疲労感、微熱、関節の痛み……膠原病かも
原因と治療方法を解説
橋本膠原病リウマチクリニック
(大阪市中央区/淀屋橋駅)
最終更新日:2024/10/25
- 保険診療
「膠原病」という名前は聞いたことがあっても、病態や症状について理解しているという人はそう多くはないだろう。そもそも膠原病とは1つの病気の名前ではなく、関節リウマチをはじめとする複数の自己免疫疾患の総称である。この分野を専門とし、長きにわたり診療実績を積んできた「橋本膠原病リウマチクリニック」の橋本尚明院長は、「膠原病の診断と治療は経験によるところが大きい。だからこそ専門家の診察が必要」だと言う。「もしかして?」と思ったときに、なるべく遠回りをせず専門家に診てもらえるよう、膠原病の基本的な知識を教えてもらった。
(取材日2017年12月1日)
目次
膠原病は多彩な症状のため診断と治療には経験と丁寧な診察が基本
- Q膠原病はどこの臓器が悪くなる病気なのですか?
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A
「膠原病」とは1つの病気の名称ではなく、体の中で異常な免疫反応が生じ、複数の臓器に対して攻撃をしてしまう疾患群の総称です。関節に痛みや腫れを引き起こす「関節リウマチ」、筋肉に炎症が生じる「皮膚筋炎・多発性筋炎」、唾液腺機能を障害する「シェーグレン症候群」というように、病名によって障害される臓器に特徴があります。他には全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、結節性多発動脈炎などが代表的ですね。「膠原」とは体の臓器を支える役割を果たす結合組織のことですが、多くの病気と異なり複数の臓器が障害されることからこの名称がつけられています。このため特徴的な症状の他にもさまざまな臓器の症状が出ることがあります。
- Q症状の特徴は? 膠原病を疑ったら何科を受診すべきですか?
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A
膠原病の症状は実に多彩です。疲れやすい、微熱が続く、関節が痛むなど比較的多くの膠原病に共通した症状もありますが、疾患によって障害される臓器が違うので症状もそれぞれで異なります。また、同じ病名でも症状が同じであるとは限りません。膠原病を疑えばリウマチ科などを受診することをお勧めしますが、膠原病ではないかと疑うまでに時間がかかることが多くあります。また、膠原病と診断が下されていても気になる症状が、膠原病と関係があるのかないのかを見極めることも難しいことです。このため膠原病の診断と治療は経験によるところが大きく、だからこそ専門家の診察が必要と考えます。
- Q膠原病の専門家はどのように診断・治療と進めていくのですか?
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A
訴えに耳を傾け症状をよく観察することが大切です。膠原病は複数の臓器が障害される疾患ですので、一つ一つの症状がどの臓器に由来する問題点なのか、あるいは膠原病に関連するものなのかを把握することが大切です。膠原病は免疫異常が原因なので、ついつい自己抗体など検査データに目が行きがちですが、例えば疲れやすいという症状は採血検査ではその程度はわかりにくいものです。ですから検査では補えない部分は丁寧な診察と経験による判断が大切です。治療主役は免疫異常を是正するためのステロイドや免疫抑制薬などですが、免疫学的なアプローチだけでは良くならないこともありますので、専門家はさらに治療を工夫することが求められます。
- Q膠原病は完治するのでしょうか?
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A
膠原病の治療はステロイドが中心ですが、近年多くの免疫抑制薬が使えるようになり、良くなることが見込める方が増えてきました。特に、関節リウマチの治療は生物学的製剤をはじめとした抗リウマチ薬を使用することにより、飛躍的に寛解(治療を必要とするがほぼ症状のない状態)をめざせる方が増えました。いまだ膠原病を完治(治療が不要で治りきった状態)させることは難しいのですが、このように多くの方は治療を受けながら日常生活を周りの方と変わりなく過ごせるようになっています。ただし、治療を続けていくだけではなく、患者さん自身で病気を把握し、上手に付き合っていくことが大切です。
- Qこちらのクリニックの特徴を教えてください。
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A
関節リウマチだけでなく、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症など難病指定の膠原病の方も多く来院されています。特にシェーグレン症候群は膠原病の中で2番目に患者さんが多く、その数は10~30万人といわれます。疲れやすい、関節が痛むなどの症状があるにもかかわらず検査でわかりにくく、目と口の渇きが主な症状であるため、眼科や歯科にかかっても全身的な治療に至らない方も少なくありません。当院では、日常生活の質を高めるために積極的な治療を行うほか、唾液腺超音波検査などを行い診断・治療に役立てています。