本庄 尚謙 院長の独自取材記事
ほんしょう内科クリニック
(大阪市大正区/大正駅)
最終更新日:2024/11/29

大阪市南西部、昔ながらの情緒が残る大正区に2013年に開業した「ほんしょう内科クリニック」。院長の本庄尚謙先生は循環器内科を専門とし、心臓疾患、生活習慣病をはじめ小児科医療、在宅医療まで幅広く取り組んでいる。訪問診療を行う中で「患者さんの思いや家族背景を知り、一人ひとりに寄り添ったオーダーメイドの医療を提供したい」という思いがより一層強くなったという。ざっくばらんな雰囲気の本庄院長には、患者だけでなく、患者の家族からの相談も多い。医師会での活動にも積極的に取り組み、大正区全体の医療・介護の質を上げたいと考えている。そんな本庄院長に、診療について、地域への思いについて話を聞いた。
(取材日2024年10月11日)
幅広い医療に対応し、生涯を支えたい
まずは、クリニックの概要について伺います。

ここ大正区は下町情緒が残る住みやすい町です。ご近所同士のつながりも深く、世話好きの方も多いので、私の方が患者さんから元気をもらうこともあります。そんな地域の皆さんの健康を生涯にわたってサポートしていくことをめざしています。また、この地域は以前から医療と介護の連携がよく取れており、診療所と中核病院との病診連携がスムーズに行えることは良い点だと思います。幅広い医療を提供したいと考える当院には、高血圧、糖尿病の患者さんやがんの治療中の方、認知症など高齢の方々、ワクチン接種の乳幼児などさまざまな患者さんが受診されます。そのため、感染症の外来を予約制にし、11時半から12時までと18時半から19時までと時間を分け、部屋も通常とは別のパーティションや2階の待合室にご案内し診療しています。
来院される患者さんについて、もう少し詳しく教えてください。
患者さんは0歳の赤ちゃんから90代までと幅広いですね。大正区は高齢化率が高く高齢の方が多いです。割合としては、お子さんが10%ぐらい、90%は大人の患者さんです。私が循環器内科を専門としていまして高血圧や糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の患者さん、慢性心不全や不整脈、心臓外科術後の方々が受診されています。健康診断で異常があった方も多く相談に来られていますね。そのほか、午前と夕方の外来の間に訪問診療を行っており、ご家族からの介護の相談にもお応えしています。
訪問診療についてもお聞かせください。

さまざまな理由で通院が難しくなった患者さんのご自宅やグループホームなどの施設に伺っています。月曜から土曜までの毎日、午前診と夜診の間で13時から15時の間に訪問し、通院困難な高齢の方や認知症の方、がん終末期の患者さんを診ています。在宅でお看取りをさせていただくケースもありますが、事情により自宅でのお看取りが難しい場合は、適切な時期まで在宅医療を続け、病院にご紹介させていただくことも可能です。人は誰しも必ず死を迎えるもの。それぞれの道を一生懸命に生きてこられた方が、人生の最後を不本意な形で迎えるとしたら悲しいですよね。可能な限りご本人の希望に沿った最後を迎えられるよう、ご本人とご家族をサポートしたいと考えています。
患者の思いに寄り添う診療に注力
心がけていることは何ですか?

