邉見 俊一 理事長の独自取材記事
辺見クリニック
(豊中市/蛍池駅)
最終更新日:2025/07/11

蛍池駅から徒歩3分、幹線通り沿いにたたずむ「辺見クリニック」は、現在理事長を務める邉見俊一(へんみ・しゅんいち)先生の父が1983年に開業した地域に密着したプライマリケアを主とした診療所。邉見理事長は、大学卒業後30年にわたり、一般整形外科のみならず、上肢の外科診療を行う手の外科、関節リウマチの治療や研究に取り組む、日本専門医機構整形外科専門医、日本リウマチ学会リウマチ専門医である。中でも手の外科に関しては多くの手術を経験してきたエキスパートだ。穏やかで温かい邉見理事長に、手の外科やリウマチを専門分野とした経緯やクリニックで力を入れている治療、今後の展望などについて話を聞いた。
(取材日2025年6月20日)
祖父、父の背中を見て医師の道へ
先生が医師を志したきっかけからお聞かせください。

祖父と父が医師だったため、私は物心ついた頃から医療の世界が身近にあり、自然と医師をめざすようになりました。「医師は人の役に立ち、感謝される尊い仕事だな」と憧れながらも、その大変さも感じていました。当院は現在は外来診療のみですが、以前は入院患者さんも受け入れ、全身麻酔を使った手術も行っていたため、父は早朝に家を出て、夜遅くに帰る生活で、ほとんど家にいなかったように思います。たまの休みにはキャッチボールをして遊んでくれたこともありましたが、ポケベルで呼び出されると、あっという間に医院に向かってしまう。それだけ患者さんのために一生懸命だったのでしょうね。
どういった経緯で整形外科、中でも手の外科を専門分野に選んだのですか?
私はずっとサッカーをしていたこともあり、ちょっとしたケガはしょっちゅうありましたし、骨折など大きなケガを負ったチームメートもいました。そういった外傷の治療の過程をずっと見ていたので、自然と整形外科に魅力を感じるようになり選択しました。大学卒業後の最初の研修病院で、とても熱心に指導してくださった先生が手の外科専門の先生だったので、その先生のもとで頑張りたいと思い、手の外科を志すことに決めました。
先生は手の外科に加え、リウマチ診療もされていますね。

一般的な整形外科を学んで整形外科専門医を取得したのち、手の外科を専門とする先生のもとで、5年間手の外科について専門的な研鑽を積みました。その後、リウマチ診療で関西のみならず日本全体でも知られる国立病院機構大阪南医療センター(旧・国立大阪南病院)に移ることになりました。ここでは手外科のチーフとして手外科の特診だけでなく、「リウマチ科」にも所属し、リウマチの投薬治療と種々の手指変形の手術治療にあたることになりました。学術的な研究や発表の機会も多く、博士号やリウマチ専門医の資格も取得することができました。異動当初は大変でしたが、非常にやりがいのある環境で、リウマチ診療の経験だけでなく多くの友人も得ることができたと思っています。
クリニックでありながら、専門的な薬剤処方や手術も
その後、クリニックを継ぐまでのご経歴について教えてください。

大阪南医療センターでやりがいのある日々を過ごしていたのですが、父の突然の入院でクリニックを継ぐことを視野に入れ市立池田病院に移りました。市立池田病院は、他科の先生方との距離が近く、仲も良かったため、たくさんの有意義な出会いがありました。当時一緒に働いていた先生方が今では近隣で開業されたり、大規模病院で診療を続けられており、私の専門外の治療が必要な際にはスムーズに紹介することができるので、いつも感謝しています。
クリニックの強みである手の外科とリウマチ治療について教えてください。
中高年になると、手指のしびれや痛み、動かしにくさに悩む人も増えますよね。手の外科では、例えばパソコン作業や家事などで手を使う人に多く見られる「手根管症候群」などの診断に有用な筋電図検査を行うことができ、手術にも対応しています。リハビリ室には理学療法士が勤務していますので適切な後療法を行うことも可能です。また、骨折に対する保存加療には特にこだわりを持って行っています。ギプスの不適切な巻き方で手指の変形を残した症例も多く見てきたためです。骨折の治癒を早めるためのLIPUSも導入しています。現在のリウマチ治療は早期発見と適切な治療により、患者さんが高いQOLを維持することが期待できるようになっています。当院では、早期に免疫抑制剤の導入を行い、生物学的製剤やJAK阻害剤を個別に組み合わせ、患者さんそれぞれに最適な治療の提供をめざしています。
予防医学にも携わっていらっしゃいますね。

骨粗しょう症を専門に診る外来や運動器検診では予防を中心としたサポートを行っています。骨粗しょう症は、高齢者が要介護となる原因の一つとされており、早期発見・早期治療が重要なのですが、自覚症状がほとんどありません。当院では、全身型デキサ法による腰椎、大腿骨の骨密度の計測や、骨代謝マーカーの測定などで、早期発見ときめ細かい治療に努めています。運動器検診では、学校医として入学時運動器検診や、「ロコモティブ症候群」の啓発活動を行っています。ロコモティブ症候群は、筋肉や関節の障害によって、移動機能が低下した状態です。進行すると自立した生活ができなくなり、介護が必要な状態になります。毎年、とよなか市民健康展でロコモティブ症候群の啓発活動に取り組んでいます。また当院では、管理栄養士による栄養指導も行い、生活習慣病や骨粗しょう症に関し30分以上かけてじっくりお話をしています。
患者と同じ目線を持ちながら、地域医療に貢献していく
先生が、患者さんを診療する際に心がけていることを教えてください。

できるだけ患者さんと同じ目線で診療にあたるように心がけています。また、患者さんが理解しやすいように、専門用語をできるだけ避け、スライドやパンフレットなどを使って視覚的にもわかりやすく伝えるようにしています。
理事長になってから現在までの変遷と、今後の目標を教えてください。
父が引退した後、整形外科疾患の患者さんがますます増えました。現在は、大阪大学の同期が当院に診療しに来てくれるようになり、それぞれの専門性を生かした診療が提供できるようになっています。今後もこの体制を維持し、さらに強化していきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院は、整形外科を主軸としながら、地域のかかりつけ医として高血圧症、脂質異常症、糖尿病など生活習慣病の診療にも対応する地域に密着した診療所です。今後も、より専門性の高い診療を提供しながら、地域に貢献できるよう努力していきます。よろしくお願いします。