橋本 尚明 院長の独自取材記事
橋本膠原病リウマチクリニック
(大阪市中央区/淀屋橋駅)
最終更新日:2025/06/18

本町駅から徒歩約5分。オフィスビルの4階に「橋本膠原病リウマチクリニック」がある。入り口には車いす用のスロープが設置されており、広々とした待合室はオフィス街の喧騒も一切聞こえない、静かな環境だ。専門クリニックではあるが、全身疾患であり合併症の多い膠原病の特性のため、広範囲の治療ができるように、と考える橋本尚明院長のもとには、近畿一円から患者が訪れるという。専門性の高い治療を行う橋本院長に、難しい病である膠原病の話をじっくり聞いた。
(取材日2025年5月21日)
父が開業し、遠方からも患者が来るクリニックに成長
なぜ本町というオフィス街にクリニックを開業されたのですか?

最初は淀屋橋駅近くに父が開業したのですが、以前勤務していた国立大阪病院(現・大阪医療センター)から近く、患者さんが継続して通いやすいことと、近畿一円から来られますので、交通の便の良い所を選んだようです。2003年に本町へ移転しましたが、大阪メトロ御堂筋線・大阪メトロ中央線・大阪メトロ四つ橋線と使えますので便利ですね。やはり専門クリニックですので、遠方から来られる方が多いです。
膠原病を専門とするクリニックは珍しいですね。
そうですね、患者さんもここが初めてという方もいらっしゃいますが、他の大きな病院などにすでに受診され、診断や治療をされている方も多いですね。膠原病というのは全身性の疾患ですので、たくさんの症状やさまざまな不安を抱えている方が多く、ちょっと違う医師の意見も聞きたい・より良い治療法はないものか、と考えて来られる方も多いです。最近はホームページを見て来院される方が多いですが、患者さんの間でのクチコミを頼りに来られる方もまだまだ多くいらっしゃいます。
不安を抱えた患者さんは多いのでしょうか?

なんでも病気と結びつけて考えてしまって不安になってしまう……というケースは多いですね。膠原病は全身疾患なので、どういう症状が出てくるかというのは個人それぞれ違います。ですから、同じ病名でも患者さんによって程度も違いますし、具合の悪くなるところも違います。予約日以外に受診したら違う医師が担当で、病気のことをわかってもらえるか不安を感じる方が多いと思います。当院では僕が主治医であり、「いつ来ても主治医が診てくれる」ように、予約外の来院もすべて院長対応です。また、時にはセカンドオピニオンとして違う医師の意見も気軽に聞けるよう、同じ程度の診療経験を有する医師も、非常勤で外来診療を行っております。
高いレベルの医療の提供をめざして
専門性の高い治療とお聞きしました。

膠原病という聞きなれない専門領域ですので、大学病院や基幹病院と比べて、医療レベルや内容について心配される患者さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、特に大学病院だから・個人クリニックだからといって、治療内容や検査に差はありません。差があるとすれば診療経験ですが、大学病院で20年以上診療を担当していましたので、当院では特別な治療や先進的な治療を行っているわけではないですが、高いレベルの医療を提供できると考えています。膠原病は慢性疾患のため、とにかく治療期間が長くなることが多いです。ですから、主な治療や検査は外来での対応となります。特別な検査や安静が必要であるときや、強い免疫抑制薬を使用するなどの場合は入院が必要ですので、連携のある病院へ紹介をいたします。
どのような疾患が多いのでしょうか?
一般的によく知られている膠原病は関節リウマチですが、当院では関節リウマチで通院される方は、だいたい全患者さんの20%程度で、最も多い膠原病はシェーグレン症候群の方で、関節リウマチの次は全身性エリテマトーデスの方ですね。あまり聞きなれない病名かもしれませんが、シェーグレン症候群は、近年海外では患者さんが多いことや病気の認知度が上がって「症候群」ではなく、シェーグレン病として病名の変更がされている国もあります。ドライマウス・ドライアイの症状が主なのですが、患者さんによっては、体のあちこちに痛みがあったり、日常的な活動でも異常に疲れやすかったりといった特徴があり、生活の質に大きく影響することが少なくありません。また、他の膠原病と合併することもあるので同時に治療をする必要があります。当院では唾液腺の超音波検査などの結果を診断や治療の参考にしています。
薬の種類や量は多いのでしょうか?

症状や合併症が多いと、薬の種類はどうしても多くなってしまいます。特に膠原病の治療薬は、ステロイドをはじめ副作用や相互作用の多い薬が含まれます。患者さんによって症状はさまざまですので、検査結果だけではなく、状態を総合的に判断して薬を処方しています。副作用については、軽微なものから重篤なものまでありますが、患者さんが怖がって服薬がおろそかになることがないよう、治療によるメリットと併せて十分に説明しています。薬を処方する前には、予想される副作用とその頻度、万が一症状が出た場合の対処法、薬を継続すべきか・中止すべきかをあらかじめお伝えし、同時に副作用の予防に必要な検査や治療にも積極的に取り組んでいます。こうした取り組みが、患者さんに安心して服用していただくことにつながっていると考えています。
長く付き合える主治医でありたい
長期間の診療においてどのようなことを心がけていますか?

当院の患者さんは多くの方が遠方から足を運ばれ、時には長時間診察の時間を待って診察室へ入って来られます。このためできるだけ時間を割いて病気に対する不安や悩みを少しでも取り除くことができるように心がけています。長い診療期間で加齢に伴う高血圧症や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病や骨粗しょう症などの合併も増えてきます。かかりつけ医が治療にどれだけ関わっているのか・他の疾患を抱えておられるのかなども含めて総合的に考慮した上で、一元的に当院で治療をすることもあります。診察の最後にはできるだけ「他に気になることはありませんか」とお聞きして、病気以外のことでも話しやすいようにしています。
専門の医療機関を探すヒントなどはありますか?
膠原病は長く付き合う病気なので、同時に医師とも長く付き合わないといけない病気です。そうなると、主治医と合う・合わないというのがどうしても大事になると思います。当院の患者さんも、父の代からずっと受診されている方も多くいらっしゃいます。ご高齢になり、来院できなくなるまでお付き合いする方が多いのです。患者さんと医師の相性は大事ですし、主治医が変わらないことが一番だと思いますね。また、膠原病だけでなく、加齢に伴う合併症などが出ることもあるので、将来的な予測を立て、予防についてもきちんと考える必要があります。専門領域の医師が陥りがちな専門分野に偏った診療だけでなく、全身的に診てもらえる主治医が良いのではないかと思います。
今後の展望を教えてください。

患者さんにとって膠原病・リウマチ性疾患の専門家であるとともに、身近で長く付き合える主治医でありたいと考えています。患者さんとの付き合いが長くなるので、僕たちも長く元気で通院してほしい気持ちが強いですね。そのためにも、加齢に伴う慢性疾患の予防や治療をはじめ、がんの早期発見などにも努めて診療を行っています。また、膠原病は症状が多岐にわたるので、さまざまな診療科にかかることがあります。複数の診療科にかかると治療が重なってしまうことや治療の方針が定まらないこともあるので、なるべく多くの診療科や医療機関を受診しないで良いように、と考えています。膠原病専門のクリニックとして、膠原病に関して新しい知識を得て最善の診療を行うことめざすのは当たり前ですが、膠原病に限らず広い分野についてもブラッシュアップしていきたいと考えています。