谷井 司 院長の独自取材記事
谷井ヒフ科
(大阪市中央区/谷町四丁目駅)
最終更新日:2024/11/12
「少しでも患者さんの負担を軽くしたい」その思いから待ち時間を短く、迅速な診療に取り組む「谷井ヒフ科」。混雑時でなければ、来院から患者が薬を受け取って帰るまでの時間は15分ほどだそう。スムーズな診療スタイルを実現するためには、一般的な皮膚科疾患なのかを適切に見分ける、谷井司先生の診断能力や経験値があってこそ。また谷井先生が診察に集中できるよう、診療方法にも同院独自の工夫が凝らされている。地域の病院や他科のクリニックと連携しながら、患者のニーズに応え続ける先生に話を聞いた。
(取材日2018年10月12日)
待ち時間を短く、少ない通院回数での治療をめざす
どのような方が来られますか?
オフィス街ということもあり、近隣にお勤めの方が多く来られます。10年ほど前からマンションが増え、家族で受診される方も目立つようになりました。子どもの患者さんも増えてきたので、当ビルの8階にキッズスペースを用意しました。フロア全体が遊びの空間になっていて、子どもにとっては楽しい場所ではないでしょうか。エリア的な特徴としては、当院から1キロ圏内に国立病院機構大阪医療センターや大手前病院といった病院があり、他科のクリニックもだいたいそろっていることですね。病診連携や診診連携が取りやすく、1人の開業医ではできないこともお互い協力し合うことができます。そのため自分が診られる範囲はしっかり担当し、専門外の疾患は他院に任せるといった、効率の良い医療の提供が可能です。
クリニックの特徴をお聞かせください。
地域のクリニックに来られる患者さんの病気の傾向や程度というのはだいたい似ていて、多くの方が頻度の高い一般的な皮膚科疾患です。クリニックに求められるニーズは、そういった日常起こりやすい病気を適切に診断し、早く治療することだと私は考えます。珍しい疾患や難治性の疾患まで扱う大きな病院と同じように対応していたら、診療全体の流れを止めてしまうばかりか、結局は患者さんに不利益を与えてしまいます。診察では、問診と視診をしっかり行って病気を見極め、当院で対応可能な病態は治療し、検査や専門的な治療が必要な場合は迅速に他院を紹介するようにしています。100人のうち1~2人に、専門の医療機関を勧めているといったイメージでしょうか。専門治療をしないというよりも、クリニックで対応できる病気かどうかを的確に判断して、一般的な皮膚科疾患を適切に治していくのが、当院の特徴といえます。
待ち時間短縮のために、さまざまな努力をされていますね。
当院のようなオフィス街にあるクリニックは、仕事を抜けて受診される方もいますので、長時間足止めさせるわけにはいきません。待ち時間が長いと、診察を諦めて帰ってしまう人もいますので、待ち時間を極力減らし、できるだけ少ない受診回数で治す努力を徹底しています。皮膚科は時間がかかるといったイメージを持たれることが多いですが、当院だと受付をしてから帰るまでだいたい10分~20分、混雑時でも30分~40分ほどで済むように努めています。診察時は私の横でスタッフが診察内容すべてを電子カルテに入力するため、私がキーボードを打つことはありません。そのため診察に集中でき、スピーディーに診察、診断をすることができます。診察室の隣に調剤室があるのも、効率良く院内処方ができる理由です。帰りに支払いをする際には、お薬が渡せる流れになっています。
西洋薬と漢方薬それぞれの長所を生かして処方を行う
必要のない検査をしないことも、貴院の方針だそうですね。
当院では血液検査は行っておらず、診察で症状を診て診断できる病気だけを治療するようにしています。時間短縮の意味もありますが、血液検査は患者さんの負担になる割には有益な場合がそこまで多くないと感じているからです。これは私自身が、さまざまな皮膚科検査の研究や臨床に携わってきたからこその見解なのですが、実際に検査が有益な患者さんというのはそう多くはなく、全体の3%くらいなんですね。特にじんましんは検査をしても原因がつかめないことが多く、メンタル面などが関係していることも少なくありません。症状を緩和するための治療を進めたほうが、患者さんも苦痛から早く解放されて楽になると思います。もちろん病態によっては検査が必要なものもありますから、そういった場合はしっかり見極め、精密な検査ができる病院を紹介しています。
診療スタンスについて教えてください。
科学的根拠に基づいた治療方針を基本とし、日本皮膚科学会のガイドラインに沿った標準治療を行っています。さまざまな治療法でアプローチするよりも、確立された治療を選択するほうが、結果的に早く治せて、副作用の心配も少なく効率的と考えているのです。患者さんには治療の道筋をわかりやすく示し、急性の疾患はできるだけ早く治癒できるようにすることを重視しています。慢性の場合は完治をめざすよりも、いい状態で日常生活が送れるように保ちながら、できるだけ少ない通院回数で治していくように心がけています。
漢方薬を取り入れることでどのようなメリットがありますか?
