早川 潤 院長の独自取材記事
医療法人聖和会 早川クリニック
(大阪市中央区/心斎橋駅)
最終更新日:2021/10/12
大阪を代表する繁華街の心斎橋。改札を抜け、階段を上がってすぐの「早川クリニック」。開院して60年、心斎橋に根差し多くの女性にプライマリケアを提供し続け、歴史ある医院。街のにぎやかさを離れ、ゆったりとした雰囲気の待合室に入ると、クラシック音楽と優しい香りが出迎えてくれる。「緊張する場所ですからね。リラックスできるようにと思っています」そう言ってふんわりと笑うのは、早川潤院長。診療はもちろんのこと、臨床研究や学会発表も熱心に手がけ、医療レベルの向上に尽力。これらの取り組みにより製薬会社からの信頼を得て、臨床治験の依頼を数多く受けているという。穏やかでいながら、眼鏡の奥の情熱を秘めた瞳が印象的な院長に、医療にかける思いを聞かせてもらった。
(取材日2017年4月19日/更新日2019年9月3日)
心斎橋という地で紡がれ続ける、医療への想い
今年で開院して60年になるクリニックなんですね。
祖父が心斎橋に「早川医院」を開院して60年になります。ですから私で3代目ですね。ただ、曽祖父も医師だったので、産婦人科としては3代目ですが、医師としては4代目になります。私たちと同じように患者さんにも親子3代で通ってくださる方が多くいらっしゃる点がうれしく思います。お母さまが中学生や高校生の娘さんを連れて来てくださることも多く、そういう意味では地域に根差しているのかなと感じます。患者さんは、心斎橋という場所柄もあって、地元にお住まいの方というよりはこの辺りで働いていらっしゃる方が多いんですが、それはずっと変わらないところかもしれません。
先生にとって医師になるのは自然なことだったのでしょうか?
中学くらいの時には、ちょっと反抗した時もありましたが、小学生の頃の作文には「お医者さんになりたい」と書いたりしていましたから、やはり自然なことだったとは思います。子どもの頃から医院に出入りしていましたから、消毒液のにおいが好きなんです。安心するんです(笑)。医師のほかに研究者にもなりたかったので、実際大学に入っても研究していましたし、研究のための留学も経験しました。開業すると、日々同じ診療を繰り返すようになってしまいがちなのですが、それは避けたいと思い、新しく興味を持つためにも、臨床研究や論文の学会発表などを定期的に行い、医療レベルの向上に努めています。そのことが、患者さんへのより良い情報提供、診療提供に重要だと思っています。
婦人科というとハードルが高い印象がある方が多いかと思うのですが。
やはり、「婦人科に来る=内診がある」というイメージがそういう印象になるんだと思います。以前、泌尿器科を受診した時に、私も内診台に乗ったことがあるんです。その時に、「これは恥ずかしいなぁ」と思った経験があります。ですから、抵抗がある気持ちはよく理解できますし、できる限り配慮をしたいと思っています。ただ、私はいつも言ってるんですけど、婦人科って絶対に内診をするところ、じゃないんです。内科みたいに話をするだけで済むこともたくさんあります。まずは来院いただいて、いろいろと悩みや困っていることを話してもらい、その上でより詳しい診察が必要かどうかを一緒に決めていけばいいんです。ですから、まずは怖がらないで受診していただけるといいと思います。
繰り返すヘルペスという病気への理解を
先生はヘルペスの研究もされていますね。
ヘルペスは繰り返す病気なので悩んでいる人は多く、特に性器の病変に対してどこにも気軽に相談できないという方が当院には多く来られます。この病気は特定の相手としか性交渉がなくても感染する場合があります。知識がないと、相手を疑って、「あなたが悪いんだ」ということにもなりかねません。ですから、感染経路や感染率についてちゃんと説明して、情報を提供していかなくてはいけないと思っています。そのためにも、情報提供のための冊子やツールを作るお手伝いもさせていただいています。当院は年間約600例(2016年4月~2017年4月)の性器ヘルペスの患者さんが来院され、また多くの製薬メーカーからヘルペス関連の臨床治験を依頼されて行っています。ですから、ヘルペスに関する新しい治療方法やアップデートされた知見は常に豊富にあり、それを診療前のカウンセリングで患者さんに伝えているんです。
全国から多くの方が相談にいらっしゃっているそうですね。
実は、ヘルペスというのは診断が難しい病気です。今までは症状と経過を見て診断していたのですが、他にも似た病変がでる病気がたくさんあるので、わかりにくい場合もあったんです。今、カウンセリングに来てくださる患者さんも、「実際は自分はどうかな?」という質問がとても多いです。症状は繰り返しますし、痛みがひどい場合も多いので、ノイローゼのような状態になる方もいらっしゃいます。いくつもの病院を受診したけれど、一向に改善されないと。以前、症状が悪化して来院された方に、学校の先生がいらっしゃいました。その方が、どこの病院でどんな診察をしてもらったかを書いた日誌を持ってきてくれたんです。その日誌を読んで、これはすごく大変だったねと。これはなんとかしないといけないと強く思いました。
具体的にはどのような診察をされるのでしょうか?
