権藤 純 院長の独自取材記事
権藤診療所
(大阪市住吉区/杉本町駅)
最終更新日:2023/12/14
大阪市住吉区に開業してから50年以上にわたり、地域の健康を守ってきた「権藤診療所」。長く通い続ける地域の患者や遠方から訪れる患者も多い。2001年にクリニックを継承した権藤純院長は穏やかな人柄で明朗な診療に努めているという。風邪の諸症状などの一般内科から、中高年に増加する糖尿病などの生活習慣病、女性に多い甲状腺機能低下症やバセドウ病などの内分泌内科、しびれや冷え、気力低下などの不定愁訴には漢方内科にて漢方薬の処方もしている同院。「治療は焦らず。どんな小さな声も聞き漏らさずに」をモットーに真摯に患者に向き合い続ける権藤院長に、医療と患者に対する思いを聞いた。
(取材日2023年7月21日)
一般内科から6つの専門分野まで広く対応
こちらにはどのような患者さんがいらっしゃいますか?
当院は風邪などの一般内科をはじめ、糖尿病などの生活習慣病、甲状腺ホルモンの分泌に関する病気、加齢に伴う慢性疾患などの老年病などに対応しています。一般内科は幅広い年齢の方がお越しになりますが、生活習慣病などは、やはり中高年の方に多く来ていただいております。糖尿病というと男性が多いというイメージがあるかもしれませんが、ある程度の年齢になると男性も女性も同じくらいの割合でいらっしゃいますね。感染症の恐れがある方は、事前に連絡をいただければ別室診療も行っているので、安心していらしてください。
50年以上も大阪市住吉区で地域の医療を支えてこられたのですね。
父の代から数えると、半世紀以上たちますね。中には父の代から通っていただいている患者さんもいらっしゃいます。また父の代からのスタッフもいます。連携もスムーズで、大切なことの共有も欠かさず行ってくれるので非常に感謝しています。看護師から受付まで気さくで頼れるスタッフばかりなので、私に言いにくいこと、言い忘れてしまったことがあれば、身近なスタッフにぜひお伝えください。小さなことでも話していただくことで、より患者さんに合った治療が提供できるようになります。こんなことを言ったら嫌がられないかとか、迷惑にならないかとか思う必要はまったくありません。対話する中で、当院でできること、できないことを明確にご提示できますし、よりスムーズな治療につながります。
漢方をはじめ、さまざまな分野に精通していらっしゃいますね。
内科、糖尿病、内分泌代謝、透析、老年病、漢方の6つの分野ですね。大学病院に勤めていた時に、必要と思った分野を学んでいったらいつの間にか専門性が高まっていきました。透析は、現在当院では対応していませんが、透析を専門に行っているクリニックで定期的に携わっています。漢方については、当時、大学病院で教えているところはまだまだ少なかったので、最初は本当に独学からはじめて、製薬メーカーが主催しているような研究会に行ったり、漢方を専門に取り扱っている先生の話を聞く会に参加したりして、少しずつ勉強していきました。
慢性疾患の治療で、患者さんに心がけていることはありますか。
人間は習慣の生き物という言葉がありますが、長く続けてきた生活習慣を変えることは本当に難しいものです。だから、うまく習慣化できなかったとしても、ご自身を責めないでいただきたいですね。できなくても「次もう一回」と思えるように、決して責めない、患者さんの心に寄りそう診療を心がけています。ただし、合併症に関しては適宜お伝えします。糖尿病は血管の病気です。例えば、目の血管に負担がかかれば網膜症になりますし、腎臓が悪くなれば透析の可能性もあります。脅すわけではありませんが、放置すれば誰しもそうなる可能性があることはお伝えするようにしています。
糖尿病の治療だけでなく、漢方薬の治療にも注力
糖尿病は、ご自身で気づかれる患者さんが多いのでしょうか?