患者さんの求めていることがどこにあるかを、できるだけ早くにキャッチしたいと考えています。同じ風邪の方でも、咳や熱の症状を治したいのか、検査を希望しているのか、医師から「大丈夫」と確証を得て安心したいのか、ニーズはさまざまなんですね。それを踏まえないで、検査を希望していない人に検査しても満足されないでしょう。こちらからは最善と思われる治療方針を提示しますが、その上で患者さん自身が決められた方針に沿って力を尽くしたいと考えています。他にも健康診断で異常値を指摘され、「薬を飲まずに、運動と食事で対処できませんか」と言われる方がいます。糖尿病や脂肪肝のように患者さんの努力が実りやすい場合もありますが、頑張っても結果に反映されにくいものもあります。まずはご本人の希望を伺いつつ、効率のいい改善方法はこちらですと提案するなど、柔軟に対応しています。
スタッフの方について教えてください。
受付スタッフは、皆さん真面目で、患者さんをはじめ、お仕事で当院に来られる方にもきちんと丁寧な対応をしてくれます。私自身、喜怒哀楽が表に出やすいタイプですが、スタッフの皆さんは大人でどんなときでも同じように笑顔で落ち着いているので、本当にありがたいですね。看護師は、患者さんが院内で倒れた時や、緊急時にも冷静に適切な対応をしてくれますし、患者さんから得た情報をこまやかに報告してくれ、とても頼りになります。スタッフのメンバーが変わらないのがいいねと患者さんによく言われます。スタッフが患者さんのことを知っていてくれるので、患者さんからもコミュニケーションが取りやすく、安心されるのだと思います。また、朝早くから当院の掃除をしてくれている70歳代の女性は、開業当初から来てくれており、10年以上皆勤なんです。スタッフ皆にも慕われており、これからもずっと元気で働いてほしいなと思っています。
印象に残っているエピソードはありますか?

訪問診療に携わっていると、患者さんだけでなくご家族との関わりも深くなります。以前、終末期のがんの患者さんで、入院するか在宅で過ごすか迷っておられる方がいました。最近は、新型コロナウィルス感染症の後から、入院するとご家族は面会しにくい状況があります。患者さんから、お孫さんが毎朝顔を見に立ち寄っていかれることを伺っていましたので、最期を家で過ごす提案をしました。できる限り在宅で過ごし、ご家族との大切な会話の時間を長くとれれば、ご本人、ご家族にとってとても良いことだと思います。真剣に患者さんに寄り添うことで、患者さんご本人とはもちろん、ご家族とも深い信頼関係を築くことができるのは、在宅医療に携わる医師としての醍醐味(だいごみ)だと感じています。
歯科医師と連携し、嚥下リハビリテーションにも対応
医師をめざしたきっかけを教えてください。

「手に職をつけ、人の役に立ちたい」と思う気持ちから進路を決めましたが、先祖に姫路城のお付き医師がおりまして、祖父がその方の名前を私につけました。医学部を志したのは、そうしたご縁もあったのかなとも感じています。循環器内科を選んだのは、命に関わる重篤な急性期の患者さんを、医師の適切な判断と治療技術により救える。そこに医師としてのやりがいを感じ志しました。
在宅医療で力を入れていることを教えてください。
在宅の患者さんの中には、飲み込みが悪くなり胃ろうを造設されている方もいます。窒息や誤嚥のリスク軽減が目的ですが、意識がはっきりされているならば皆さん口から食べたいと思われるでしょう。ですから誤嚥性肺炎を繰り返している方や、認知症や高齢で食事量が減っている方に向けて、嚥下リハビリテーションを歯科医師と連携して行っています。昼食だけでも経口からの食事にする、夜にアルコールを少量飲むなど試しながら、少しずつ摂取できるようになれば幸いです。また患者さんから「ビールを普通に飲むとむせますが、シャーベット状にするとおいしく飲めるんです」と教わり、私も試しましたが本当においしいですね。焼酎を飲用栄養剤で割るなど、リハビリ担当の方や患者さん、そのご家族のさまざまな工夫には私も感動させられます。嚥下機能に問題があっても、1食でも何か食べられたらという思いを胸に、今後も在宅でできることを探っていきたいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

私含めスタッフ一人ひとりが患者さんの健康のために寄り添い、努力するクリニックでありたいと思います。皆さんが元気に長生きできるよう、可能な限りオーダーメイドの治療を行い後押ししていけたらと思います。既に病気の治療をされている方はもちろん、若い方や働き盛りの方に、より健康でいられるように運動や食事で気をつけることなどアドバイスできればと思います。当院には2階に茶室があり、スタッフや患者さんをはじめ、地域の医療・介護スタッフを招いてお茶会を開いています。医療や介護でつながった方々とこういう場を持つのも新鮮で、面白い試みだなと思い、皆さんへの刺激や力に少しでもなれたらいいなと考えています。健康診断結果が気になったり、自分のこと、親のこと、身内の方の介護の相談でも、まずはお気軽にご来院ください。