森口 久子 院長、森口 直彦 先生の独自取材記事
森口医院
(守口市/土居駅)
最終更新日:2026/02/04
京阪本線の土居駅から徒歩5分の所にある「森口医院」。院長の森口久子先生は、義父から歴史ある同院を継承して以来、3人の子を育てながらかかりつけ医として地域に根差した診療を行ってきた。日本小児科学会小児科専門医である久子院長だが、同院では子どもはもちろん、世代を問わず幅広い患者のプライマリケアを担っており、発達障害の傾向がある人の支援にも取り組む。そんな院長を隣で支えるのが同じく小児科医である夫の森口直彦先生だ。感染症の専門家として総合病院で活躍してきた経験を生かし、数年前に診療に加わった。二人三脚で患者と向き合う2人に診療スタンスや力を入れていることなどについて、じっくりと語ってもらった。
(取材日2019年3月11日/再取材日2026年2月2日)
地域のかかりつけ医として枠を決めずに患者を診る
まず、現在に至るまでの経緯をお聞かせください。

【久子院長】近畿大学を卒業後、付属病院の小児科に入局し、大学院特別研修生として大学にも通いながら、その間に結婚と出産を経験しました。もともと義父が戦前からこの地で診療所を開いており、同じく小児科の医師である主人は病院勤務を全うしたいと考えていたので、いずれは私がここを継ぐという気持ちでしたね。上の子が6ヵ月の時から大学と並行して、義父の診療を手伝っていたのもそんな思いからです。1992年に突然義父が亡くなり、それを機に当院を引き継ぎました。当時はフルタイムで仕事をしながら3人の子どもを育てていたので、忙しすぎてあまり記憶がないんですよ(笑)。それでも何とかやってこられたのは、周りの人たちのたくさんの支えがあったおかげです。子育て経験があるからこそ、小児科の医師としても地域のかかりつけ医としても、お母さん方の気持ちに寄り添えているのだと思います。
子どもだけでなく大人も含め幅広く診療されているそうですね。
【久子院長】大人であれば、症状に応じて診療科が分かれていますが、子どもは小児科の医師がすべて診ますよね。ですから、小児科を専門としたことで、全身を管理する感覚や技能がすごく身についたように思います。その経験から、枠を決めずに診ることをモットーとするようになりました。年齢の枠、男女の枠、病気の枠などを決めないほうが、自分の知識もどんどん広がっていきます。亡くなった義父の専門は内科でしたが、かかりつけ医として小児科も診ていました。だから今度は私が、小児科医でありながら、かかりつけ医として地域の皆さんとともに歩んでいきたいという思いで診療しています。2023年からは主人も診療に加わりましたので、二人三脚で患者さんと向き合っていきたいですね。
同じく小児科のエキスパートである直彦先生が加わったことで、強化された部分があれば教えてください。

【直彦先生】勤めていた総合病院では、感染症の専門家として病院全体の感染症対策を担っていましたので、その経験を生かせたらと思います。例えば、百日咳、RSウイルス感染症などを含む感染症全般の迅速検査を院内で行えるようにしたのもその一つで、早期の診断と治療につなげています。また、感染症予防の一環として力を入れているのがワクチン接種。コロナ禍以降さまざまな見方がありますが、改めてその重要性を伝えていきたいですね。ワクチンは感染症による負荷を減らし、場合によっては子どもの命綱にもなります。重大な病気をいかに予防するかを第一に考えていきましょう。そのために、お子さんのワクチン接種のスケジュール管理をスタッフ全員でサポートしているほか、帯状疱疹や肺炎球菌などご高齢者のワクチン接種も推奨しています。気になることがあれば気軽にご相談ください。
発達障害の早期発見と親子の支援に注力
子どもから成人まで発達障害の診療に力を入れていると伺いました。