健康診断で「血糖値が高い」「ヘモグロビンA1cの数値が上がっている」などと診断されていらっしゃる方が多いですね。他の血液検査で引っかかって、当院を紹介される方もいらっしゃいます。ただ、糖尿病は数値上の異常が出ても、初期は体への症状が出にくいんです。過去の健康診断で医師から注意を受けていたけど、なかなか足が向かなくて症状が進行してしまったという方も少なくないです。空腹感は強いのにいくら食べても太らない、手足がしびれる、喉が異様に乾く、などはかなり病状が進行してから現れる症状です。
糖尿病の治療の進め方や流れを教えてください。
糖尿病の場合、まずは生活習慣の見直しですね。食事や運動指導が基本です。糖尿病は症状が落ち着いたからと「はい、もう来なくていいです」というわけにはいきません。途中でドロップアウトしないように定期的な受診が必要です。また、すでに糖尿病が長く続いている方は、最初から飲み薬やインスリン注射をお出しすることもあります。インスリンの注射は苦手な方も多いですが、先送りにするよりも、早い段階から注射を使うと膵臓が休まるというメリットが期待できます。その結果、インスリンを分泌する機能の回復が望める可能性もゼロではありません。どの病気でもそうですが、早めに手を打っておけば、いい方向へ向かう可能性は望めますので、患者さんの段階に適した治療をお勧めします。また、合併症が出ているなどであれば、速やかに他の専門とする医師をご紹介します。
早くから漢方薬の治療に取り組んでこられたのですね。
当時勤務していた内科に不定愁訴で受診されていた患者さんがいまして、ずっと西洋薬は処方されていたのですが、いまひとつ期待される効果が感じられなかったことがありました。その時、たまたま私が漢方の勉強をしていまして、何か効果が期待できるのではないかと思い、もっと勉強しようと思いました。西洋薬は病名が明らかにならないと処方しにくいという側面があります。例えば「体の冷え」は万病の元になり得ますが、それに対する西洋薬はありません。東洋医学には、体を温めるための生薬が複数ありますから、適宜組み合わせて処方することができます。
漢方薬と西洋薬、両方の観点からアプローチするメリットは何でしょうか?
糖尿病の場合は、血糖コントロールという意味では西洋薬は効果が期待できます。ただし問題は、その ホルモンの値が正常値になったとしても、いわゆる不定愁訴、例えばしびれやだるさ、冷えなど、複数の症状が続くことがままあるということです。当院では、まず患者さんの症状をしっかりとお聞きして、必要があれば両方処方します。長引く不定愁訴を諦めていらっしゃる方も少なくありません。漢方薬を使ってみたい、病名がはっきりしないけど体がつらいという方は、ぜひお気軽にご相談いただきたいですね。
父から受け継ぎ、ますます地域で必要とされる医療を
内分泌内科で甲状腺機能低下症やバセドウ病にも対応されているのですね。
甲状腺機能低下症などについては、しっかりお薬を飲み続けてホルモンの正常値が維持できれば、生活に煩わしい制限はないことがほとんどです。放置すると急性増悪のリスクがありますが、処方した薬をしっかり服薬して定期的に来ていただければ、過度に心配することありません。しっかりサポートしていきますので、気になる方は早めにご相談に来ていただきたいですね。
先生が医師をめざされたきっかけは何でしょうか?
父は住吉区で開業医をしていたのですが、その背中を見て育ったのが1番大きいです。休みの日でも、夜中でも関係なく、ずっと診療に飛び回っていましたね。その姿を見て、地域の皆に頼られるやりがいのある仕事だなと感じていました。そこが原点です。2001年に継承した当時は、専門分野に特化することをめざしていたわけではなく、地域の医師として幅広く対応していきたいと思っていました。現在も内科全般を診ていますが、次第に糖尿病や漢方薬を求められる患者さんも増えてきました。
最後に、患者さんにメッセージをお願いします。
当院は、「ちょっとしたことも遠慮なく相談できる診療所」でありたいと考えています。ご自身が日々の生活で気になる症状、医師の説明で疑問に思うことは、小さなことでも、遠慮せずにお聞かせください。病気には、糖尿病のように一生付き合わなければならないものもあります。長い付き合いを続けるにはちょっとした話でも遠慮なく聞ける関係性を患者さんと築くことが大切です。そのためにも、初診は特に丁寧にお話をお伺いします。現在の症状だけでなく、ずっと悩んでいる不定愁訴が漢方を利用して改善が望める可能性もあります。どんな小さなこともぜひ遠慮なくお話ください。