松木 智子 副院長の独自取材記事
秋田医院
(大阪市阿倍野区/阿倍野駅)
最終更新日:2025/05/08

大阪メトロ谷町線の阿倍野駅徒歩3分、各線天王寺駅からも徒歩圏内の「秋田医院」は1959年に開業したクリニック。2代目の松木修院長と松木智子(のりこ)副院長の二診体制で、互いの強みを生かした診療を行う。心臓外科医師として国立医療機関や海外で研鑽を積んだ松木院長は、若年者から高齢者まで幅広い患者を担当。智子副院長は主に小児と女性患者を受け持つ。医院の特色や注力している診療、小児のアレルギー疾患や発達障害などについて、自らも2児の母として出産・育児を経験し、ママたちへの深い愛情にあふれる智子副院長に話を聞いた。
(取材日2019年10月21日)
性格・専門分野の違う男女医師二診体制が特徴
クリニックの特色を教えてください。

当院は先代である私の実父がこの地に1959年に開業しました。ここ一帯は再開発エリアで当時の建物はなくなりましたが、父逝去後の1995年4月、夫である松木修院長とともに夫婦2人で継承しました。当院は性格や得意分野が違う男性医師と女性医師の二診体制で、さまざまな患者さんに対応できることが特色です。まず男性医師の院長は心臓外科医師としてキャリアを積み、循環器系の患者さんを多く診ているのですが、糖尿病をはじめとする生活習慣病治療のご相談でお越しいただくケースが多数あり、実績を上げています。私はもともと呼吸器アレルギー科からのスタートで、小児患者さんを診ることがとても多かったことから、小児の疾患に重点を置いて勉強を重ねました。
院長先生と副院長先生で、専門分野もお人柄も違うのですね。
院長が若い方からお年を召した方まで幅広い層の患者さんを、私はお子さんと女性患者さんの一部を担当しています。院長は先天性心疾患の新生児の全身管理までできますから、お子さんの診療もいたします。院長は特に曲がったことが嫌いで妥協ない医療を提供したいという強い思いを持つ医師ですので、厳しいと感じられる患者さんもおられるかもしれません(笑)。でも、働き盛りの男性患者さんからの信頼は厚いように思えますし、女性患者さんにも不思議とファンがいらしてくださっています(笑)。内科の開業医は専門領域にとどまらない広い知識を要求されますので、私は医師になった頃からどんなことにも対応できる医師をめざし、小児科、内科全般、成人病センター勤務時は乳がん触診まで学びました。現在は院長とともに、週2~3回は皮膚科・眼科・耳鼻科・泌尿器科……、内科や小児科に限らない勉強会に参加しています。
院内処方を続けている理由を教えてください。

患者さんに時間的・経済的メリットがあるからです。院内処方は専属でスタッフが1人必要ですし、当院に利益はありません。親しい先生方にも、「何で院内処方を続けているの?」と言われることもあります。私たちのように医家で育ち、親の献身的な医療姿勢を見て育っていると、DNAに社会貢献意識が変に根強く組み込まれているのでしょうかね(笑)。自分たちが処方したお薬を、できるだけ院内処方で直に患者さんに手渡しすることが処方した医師の責任であると考えています。その分、最新のお薬の勉強や投与方法の学びは日々欠かせません。
副院長は2児の母。アレルギーや発達障害の相談も
注力している診療はありますか。

