北原 知洋 院長の独自取材記事
北原医院
(豊中市/豊中駅)
最終更新日:2025/03/14

阪急宝塚本線豊中駅を降りてすぐ。レトロな個人商店にエスニックやイタリアンなどの飲食店が軒を連ねる道を進むと見えてくるのが「北原医院」だ。ここは、開業してから30年の歴史を持つクリニック。2024年9月に、前院長である北原健志先生の意思を息子の北原知洋院長が継承した。現在は健志先生と知洋院長の2人体制となっている。腹腔鏡手術に精通し、並々ならぬ思いを持って地域に根差したクリニックをめざす知洋院長。その心境や、今後の展望を聞いた。
(取材日2025年2月20日)
命に関わる重要な仕事に憧れ、外科の医師に
まずはクリニックの歩みを教えていただけますか?

1993年、私が小学校から中学校に上がるぐらいの時に、外科の医師である父がこの医院を開業しました。それからずっと同じ場所で診療を続けています。地域の人に支えられながら、一般的な内科、外科の診療、それとリハビリテーションなども幅広く対応してきました。これは、「自分ができる治療は何でも行いたい」という父の思いがあったからです。父も専門は消化器外科なのですが、それだけにとどまらず、一人の患者さんの健康を末永く支えていきたいと考えていました。デイサービスなどを始めたのも、そのためです。患者さんの中には、一つではなく複数の病気に悩まれている方もいらっしゃいますし、かかりつけの医師がそのすべてを診ることができたなら患者さんも安心できるのではないでしょうか。
先生自身のキャリアについても教えてください。
まずは市立豊中病院で研修をし、2年間学びました。そこで外科の医師になると決めたため、外科の修練を積んだのです。その後、大阪大学医学部附属病院では消化器外科の医局に入り、多くの患者さんの受け持ちをしながら、大腸がんの研究で博士号を取得。市立吹田市民病院では消化器外科の医局員として、大腸や肛門の治療に従事していました。さらに、関西ろうさい病院へ移った際は、私も上の立場になっていたので若手の医師とともに手術を行うことも。その後、当院を継承する準備を兼ね、今度は内科の医師として豊中敬仁会病院で3年間勤務しました。
多くの現場で経験を積まれたのですね。特に印象に残っていることはありますか?

全部ですね。若手の頃はとにかく忙しく、寝る間もなくずっと働いていました。市立豊中病院の外科には本当に熱い信念を持った先生が多かったですね。ベテランの医師であっても休日に出勤しており、そんな先生たちから医療に対する姿勢を学べました。大阪大学医学部附属病院の研究では、がんとはどういうものか、先進の治療がどのようなものかを知ることもできたと思います。吹田市民病院では、一人の外科の医師としてベテラン医師とともに一から大腸がんの手術を学び直しました。抗がん剤の必要な患者さんに抗がん剤治療を行うという経験も積み、おかげで独り立ちすることができました。また、関西ろうさい病院は尼崎の大規模病院の一つで、ひっきりなしに緊急の患者さんに対応していましたよ。豊中敬仁会病院では、一般的な内科の診療も行いながら、大腸内視鏡検査の修行も積むことができ、医師としての幅を広げられたと思います。
消化器外科を強みに、内科からリハビリテーションまで
外科の医師だった先生が、こちらのクリニックを引き継いだのはなぜですか?

当時、新型コロナウイルス感染症が流行して、高齢になった父に万が一のことがあったときのことを考えたのです。この医院には父一人しかいなかったので、父に何かあったら通って来てくださっている患者さんも困ってしまいますからね。私も外科医として脂がのった時期でしたし、どうすべきか迷ったのですが、患者さんのためにと内科を学びに豊中敬仁会病院に行ったんです。どちらにせよ内科の勉強は始めていかなければいけないと思っていましたし、大腸内視鏡検査を行う消化器内科も同じ消化器を診る診療科でしたから、学ぶのにさほど苦労はしませんでした。おかげで高血圧や糖尿病、生活習慣病に関する一般的な知識についても深めることができ、広く患者さんを診られるようになったと思います。
新体制になってからも前院長は活躍されているそうですね?
ええ。父も健在ですので、今は2人で患者さんを診ています。「先生」と呼ばれると2人とも振り返ってしまうので、父のことを「大先生」と言うこともあります。昔からの患者さんだと、やっぱり父に診てもらいたいという方もいますので、そうした場合は父に診てもらうようにしています。また、整形外科の患者さんは父にお願いする場合もあります。私も今後はある程度対応できるように勉強中です。「町の診療所」として患者さんたちの窓口になり、幅広い症状に対応することが当院の役割と考えています。
先生が継承されたことで、新たに加わる医院の強みはありますか?

一つは大腸内視鏡検査ですね。父の時代にも対応していたことがあったのですが、近年は検査をする機会が減っていましたので。私の代では週に1日程度、大腸内視鏡検査を行っており、今後はさらに増やしていこうと考えています。検査で異常を見つけることができれば、がんの早期発見・治療にもつなげられますからね。また、痔に関しても注射治療に対応できるよう体制を整えているところです。私は、長年大腸や肛門の疾患を専門としてきましたので、その点は強みといえるところだと思います。外科の医師でしたから、手術後や抗がん剤治療中の患者さんのケアや気持ちも理解ができますし、術後の日常生活の中でのお困りごとにも相談に乗ることもできるかと思います。そのため、安心して来ていただければと思います。
「人は愛」、愛情を持って患者と接していきたい
クリニックの理念や、先生が診察で大切にしていることを聞かせてください。

この医院の理念は、父が言っていた「人は愛」です。患者さんに愛情を持って接するということですね。患者さんにとっても、医師からの愛情を感じられなければ「この人に相談してみよう」とは思えませんよね。ですので、たとえ多忙なときであっても一人ひとりを丁寧に診るようにしていますし、なるべく患者さんにわかりやすい言葉でご説明するよう心がけています。
今後この医院をどのように発展させていきたいですか?
今後も「町の診療所」として、地域の方々にとって身近な相談役でありたいと考えています。そして、ご相談いただいた症状が重篤な疾患へと発展する前に、なるべく早く対処していきたいと考えています。私なら、外科での経験からがんの手術を受けられた患者さんのこともわかりますし、そうした方が高血圧であれば内科の医師として対応できます。また、手術後の抗がん剤治療についても理解していますので、幅広い分野に対応できるという意味でも、ご安心いただけるのではないでしょうか。健康に関することは何でも相談いただき、アドバイスできることはしっかりアドバイスします。一方、専門の先生に診ていただいたほうがいいと判断できる場合はもちろん適切な先生をご紹介します。これまで父のやってきた事を継承しながら、この地域で暮らす皆さんの健康的な生活に貢献できればと考えています。
最後に読者の方にメッセージをお願いできますか?

私の一番の強みは消化器です。先述のとおり、今後は痔の注射治療もやっていけるようにすること、大腸内視鏡検査の数も増やしていけるように体制を整えていきたいと考えています。また、一般的な高血圧、脂質異常症、糖尿病の治療やリハビリテーションにも一層力を入れていきたいですね。私は外科の医師でもありましたから、ちょっとした縫合処置にも対応できます。当院はこの地域で最初に患者さんを診る窓口的な存在でありたいと考えていますので、なんでも気軽にご相談ください。