松下 正幸 院長の独自取材記事
松下医院
(大阪市福島区/野田阪神駅)
最終更新日:2026/03/13
大阪市福島区で60年以上にわたり、地域に密着して医療を提供し続けてきた「松下医院」。身近なかかりつけ医として、地域住民に頼りにされてきた存在だ。すべての診療を担当する院長の松下正幸先生は、父の後を継いだ2代目。「人を診る」診療を大切にして、内科・消化器科・循環器科・小児科と幅広く対応しながら、胃の内視鏡検査や予防接種なども行っている。福島区医師会で10年以上精力的に活動を続けてきたという松下院長は、地域医療に対する思いも深い。そんな松下院長に、診療時に心がけていることや、患者とのエピソードなどを語ってもらった。
(取材日2018年6月21日)
地元に密着し、住民の健康を支えて60年余り
先生のご経歴と、院長に就任されるまでの経緯をお聞かせください。

神戸大学医学部を卒業後、研修医を経て、国立循環器病研究センターの動脈硬化・代謝内科、神戸大学医学部の第2内科に勤務し、姫路市にある井野病院では内科部長を務めました。専門分野は脂質代謝、糖尿病、消化器内科、循環器内科です。その後、カナダのブリティッシュ・コロンビア州立大学医学部に留学し、2年間ほど脂質代謝の研究を行いました。帰国して、開業したばかりの六甲アイランド甲南病院で内科医長をしていた時に、父が病気になり、それをきっかけに当院に入って、副院長として診療を始めました。そして父が亡くなった1999年に、院長に就任しています。
こちらは歴史のある医院だそうですね。
私が生まれた1955年に、父が当院を開院しています。ですから60年以上の歴史を、この地域の患者さんとともに刻んできたことになります。父はこの地域にある幼稚園の園医や、小学校の校医も引き受けていました。来院された地元の患者さんたちからは、「大先生に、うちのおじいちゃんを看取ってもらった」と言われることもあります。その度に、父はこの地域の開業医として、地域に深く根差した医療を行っていたのだなと感じます。
先生から見て、この地域はどのような特徴がありますか?

ひとことで言うなら「都会の田舎」でしょうか。大阪駅に近く、梅田や難波へのアクセスも良いので、最近は新しい住民も増えていますが、昔からここに住んでいる方がとても多い所です。昔ながらの下町の雰囲気が残っていて、治安の良いエリアとしても知られています。大学に入学した時から離れていたこの地元に帰ってきて、診療を始めた時には、友達みんなが周囲に宣伝してくれました。そんなふうに、人とのつながりも温かく、下町の良さが残っている地域です。
病気だけを診ず、人を診て、最終的には病人を診る
診療時に心がけていることを教えてください。

私は病気ではなく、病人を診たいと思っています。悪いところだけを診るのではなく、人を診て、最終的には病人を診るという考え方です。患者さんの生活習慣や取り巻く環境、状況など、人としての患者さんを知る努力をした上で、病人としての診療を行っていく。そうしたことを心がけています。例えば、体調を崩された患者さんの話を聞いていくと、ペットロスからの体調不良であることがわかることもあります。現れている悪い部分だけを診て、薬を出して治そうとするのではなく、その人を知った上で、病気を診ることが大事だと思います。大きな病院にいた時は、学問としての医療を追究することが面白かったのですが、当院に来てからは、しつこいくらいに人を診ることを心がけるようになりました。
患者さんの主訴はどのようなものが多いですか? また、診察していて何か感じることはありますか。
内科、消化器内科、循環器内科、小児科と幅広く対応していますので、患者さんの来院の目的もさまざまですが、糖尿病、高血圧症、脂質異常症など、いわゆる生活習慣病で治療に来られる患者さんは多いですね。生活習慣病の患者さんに対応していて感じることは、治療して長生きしてもらうことは良いことなのですが、認知症になる方を増やしてはいけないということです。薬で治療するだけでは、生活習慣病は根本的に治せませんし、将来的に認知症になるリスクも減らせません。認知症や生活習慣病を防ぐためには、運動などの習慣をつくっていくことが大事です。今は、そうした予防のための生活習慣を提案していく時だと感じています。
印象に残っている患者さんはいますか?

