春田 龍吾 院長の独自取材記事
春田眼科医院
(大阪市東淀川区/上新庄駅)
最終更新日:2024/06/06

阪急京都本線・上新庄駅から徒歩2分。「春田眼科医院」は、昔ながらの街並みが残る商店街の一角で60年以上、地域の目の健康を支えてきた。春田龍吾院長が専門とする神経眼科や緑内障の治療を始め、コンタクトレンズのトラブルやアレルギー性結膜炎、子どもの視力低下など幅広い診療に対応。特に、斜視の検査・治療に注力し、大人と子どもそれぞれの悩みに合わせた治療を提案している。診療のモットーは「丁寧に話を聞くことに尽きる」という春田院長。患者の不安を軽減し、納得して帰ってもらうためなら時間を惜しまない。初代院長の思いを継ぎ、地域のホームドクターとして尽力する春田院長に、開院の経緯や地域への思い、今後の展望について聞いた。
(取材日2024年5月10日)
先代の思いとともに、地域のために60年
まずは、医師をめざしたきっかけからお聞かせください。

父が小児科医、母が眼科医として働く姿を子どもの頃から見てきました。継承できるようになりたいという気持ちは、ごく自然に抱くようになりましたね。眼科は、診断が出やすいという特徴があります。直接治療に結びつく判断ができるところに面白さを感じ、母と同じ眼科医の道を選びました。当院は1956年に母がこの地で開業し、私が眼科医になってからは、2人体制で診療してきました。開業当初、周辺は住宅地だったそうで、近隣は大きく様変わりしましたが、60年以上にわたって家族3代で来ていただいている方もいらっしゃいます。実は、私は開業した年に生まれており、母は2021年に93歳で亡くなる2ヵ月前まで患者さんを診ていた、本当にパワフルな人。ご家族みんなで通える「地域のホームドクター」をめざしてきた先代の思いを継いでいきたいと考えています。
幅広い年齢層の方がいらっしゃるのですね。年代別にどんなお悩みで来院されるか教えてください。
私が専門とするのは神経眼科や緑内障。患者層のメインは高齢の方で、視力障害や緑内障など、精密検査を希望される方が大半です。近隣に大学がいくつかあるので学生も多く、コンタクトレンズのトラブルやアレルギー性結膜炎などを訴えて来られます。小学生以下のお子さんは、視力低下がかなり増えていると感じます。学校検診が受診のきっかけになることが多いですね。全国的に視力低下の弱年齢化が言われていますが、半年ほどで大幅な低下が見られることもあり、危惧しています。
斜視専門の外来もありますね。どのような検査・治療が受けられるのでしょうか。

まずは斜視の角度や両眼視機能、立体視などの測定で検査します。これ以上視力が発達しない大人の場合、斜視の治療は美容的な意味合いが主な目的になりますが、子どもは異なります。小さい頃から斜視を放置していると、片方の目でばかり見てもう一方が“お休み”をしている状態になってしまうんです。使っていない目の発達に遅れが出て弱視を併発することもあるので、アイパッチや矯正用眼鏡を用いて調整を図っていくことが必要になってきます。3歳くらいから斜視の兆候が出るようになりますが、やはり学校検診で見つかることが多いですね。指摘されたら早めに受診していただき、10歳までに治療を始めることをお勧めしています。
丁寧さ第一の対応は、ホームドクターとしての責務から
斜視治療を含め、お子さんの診療で気をつけていることはありますか?

斜視の矯正は特に、長いお付き合いになることも多いので、とにかく無理強いをせず、診察に慣れてもらうような接し方を心がけています。きっと自宅を出るまでにいくつもハードルを越えてきた子が、ここで私の服装を見てまた嫌になる。診察の途中で飽きてしまう子も多いので、遊び感覚で視力検査ができるように声かけを工夫しています。先ほどの話にもつながりますが、開院から60年以上たち「小さい頃はお母さんに対応してもらっていました」という方が多いのが当院の特徴です。母の対応で楽しかった・信頼できると感じていただいた方が、大人になってお子さんを連れてこられるので、そこを裏切らないようにしたいですね。
高齢の方や学生の診療は、いかがでしょうか。
一人ひとりを丁寧に診察し、患者さんが自身の状況や治療内容をしっかりと理解して帰れるようにすることを、一番のコンセプトにしています。「病診連携」という表現があるように、私たちの役割は大きな病院で検査や治療が必要な人を前段階で検出することと、治療が済んだ方の経過観察。いわゆるスクリーニングとアフターケアを担うのが「町のお医者さん」です。ゆっくりと視力が低下していく緑内障を始め、目の症状に不安を感じる方は多いので、心理面でのフォローアップも重要だと考えます。納得の行く説明を大切にしている分、どうしても待ち時間が発生してしまうのですが、できる限り不安を取り除いて帰っていただくために、しっかりと時間を取って対応したいと思っています。
多くの学校検診にも対応されていると聞きました。地域への思いをお聞かせください。

保育園・幼稚園、小・中・高校の学校医をしています。学校検診で気になる症状の発見につながることもありますし、各学校に私の連絡先を知らせているので、ボールが当たったなど目の外傷が起こったときには、すぐに相談できる体制になっています。理想は、子どもから高齢の方まで、困ったときに「あそこに行けば」と思い出してもらえること。「ホームドクター」として、地域の方の目の健康を支えていくことが、当院の一番の役割ですね。
変わりゆく時代の中で、地域のために変わらない医療を
長年働いているスタッフが多いとお聞きしました。心がけていることや秘訣を教えてください。

多くのスタッフが20~30年ほど働いていて、育児に専念するために離れる時期があっても、数年後には戻ってきてくれています。厳しいことを言い合う場面もありますが、関係性を築けているからこそ。信頼し合えるスタッフとチームで診療にあたっています。患者さんからは「ここのスタッフは誰もやめないね」と言われることもあり、長年の顔見知りであるスタッフがいることが安心感にもつながっているのかもしれませんね。
ところで、健康のために気をつけていることやご趣味はありますか?
診察の合間の昼休憩の時間には、週3回・5キロほど歩いています。トレーニングというほどのものではありませんが、健康のためですね。趣味は、鮎釣り。6月~9月末まで、休みの日には和歌山や滋賀で1日中、川の真ん中に立って釣りをしています。川の流れもあるので、足腰は鍛えられていると思います。鮎釣りのシーズンが終わったら、山登り。夏は真っ黒に日焼けしているので、患者さんにも「この季節が来たか」と気づかれているでしょうね。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

時代の流れによって、さまざまなニーズが出てきたり、診察のデジタル化が進んだりしても、「人間を診る」ということは開院当初から何ら変わることはありません。新たなことをどんどん展開していくよりも、これまでどおり、地域の皆さんのために尽くすのみだと考えています。しっかりと話を聞くことを大切にしている分、やはり待ち時間は発生してしまいます。ただ、その時間もゆったり過ごしてもらえるようにと、広い待合いスペースを用意していることがこだわりです。一人ひとりに向き合って満足していただけるような診療を心がけているので、困ったことがあれば何でもご相談ください。