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森口 久子 院長の独自取材記事

森口医院

(守口市/土居駅)

最終更新日:2022/03/23

森口久子院長 森口医院 main

「さまざまなメディアで情報があふれている時代だからこそ、より一層、人と人との関わりを大切にしたい」と優しいまなざしで語るのは、京阪本線の土居駅から徒歩5分のところにある「森口医院」の森口久子院長。日本小児科学会小児科専門医として子どもを専門的に診るだけでなく、高齢者まで幅広い患者のプライマリケアを行う医師として地域医療の一端を担っており、長年培ってきた患者との信頼関係は厚い。地域のかかりつけ医としての役割を担いながらも、20年以上にわたり発達障害の傾向がある子どもから成人までの支援にも深く携わっている。義父である先代院長が開業してから半世紀以上。診療スタンスや地域の患者への思いなどざっくばらんに語ってもらった。

(取材日2019年3月11日/再取材日2022年3月1日)

プライマリケアの医師として地域の患者とともに歩む

院長のご経歴と、クリニックの歴史についてお聞かせください。

森口久子院長 森口医院1

1984年に近畿大学を卒業してから、医学部の付属病院の小児科に入局しました。その後、医局から大学院特別研修生として大学に通うことになり、その間に結婚、出産もしています。もともと主人の父がこの場所で戦前から内科の診療所を開業していたのですが、同じく小児科の医師である私の主人は、病院小児科での勤務を全うしたいと思っていたので、いずれは私がここを継ぐという気持ちは持っていましたね。第1子が生後6ヵ月の時から小児科専門医の資格を取るために大学へ通いつつ、この診療所で義父を手伝っていたのもその思いがあったからです。そんな中、1992年に突然義父が亡くなったため、それを機に私が引き継ぎ、以来、院長として診療を行っています。

子育てをしながらの仕事は大変だったのではないですか?

そうですね。フルタイムで仕事をしながら3人の子どもを育てていたので、正直なところ毎日が忙しすぎてその頃のことを思い出せません(笑)。でも、周りの人にたくさん支えてもらいながらなんとかやってこられました。子育ての経験があるからこそ、今、小児科の医師として、また、地域のかかりつけ医として、お母さん方の気持ちに寄り添うことができるのだと思います。

専門は小児科ですが、地域のかかりつけ医として幅広く診療されているそうですね。

森口久子院長 森口医院2

大人であれば、内科、外科、呼吸器科、消化器科と診療科が分かれますが、子どもの場合は小児科の医師がすべて診ていますよね。小児科を専門とすることで、全身管理する感覚や技能はすごく身についたと思います。その経験から私がモットーとするのは、枠を決めないで診療するということです。年齢の枠、男女の枠、病気の枠などを決めずにいると、自分の中の知識もどんどん広がっていきます。亡くなった義父の専門は内科でしたが、かかりつけ医として小児科も診ていました。今度は私が、小児科医でありながら町のかかりつけ医として、地域の皆さんとともに歩んでいきたいという思いで診療しています。

支援が必要な特性を理解し、早期の療育開始が大切

子どもから成人までの発達障害の診療に力を入れていると伺いました。

森口久子院長 森口医院3

守口市の乳幼児健診の中でも、発達領域の健診のために市に出向しています。4ヵ月、1歳半とある集団健診のうち、1歳半の健診時に保健師さんが発達障害の傾向を見つけるケースは多いですね。すでに親御さんは育てにくさやほかの子との違いに悩んでいて、とても不安を抱えていらっしゃいますから、保健師や理学療法士の方々など専門のスタッフが寄り添って相談に乗り、そこから紹介されて当院を受診される方が少なくありません。1歳半で発達障害の傾向が見つかれば早期に療育を始めることができるので、働くお母さんも多くて忙しいとは思いますが、なるべくその年齢まではぜひ集団健診を受けていただきたいです。

子どもの発達で悩んでいる保護者は、まずはどこに相談すれば良いのでしょう?