簡単に診断がつかないのはもどかしいし、困っている人をなんとかしたいということで、簡単に検査できないだろうかと、検査キットを当院で研究・開発しました。現在では保険適用で利用いただけます。このキットを使うと、短時間でヘルペスに感染しているかどうかがわかります。今まで見た目で「これはどうかな?」という症例でも、検査することでクリアにわかりますから、後は治療をすればいい。現在も全国の病院で非常に多く、使ってくださっています。患者さんは大体の場合、長い間悩んで来られているので、不快な症状の原因がわかり、対処法がわかることで、すごく安心していただけると思います。
すべての年代の女性をサポートする、安心の医療を
こんな症状があったら受診したほうがいいという目安みたいなものはありますか?
「おかしいな」と思ったら、まずは受診してもらうのが大切だと思います。例えば、生理不順や月経前症候群で悩んでいらっしゃる方はとても多いですが、どこに相談したらいいのかわからない。ですから、「生理不順なんですけど、どうなったら相談したらいいですか?」と聞きに来てくれるだけでもいいと思います。血液検査をすればわかることもたくさんありますし、場合によってはMRIとか横になるだけで受けられる検査もあります。内診することもでき、内診用の器具も年々小さくなっています。嫌なことを無理にするということはありません。困ってることを聞いてもらうという気持ちでいらしていただけたらいいと思います。
不妊やブライダルチェックの相談もできますか?
カップルやご夫婦で来院いただける方も多いです。結婚する年齢が上がってきていることもあって、妊娠できるのかどうか気にされている方も増えていますね。この検査が初めての婦人科受診という方もいらっしゃるので、どんな検査をされるのか怖いという方も多いと思います。まずは血液検査でホルモンのバランスを見るだけでもいいですし、感染症にかかっていないかを調べるだけでもいいんです。男性の検査もそうです。詳しい検査のチョイスはいろいろとしていただけますし、ゆっくり検査していってもいい。「自分は大丈夫かな?」と心配な気持ちを持ち続けないことが大切だと思います。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
現代はストレスも多いですし情報もあふれているので、女性ホルモンについて気にしていらっしゃる方も多いと思いますが、私自身は大学で内分泌系の研究にも力を入れていましたので、ホルモン療法なども行っております。また更年期に関しては、ホルモン療法だけでなく漢方薬を使うほか、軽い場合には生活指導だけで整ってくることも。今は寿命が長くなって、閉経してからの人生がすごく長くなっています。女性ホルモンの減少で骨粗しょう症から骨折しやすくなりますし、尿漏れも婦人科の分野と密接に関わっている場合が多いです。人生を楽しむためにも閉経後も婦人科でのチェックをしていただけたらと思います。すべての年代の女性の悩みを解決していけるように努力して、また多くの人へ病気の情報が伝わるように、啓発活動や臨床研究、学会発表にも力を入れていきたいと思っています。