当院で力を入れている治療の一つは、首へのトリガーポイント注射です。例えば胃が痛い、息苦しい、めまいがすると訴える患者さんの中には、首や肩のこわばりが関連していると考えられる方が多くいらっしゃいます。そうした患者さんにはトリガーポイント注射を施行し、首や肩周りの緊張をほぐしていくことでさまざまな症状の改善をめざします。また、遠方から来られる患者さんも多くいらっしゃいます。保険診療ですから費用もそれほどかからず、寝違えてしまった方から、肩凝りのひどい授乳中のママ、高齢者まで対象は幅広いです。首に注射をすると言うと怖がる方も多いのですが、解剖学的に不安のない方法だと熟知していますので、安心して受けていただけます。
近年、子どものアレルギーが増加傾向にあると聞きますがいかがでしょうか。
子どもさんに限らず、アレルギーは近年増加しています。私たちの暮らす環境は日に日に複雑に多様になっていますので……。アレルギーとは、体外のものが体内に入ってくる時に、それが私たちの体に害ではないか、敵ではないかと監視している免疫の働きが敏感になりすぎて起こるものです。敵ではないものに攻撃をしかけ排除しようとする結果、じんましんや呼吸困難などのさまざまな症状が起きてしまうのです。アレルギーの治療目的は、繊細すぎる免疫の働きをなだめ穏やかにすることといえます。心配いらないよ、体に害のないものだよ、と教えてやるのです。お子さんのアレルギーに責任を感じ、申し訳なく思われるお母さんがおられますが、その必要はありませんので、安心してお子さんの治療や予防に取り組みましょう。
発達障害への医師としての対応を教えてください。

1歳半くらいからある程度の検査ができますので、専門の医療機関で診断をつけていただきます。お子さんごとに特性が異なりますので、対応が違ってくるからです。発達障害は病気ではなく、特性なのでお子さんにしていただくのは「おけいこ」です。そのお子さんが社会の中で過ごしやすくなるためのおけいこを私たち専門家としていきます。ご心配をお持ちなら、まずは医療機関か保健機関へのご相談をお勧めします。
地域の人へ正しい医療とたっぷりの愛情を
先生は学校医や園医など公的な活動も精力的に行われていると伺いました。

私は子ども2人の出産・育児、そして主婦としての仕事もあり、当院の診療と近隣の園医、学校医のみに専念してきましたが、5~6年前から医師会活動に携わらせていただく機会を得ました。すると、もう少し早くから取り組めばよかったなと感じることが多々ありました。例えば、私が長くやってきた校医一つをとっても後継者問題が起こっています。校医は責任が重く時間もかかる報われにくい仕事で、開業医には引き受けづらい役目です。若い先生方に、「これも医師の務め」と強制できるものではありませんし、私が頑張ればいい、という話でもない……。対策を講じなくてはならない問題で、現在いろいろと進めつつあります。でも、こういう医師会、校医などの活動ができるのも院長の協力があってこそ。院長には感謝しかないですね。
今後の展望を教えてください。
この地域に多いお若い世帯の方々は、お勤め関係の転居でお別れする場合があります。寂しい思いもいたしますが、いつか「あの時のあの先生、良かったよね」と振り返ってもらえる医師でいたいと思っています。そういう意味では、時間・空間を越えてすべてのかかりつけ医がライバルです(笑)。院長はこれまでも、そしてこれからも「正しい医療を提供する」ということを強く意識しています。実務面では、この地区は古くからお住まいの方々も多く、お年を召していかれます。開業医として、その方々をしっかりと在宅医療で支えていくつもりです。
読者へのメッセージをお願いします。

1つ目は、「インターネットで見た」「人から聞いた」ことを信じ、主治医を信じきれない患者さんがいらっしゃることです。しかし人々の思い込み、風聞やインターネット情報に、いかに誤りが多いかを知ってほしいですね。まずは医師の話を“無”の気持ちで聞いて、もう一歩踏み込んで医師を信用してほしい。2つ目は、他人を尊重してほしいということ。これは自分を大切にすることにつながります。いろいろな場面で目をそらしがちな自分の本質を見つめ、相手に寄り添い、相手を許すこと。同時に自分は至らない人間だと自分を責めすぎないこと。前向きに穏やかな明るい気持ちで過ごすように努めること。そうすれば心身の健康にもとても良いのです。特に子育て中のお母さん、みんなとても良いママですよ、頑張ってね。