もちろん、当院に相談していただければ良いのですが、やはり親御さんがいきなり診療所の扉をたたくことはとても勇気のいることだと思います。ですから、まずは市役所の子育て支援課に相談してくだされば、私たちのところへバトンがつながる体制を築いています。私自身、約30年にわたり、就学前の発達障害や重症心身障害のお子さんが通う施設での診療も行ってきていますので、一人ひとりのお子さんに合わせた療育プランを積極的にコーディネートさせていただきます。先ほど申し上げたとおり、できるだけ早期に療育を始めることが非常に重要なので、1歳半健診を目安に相談していただければと思います。

まずは集団健診をしっかり受診することが大事なのですね。

森口久子院長 森口医院4

子どもが定期的に健診を受けることは、お子さんにとって大切なのはもちろん、親御さんにとっても大きな意味のあることなんですよ。医療面から発育や発達のチェックを受けられるのはもちろんのこと、市の保健師さんなど福祉に関わる人の目でも定期的にチェックすることで親御さんを支えることが可能になります。発達障害を早めに見つけることは、周囲にとってご家族を支えるための気づきのきっかけともなります。核家族化が進み、親子が取り残されることがないよう、医療と福祉、双方の目で包括的に支えていくことが必要です。そのためにも、福祉の分野で中心となる人材ももっと増やしたほうがいいと思っていますし、そのお手伝いができたらとも考えています。

医療・福祉・教育が連携し、子どもを見守る体制を

発達障害の診療の際に、保護者の方や学校とのコミュニケーションで心がけていることはありますか?

森口久子院長 森口医院5

発達障害は育て方の問題ではないですし、「治さなければと思わないでほしい」と親御さんには伝えています。発達障害の子どもは脳に微細な障害があるかもしれず、それが考え方の偏りにつながっている可能性があります。問題行動を心配する方が多いと思いますが、良くない行動は叱る反面、本人の人格は怒らないでいただきたいですね。近年は家族のあり方が変わりつつあり、学校での子どものケアが今まで以上に大切になってきました。そこで力を入れているのが、「チーム学校」と呼ぶサポート体制です。養護教員、教員、学校医、スクールカウンセラーがチームを組み、子ども一人ひとりと関わり支えます。学校現場も時代とともに変化し、今は多様性を認めつつ、子どもを核とした関係づくりに取り組んでいます。教育と福祉の双方が連携しながら、その輪の中心にいる子どもを支えており、各校にスクールソーシャルワーカーの配置が進んでいることもその一環です。

幼少期から大人になってもずっと診ている患者さんも多いそうですね。

子どもがさまざまなストレスを抱えている中で、長期にわたり救いの手を差し伸べることを意識しています。例えば、家族の世話や看護など限度を超えた負担を強いられている、いわゆる「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもや、ネグレクト(育児放棄)をされている子どもたちを支え、生きていくためのサポートをしています。こうした子たちは小学校や中学校など学校の卒業を境にサポートが途絶えがちですが、高校を出た後に自立していくのは非常に困難です。こうした状況を変えていくためにも、既存の福祉の枠にとらわれず、継続的にサポートし、その子自身の人生を生きていけるように助ける必要があるのです。ほかにも、当院には障害のあるお子さんもたくさんいらっしゃいますが、やはりその子の生涯をずっと見続けていくというのが当初からの私のスタンスですね。当事者やそのご家族へ少しでも安心を与えていける存在でいられたらうれしいです。

最後に地域の方々へのメッセージをお願いします。

森口久子院長 森口医院6

今後もさまざまな枠にとらわれない診療を大切にしていきます。医療でも、また違う分野においても、「こういうものがある」と適切にアドバイスして誘導する、コーディネート役としての役割も担っていきたいです。今はインターネットやSNSなどでたくさんの情報があふれすぎていて、戸惑って来られる方がとても増えました。だからこそ、患者さんと私たち医師との関わりがより重要になってきているのかもしれませんね。皆さんが忙しい日々を送る中で、毎回必ず顔と顔を合わせて、ということにこだわらず、メディアで発信するといった方法も活用しながら、困った時には気軽に相談してもらえる環境をより一層大切にしていこうと思います。義父の代からずっとこの地で半世紀以上診療を続けてきた診療所として、「困ったらひとまず森口先生に相談してみよう」と地域の皆さんに思っていただける場所であり続けたいですね。

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