私は基本的に、患者さんの生活習慣を変えてもらって治療ができれば、それが一番だと思っています。ある患者さんを診察したとき、肺気腫であることがわかり、私が「タバコはやめたほうがいい」と伝えたところ、その患者さんはその場で「やめる」と言って、ライターとタバコを置いて帰られました。悪い生活習慣が原因で病気になっている場合は、いかにその習慣を変えるかが大事になります。それができないと、薬を出してもなかなか治りませんし、結果的にはお金もかかってしまいます。その患者さんは、自分の悪い習慣をきっぱりとやめて、治療を行うことができました。患者さんに自分の生活習慣を変える気持ちになってもらえるよう、患者さんの「やる気スイッチ」を常に探りながら診察をすることも、大事だと思った出来事でした。
地域医療から、認知症にならない対策を提案したい
医師としてのキャリアの中で、忘れられないエピソードがあればお聞かせください。

医師として心がけていることとして、「病人を診る」ことを紹介しましたが、もう一つ、私が医師として心に刻んでいることがあります。それは「喜んで死んでもらえる内科医になれ」という教えです。言葉の真意を理解していないと、ドキリとする言葉ですが、これは私が研修医だった時に、担当医師の内科の先生から言われた言葉です。当時は、その意味がよく理解できませんでしたが、今ならよくわかります。私たち医師は、患者さんに元気になってもらうことが仕事ですが、病院で亡くなられる患者さんも多くいるのが現実です。人は必ず亡くなるわけですから、ある意味、仕方のないことです。担当医師の先生は、「この先生に診てもらえて良かったと、患者さんとその家族に思ってもらえる医師になれ」と伝えていたのだと思います。この言葉は今も私の心に生きています。
健康のために実践していること、お休みの日の過ごし方について教えてください。
「ながら筋力トレーニング」を習慣にしています。歯磨きをしながら片足で立ち、バランスを取りながら足の上げ下げを繰り返して、体幹を鍛える運動です。最初は40回からスタートして、今では200回くらいできるようになりました。長い時間できるようになった分、歯もきれいになってきました。また休診日には、知人に誘われればゴルフに行ったりしますし、朝・晩の2回は犬の散歩に行っています。1回の散歩で3キロくらい歩いています。
今後の展望についてもお伺いします。
当院の展望というよりも、今後の地域医療についていつも考えています。高齢者人口はますます増えていきますので、在宅医療と介護の連携は大事なのですが、在宅医療を必要とする患者さんを減らせるように対策を取っていかなければ、ヘルパーさんが足りなくなるのは目に見えています。これからは健康な体を維持するための、予防医学の浸透が重要になるでしょう。それはライフスタイルを変えていくことにつながっていきます。できるだけ高齢者に外出してもらえるような対策として、モーニングサービスを提供する喫茶店マップの制作などを、医師会から福島区の行政に提案してみたいですね。モーニングを食べに出かけたいと思うことが、高齢者の運動のきっかけになり、喫茶店をコミュニティーにしていろんな話ができたら、認知症も減らしていけるかもしれません。
最後に、読者にメッセージをお願いします。

下町風情が残るこのエリアにも、新しい住民の方が増えてきました。ぜひ皆さんには、地元のコミュニティーの中にどんどん入ってきてほしいですね。働いている方が定年を迎えると、地元とつながりがないことから、外出が減り、筋肉量が落ちて、身体機能を低下させていくサルコペニアになりやすいのです。それは将来的に、要介護状態にも発展しやすくなります。医療に携わる立場から、未来の健康的な自分をつくるためにも、地元のコミュニティーにつながっていくことをお勧めしたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とは任意予防接種:インフルエンザ予防注射 3000円

