子どもの将来に大きく関わる
「産前産後の1000日間」とは
磯川医院
(大阪市鶴見区/横堤駅)
最終更新日:2023/11/22


- 保険診療
親であれば誰もが願う、子どもの健やかで幸福な将来。そこに大きく影響しているのが、妊娠期間中の300日間と、生まれてからの700日間。この最初の1000日間こそが重要であるということが、小児科の世界では早くから提唱されているという。今回解説をしてくれる「磯川医院」の磯川貞之院長も、その考えをもっと広めたいと願う一人。日本小児科学会小児科専門医として子どもの健やかな成長をめざし、子どもの病気の診療から予防接種、保護者の子育ての悩みまでサポートする磯川院長に、1000日間の意義とは何か、何を気をつければいいかなど、母親の目線に立って詳しく聞いてみた。
(取材日2021年9月7日)
目次
子どもの将来に関わる大切な期間は、小児科受診で母子ともに健やかに
- Q産前産後の1000日間とは、どのような期間ですか?
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A
▲子どもの不安を拭うため院長の聴診器にはぬいぐるみがついている
子どもがお母さんのおなかの中にいる状態での300日と、生後700日を合わせた合計1000日。この最初の1000日間が、非常に大切であるというのが私たちの考えです。「三つ子の魂百まで」ということわざがありますが、「三つ子」というのは昔の数えで3歳、つまり満2歳児のこと。その期間に形成された体質や性格がその後の一生涯に及ぶことを、昔の人はよく知っていたわけですね。現代においても2000年頃からDOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)という概念が登場し、小児科医の世界では半ば常識として認識されています。
- Qなぜ、その期間が重要なのですか?
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A
▲広々とした待合室
胎児期や生後早期の環境は、子どもの発育や将来の体質、健康状態に大きく関わるとされています。遺伝子は受精時に両親から子へと伝わりますが、遺伝子がどのように発現していくかはこの期間にかかっていると考えられています。例えばおなかの中にいる時の栄養が適切でなければ低体重で生まれ、小児期には運動や精神の発達、成人になってからも糖尿病や高血圧症などの生活習慣病にも関係するといわれています。今、日本では低出生体重児が増えており、そこは私たちも危惧しているところです。今の日本の若者は少しひ弱で華奢なイメージがありますよね。子どもたちの将来のためにも、適切な妊娠・出産・育児期間を過ごしていただきたいと思います。
- Qその期間に、お母さんはどのような取り組みをすればいいですか?
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A
▲さまざまな症例に対応してきた院長
まずは栄養バランスに配慮した食事を取ることです。妊娠中の不自然なダイエットも問題です。日本の若い女性は貧血が多く、ミネラル不足の傾向にあり、将来骨粗しょう症になる確率がさらに高まるといわれています。それをお子さんに受け継がせてしまう事態は避けねばなりません。また多くの場合、新生児期はあまり差が出ませんが、離乳食を食べ始めてからの栄養はお子さんの発育や体格形成に影響しますので、インターネットなどの断片的な知識に頼らず、ぜひ小児科に相談してください。ただ、こうした育児上の責任はお母さん一人が抱え込むことではありません。家族支援を含め社会全体で母子を見守っていく環境が何より大切ではないでしょうか。
- Qどのようなタイミングで専門家に相談をするべきですか?
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A
▲子どもがリラックスできるよう院内にはぬいぐるみが並ぶ
妊娠や出産では産婦人科の先生をかかりつけとしていらっしゃると思いますが、欧米では出産前から育児など出生後のことを小児科医に相談できるシステムが整っています。子どもを主役に考えると、おなかの中での発育は、産婦人科医がかなり具体的なところまで管理してくださいますが、出生後の子どもの健康管理は小児科が専門です。一般的には初めて予防接種をする2ヵ月健診からご相談いただくといいでしょう。赤ちゃんの体重やアレルギー、母乳や離乳食など、小児の専門家としてアドバイスできることはたくさんあります。問題が大きくなってからではなく、お子さんのことで少しでも気になることがあれば、いつでもご相談いただければと思います。
- Qお母さんと接する上で、こちらの医院ならではの工夫は?
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A
▲些細なことでも相談しやすい雰囲気に努めている
現代は少子化でよそのお子さんと比較する機会も乏しいため、例えば乾燥肌や湿疹、発育不良など、その子の体質・個性なのか病的な状態なのかよくわからない方が多いのではないでしょうか。当院ではそうした状況を踏まえ、初めて育児をされるお母さんに対してもわかりやすい説明と適切な処置で悩みを解決できるよう努めています。誰とも接触がなく、スマホでネットを見て1人で悩んでこもっているのが一番良くありません。大きく外れてしまわないうちに方向づけを行い、一つの指標を軸として持っていただければ子育てにも自信がつくでしょう。当院には小さな子どもの扱いに慣れた看護師や受付スタッフがそろっていますので安心してお越しください。