所属していた大阪市立大学の皮膚科教室が、漢方療法に力を入れていたこともあり、当院でも漢方薬を取り入れています。漢方薬は症状に合わせてバランスを調節する働きがあり、熱があれば冷まし、冷えているところは温めるといった治療ができます。例えばアトピー性皮膚炎の治療では、皮膚の炎症を抑えるための薬が必要です。西洋医学の薬で抗炎症作用が期待できるのはステロイド剤ですが、ステロイド剤は同じ場所に長期使用すると副作用が出る恐れがあり、炎症を鎮めるための漢方薬を併用することで、ステロイド剤を減らすことができる場合があります。すべての疾患に有用なわけではありませんが、漢方薬をうまく組み合わせることで、治療に役立つことも多いのです。
不要な検査は避け、適切な診断で病気を見極める
皮膚科医師をめざした理由は?
大学の進路を決める際に、「自分が幸せになれる職業は何だろう?」と考えて、その時に「人のために役立つ仕事が、結局は自分を幸せにする仕事ではないか」と思ったんです。医師になれば、多くの人の力になれると考え、医学部をめざすことにしました。皮膚科を選んだのは、病巣を直接見ることができ、自分が行った治療の効果が直接確認できることに魅力を感じたからです。大阪市立大学医学部卒業後は、同大学の皮膚科に入局しました。そこで13年ほど臨床経験を積み、特に接触皮膚炎、じんましん、アトピー性皮膚炎の治療と研究に携わりました。今では、血液検査でアレルギーの原因を調べるIgE-RAST検査などは一般的になってきていますが、そういった検査方法が確立されていない時代から病気を診てきた経験が、検査が必要かどうかを判断する場面で生かされていると思います。
ご専門である接触皮膚炎とはどういったものですか?
接触皮膚炎とは、化粧品や植物、空気中に浮遊している物質などの何らかの物質が原因で、皮膚がかぶれる症状です。主な要因にはアレルギー反応と刺激性の2つがあります。アレルギーの場合は、パッチテストで細かく調べていけば原因が追究できますが、実際に行うとなると、使っている化粧品の会社から成分を取り寄せて調べていく必要があり、大変な作業になります。開業医レベルで検査するのは難しく、特定物質を徹底的に突き止めたいという人には、きちんと検査ができる医療機関を伝えるようにしています。また皮膚科は、ただ病気を治療するだけでなく、きれいに見せたいという要望も、特に女性の患者さんはお持ちです。当院では美容診療はしていませんが、美容皮膚科の知識もあり、良い先生も知っていますので、例えばレーザーによる施術が有効的だと思われる場合などは紹介しています。
最後に読者へアドバイスをお願いします。
高齢化に伴い、人生100年時代が実現しつつありますが、ただ平均寿命を延ばすだけでなく、健康寿命を延ばすことが大事です。そのために必要なのが、「食事、運動、睡眠」。この3つは皮膚の健康にも影響し、生活を改善するだけでも、自然と皮膚に張りが出て、年齢よりも若々しく見られるようになることもあります。痛みやかゆみといった症状から、外見的なものまで、皮膚の悩みはさまざまです。近年、皮膚疾患の新薬の開発が進み、これまで諦めていた疾患も改善が見込めるケースが増えているので、症状があれば一人で悩まず、皮膚科に相談してみてください。適切な治療を受けることで悩みが解決し、それで人生が変わるかもしれません。