【久子院長】守口市の乳幼児健診においては、発達領域の健診のために市に出向しています。4ヵ月、1歳半とある集団健診のうち、1歳半の健診時に保健師が発達障害の傾向を見つけるケースが多いですね。すでに親御さんは育てにくさやほかの子との違いに悩まれていて、不安を抱えていらっしゃいますから、保健師や理学療法士など専門のスタッフが寄り添って相談に乗り、そこから紹介されて当院を受診される方も少なくありません。
子どもの発達で悩んでいる保護者は、どこに相談すれば良いのでしょう?
【久子院長】やはり親御さんがいきなり診療所の扉をたたくのは勇気のいることだと思います。ですから、まずは健診を受ける、あるいは市役所の子育て支援課に相談してくだされば、私たちのところへバトンがつながる体制を築いています。早期に療育を始めることが重要なので、1歳半健診を目安に相談していただければと思います。私自身、約30年にわたり、就学前の発達障害や重症心身障害のお子さんが通う施設での診療も行っていますので、一人ひとりのお子さんに合わせた療育プランを積極的にコーディネートさせていただきます。
まずは集団健診をしっかり受けることが大事なのですね。

【久子院長】発達の傾向を知るきっかけとして、乳幼児から児童期までの健診は非常に重要です。守口市では全国でも早い段階で5歳児健診を実施しており、私も関わっています。発達のグレーゾーンのお子さんにとって、小学校入学は大きな壁だからこそ、お子さんと学校教育をつなぐ懸け橋になりたいと思っています。また、健診はお子さんだけでなく、親御さんにとっても意味のあることなんですよ。発育や発達のチェックを受けられることに加え、周囲にとってご家族を支えるための気づきのきっかけにもなりますから。核家族化によって親子が取り残されることがないよう、医療と福祉、双方の目で包括的に支えていく必要があります。そのためにも、福祉分野で中心となる人材を増やせるようお手伝いができたらとも考えています。
医療・福祉・教育が連携し、子どもを見守る体制を
発達障害の診療において心がけていることがあれば教えてください。

【久子院長】発達障害は育て方の問題ではないですし、「治さなければと思わないでほしい」と親御さんには伝えています。発達障害の子どもは脳に微細な障害があるかもしれず、それが考え方の偏りにつながっている可能性があります。ですから、良くない行動は叱る反面、本人の人格は怒らないでいただきたいですね。一方で、家族の在り方が変わりつつある中、近年は学校でのケアが今まで以上に大切になってきました。そこで力を入れているのが、「チーム学校」と呼ぶサポート体制です。養護教員、教員、学校医、スクールカウンセラーがチームを組み、子ども一人ひとりを支えます。学校現場も変化しているので、多様性を認めつつ、教育と福祉の双方が連携しながら、子どもを核とした関係づくりに取り組んでいます。
幼少期からずっと診ている患者さんも多いそうですね。
【久子院長】さまざまなストレスを抱える子どもたちに対し、長期にわたり救いの手を差し伸べることを意識しています。例えば、いわゆるヤングケアラーと呼ばれる子やネグレクトをされている子たちを支え、生きていくためのサポートをしています。こうした子どもたちは小中学校の卒業を境にサポートが途絶えがちですが、高校を出た後に自立していくのは非常に困難です。この状況を変えるには既存の福祉の枠にとらわれず、その子が自身の人生を生きていけるよう、継続的にサポートする必要があるのです。ほかにも、当院には障害のあるお子さんもたくさんいらっしゃいますが、やはりその子の生涯をずっと見続けるというのが私のスタンス。当事者やご家族に少しでも安心を与えられる存在でいられたらうれしいです。
最後に、地域の方々へのメッセージをお願いします。

【直彦先生】引き続きかかりつけ医として、お子さんから高齢の方まで地域の皆さんに寄り添える医療をめざしていきます。発熱者への対応や感染症対策も徹底して行っていますので、安心してお越しください。
【久子院長】今後も枠にとらわれない診療を大切にしていきます。今は情報があふれすぎていて、戸惑って来られる方が増えました。だからこそ、患者さんと私たちとの関わりがより重要になってきているのかもしれませんね。医療や福祉において適切なアドバイスをするコーディネート役も担っていきたいです。顔と顔を合わせることはもちろんですが、メディアでの発信なども活用しながら、この地で半世紀以上診療を続けてきた診療所として、「困ったらひとまず森口先生に相談してみよう」と思っていただける存在であり続けたいですね。

