将来的な不妊やがん化のリスク
若い女性に多い子宮筋腫や卵巣嚢腫
ちもりメディカルクリニック
(大阪市福島区/玉川駅)
最終更新日:2024/01/26


- 保険診療
子宮筋腫や卵巣嚢腫は、女性特有の疾患の中でも珍しくない病気だ。症状が現れずに一生を終えることもあれば、つらい月経痛や月経過多、場合によっては不妊の原因になることもある。しかし、それにもかかわらず月経痛がひどくても「誰にでもあるものだから、仕方がない」と我慢し、クリニックを受診しない人も多い。福島区にある「ちもりメディカルクリニック」の千森弘子院長は、そんな現状を少しでも変えたいと奮闘する医師の一人。「若いうちから正しい知識を身につけて、婦人科を受診してほしい」と呼びかけ、女性が生き生きと過ごせるよう医療面からのサポートに取り組んでいる。今回は若い女性もかかることがあるという子宮筋腫と卵巣嚢腫について詳しく話を聞いた。
(取材日2023年11月22日)
目次
健やかに生きるために、不調を感じたら気軽に受診を。症状がなくても定期的な婦人科受診を
- Q子宮筋腫とはどのような病気ですか?
-
A
▲子宮筋腫は重症化しないための経過観察が大切
子宮筋腫とは、子宮の病気の中で特に多い良性疾患です。子宮の中にこぶ状の腫瘍ができる病気で、1個しかできない人もいれば、多数できる人もいます。女性ホルモンの影響によって発症するため、20代からでも小さな芽のような筋腫が出始め、少しずつ大きくなっていき、閉経により小さくなります。子宮筋腫はできる場所によって体への影響が異なります。たくさんあっても何も症状がない人もいれば、子宮内膜に近い部分にできることで月経過多や貧血などの症状が現れることもあります。自覚症状がないことも多く、健康診断で貧血の項目に引っかかり、発見されることも少なくありません。
- Q卵巣嚢腫とはどのような病気ですか?
-
A
▲卵巣嚢腫は卵巣がんになるリスクも
卵巣嚢腫は卵巣にできる良性の腫瘍です。卵巣の中に袋状の病変ができる病気で、袋の中の成分の違いでいくつかの種類に分けられます。小さなうちはほとんど無症状のため、健康診断や婦人科を受診してたまたま見つかるケースも多くみられます。大きくなると、まれに卵巣嚢腫茎捻転が起きたり、卵巣嚢腫が破裂したりすると激痛が起こります。また卵巣嚢腫の中には、検査で見つかっても次の月経サイクルで消えるものもあれば、卵巣子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)のように月経のたびに徐々に大きく、症状が強く出るようになるものもあります。まずはどのようなタイプの卵巣嚢腫か見極めることが重要です。
- Q子宮筋腫や卵巣嚢腫を放置すると、どんなリスクがありますか?
-
A
▲痛みや患者の気持ちに配慮して検査することを重視している
まず、子宮筋腫は、できる場所や大きさによって月経過多による貧血と、将来的な不妊のリスクが考えられます。子宮筋腫核出術後は子宮破裂のリスクがあるため、すぐに妊娠できないこともあります。卵巣嚢腫については、卵巣がんになることが最大のリスクと言えるでしょう。また、卵巣嚢腫が大きくなると、卵巣嚢腫茎捻転・破裂から緊急手術となることもあります。その場合、開腹手術しか選択できずにおなかに傷が残ってしまいますし、妊娠時の子宮破裂といったリスクを高めることにもつながります。とはいえ、子宮筋腫も卵巣嚢腫も大きくなりすぎないように定期的に検査を受けて見守っていれば、重大な病気につながることはほとんどありません。
- Qこれらの検査や治療法について教えてください。
-
A
▲女性の健康を守る地域のかかりつけ医
検査は主にエコー検査で行います。膣の中にプローブを挿入して観察しますが、デリケートな部分ですので、10代の患者さんなどはおなかの上から検査しています。嚢腫の判別が困難な場合や筋腫の位置を正確に診たい場合はCTやMRIなどの精密検査も行います。治療は、特に症状のない場合は定期的な経過観察だけになることも少なくありません。初めは服薬治療を行い、筋腫や嚢胞の縮小を図るのが一般的ですが、部位や大きさ、妊娠希望の有無によっては手術が必要と判断することもあります。近年は腹腔鏡手術やロボット支援手術など、傷口が小さくて済む低侵襲な治療も広がっていますよ。
- Q女性が健康な体を維持する上で、大切なことは何でしょうか?
-
A
▲定期的な検診が大切と語る千森院長
定期的な検診を受けることをお勧めします。何かしらの不調があれば放置せず、早く検査して、対処するということが大切です。特に症状がない場合でも、健康であることの確認になりますからね。その中でもエコー検査は必ず受けていただきたいと思います。子宮筋腫や卵巣嚢腫は早く見つかれば経過観察で済むことも多いですし、万が一手術が必要となった場合も、子宮や卵巣の温存、妊娠を望めるケースがほとんどです。若いうちから自身の体調の変化に気を配り、女性特有の疾患について正しい知識を身につけ、検診を含め婦人科を受診してほしいと思います。