちにさまざまな変化が生じますし、時に命の危機にかかわるようなトラブルも起こりますが、早めの決断と医療的な対応、処置を行っています。あれこれ迷いながら経過をみているうちに手遅れになる、それだけは避けたいと考えているので、院内では即座に帝王切開手術もできる設備を備えています。おかげさまで、今までに取り上げた赤ちゃんは2万人を超えます。そして、医学的な安全性を確保した上で、患者さんにはできるだけ快適に過ごしていただきたいと考えています。「全ての患者様にはVIP待遇を受ける権利がある」。この言葉は、私が所属する東京オペグループという勉強会のスローガンですが、アメリカで医療を学んだ私にとっては非常に納得できる内容であり、当院の理念にも掲げています。
安全で納得できる妊娠・出産のために
産前産後のサポートも手厚い内容ですね。
分娩は、やはり女性の心身にとって大仕事です。分娩後はゆっくり過ごして体調を整え、退院後の育児に前向きに取り組んでいただけるように、正常分娩では5日間、帝王切開では8日間の入院期間を確保しています。母児同室が基本ですが、お母さんの体調や事情に応じて、新生児室でお預かりすることもできます。また、乳房マッサージや沐浴指導などは、自宅でも安心して取り組めるように丁寧に指導。経験豊富な調理スタッフによるおいしい食事も好評ですね。それから、今日の子育てはどうしても孤立しがちな面がありますので、母親教室や両親教室、マタニティヨガやマタニティ整体、育児サークルなど、お母さん同士のつながりを深められるような機会を数多く設けています。
最近では、分娩を行う開業クリニックは減少傾向にあります。
確かにお産はリスクを伴いますし、日本でも医療行為に対する訴訟が増えていて、個人のクリニックでの分娩は難しくなりつつあるのかもしれません。ですが、私は開業当初からアメリカの大学にて臨床経験があり、帰国後日本の国立大学病院で大学教授としての経験があります。意欲的に業務にあたってくれるスタッフもそろっています。そして何よりも、お産は新たな生命の誕生であり、それをサポートするのは産婦人科の医師として大きな喜びなのです。今後も、変化するニーズに対応しながら、お産は続けていきたいですね。
不妊治療について、ご紹介ください。
開業当初から実施してきた不妊治療ですが、現在も多くの患者さんが全国よりご相談に来られます。タイミング法などの基本的な不妊治療から人工授精、体外受精まで、さまざまな治療に対応しています。不妊治療の経験豊富な医師と、農学部大学院博士課程のエキスパート培養士が、精度の高い治療に努めていますよ。また、何よりも患者さんの思いや要望を大事にしており、治療開始前には患者さんの望む治療や検査について、時間をかけたカウンセリングでじっくり伺います。そこでのやりとりを通じて、医師やスタッフと信頼関係を築いていただくことが、納得できる満足度の高い治療にもつながると考えています。また、不妊治療は費用面でも不安をもつ患者さんが多いので、あいまいにせず明確にお伝えしています。豊富な治療経験をベースに、心のケアと技術の両面から、それぞれの患者さんに最適な治療を見出していきたいと考えています。
診療体制を充実させ、女性の生涯に寄り添う
海外で産婦人科の医師としての実践を積まれたそうですね。
医学部生だった時期に米軍の医療施設で研修を受ける機会があり、アメリカの医療に大きな衝撃を受けました。そこで一念発起し、米国で臨床研修を受けるためにアメリカの医師免許を得て、1970年に渡米。アメリカ陸軍病院、セントルイス大学病院で勤務した後、1976年からはカナダのサスカチワン大学病院での勤務を経験しました。アメリカでの研修内容は非常にハードでしたが、そのおかげで、4年ほどで産婦人科専門領域の診療に対応できるようになりました。アメリカは当時から訴訟社会で、医療行為に対する訴訟も非常に多かった。それに対応できる医師を育てるため、研修内容も非常にシビアなものでしたが、開業してやっていける技術や、素早い決断力を養うことができましたね。
海外からの患者さんもいらっしゃいますか。
私が英語で診療できますし、アメリカの大学病院で行われている医療に近い雰囲気で診療を進めますので、海外の方にも安心して治療を受けていただけるのだと思います。カメラを構えて分娩に立ち合ったアメリカ人のご主人もいらっしゃいましたね。また、患者さんだけでなく、イギリスのケンブリッジ大学病院から助産師研修生を受け入れたこともありますし、私はアメリカの医療使節団としてブラジルやキューバ、中国に医療援助のため派遣されたこともあります。これらの経験は、日々の診療にもフィードバックしています。
今後の展望についてお聞かせください。
開業以来ずっと院長を務めてきましたが、2017年には理事長に就任し、新たな院長として京都府立医科大学大学院准教授の岩佐弘一先生を迎えました。岩佐院長は女性医学が専門で、ホルモン療法や骨盤性器脱など、女性の一生涯に関わる診療にも精通しています。女性はその年齢に応じてかかりやすい病気があり、また女性も男性と同様に学び働くようになった今日では、女性特有の体調不良で悩む方が増えています。妊娠や出産を含めた、女性の一生涯の健康を、そして日本での最高の医療が提供できるように日々精進し、患者さんを長くサポートしていければうれしいですね。新生児の予防接種や女性医師による診療、スマートフォンを利用した新たな診療方法も導入しています。気になることがある方は、ぜひ気軽にご相談いただければと思います。