千原 悦夫 理事長、千原 智之 院長の独自取材記事
千原眼科医院
(宇治市/伊勢田駅)
最終更新日:2025/02/14

近鉄京都線伊勢田駅の西出口からすぐ、「千原眼科医院」は白とブルーのモダンな外観が目印だ。4階建ての院内に手術室や入院施設を備える同院で、難症例の白内障や緑内障、さらに硝子体疾患でも手術を軸に専門性の高い眼科診療を提供する。千原悦夫理事長は元京都大学医学部助教授という経歴を持ち、現在も日々の執刀のみならず論文執筆などに携わり、同院の診療水準を高めてきた。さらに2023年からは、息子の千原智之先生が院長として大学病院から同院へ戻り、外来や手術、医院運営にも取り組む。「ここへ来たからには治って帰ってもらいたい」という思いを共有しつつ、「患者さんの利便性もより高めていければ」と智之先生。取材では、同院の歩みや現在の診療内容、2人が思い描く病院のこれからについてもじっくりと聞いた。
(取材日2024年5月22日)
白内障手術に加え、難治性緑内障・硝子体手術に対応
最初に、ご開業を決意した当時の思いをお聞かせください。

【悦夫理事長】私は京都大学医学部に長く勤めて、最初は学者をめざしていましたが、いろんな患者さんに接するにつれて臨床に惹かれるようになりました。ところが大学では研究発表、会議や医局の行事などが多く、患者さんの対応に時間を取ることが難しかったのです。開業すれば、その時間が取れると考えたのが一つの理由です。また、大学でもう一つ感じた問題点は病診連携の限界です。患者さんがお住まいの場所と病院が離れていると良い連携が取りにくく、かえって患者さんと医師の関係を分断してしまうことにもなりかねません。地域密着で、なるべく高度な医療を提供できる中間的な医療機関が必要ではないかと考えたことも開業の動機になりました。また大学病院では行いにくい近視矯正手術がやりやすいことも開業のメリットと考えました。
現在は圧倒的な規模で、地域から親しまれる眼科クリニックですね。
【悦夫理事長】1993年に開業し、現在の場所に移転したのが2001年です。4フロアにさまざまな設備を備えており、白内障・緑内障・網膜硝子体の診療・検査・手術やレーシック手術など、大抵の眼科医療はここで完結できる体制になりました。現在は非常勤を含めて11人のドクターが四診制で診療を行い、スタッフは総勢で60人以上の大所帯となりました。2023年1月~2023年12月に行われた白内障手術は1000件を超え、他に緑内障が110件、網膜剥離、黄斑円孔などの硝子体手術も120件行われました。2023年1月〜2023年12月に行った手術は1385件を数えます。特に緑内障は、緑内障インプラント挿入術をはじめ、さまざまな緑内障の手術が行われています。今も他院からの紹介で難症例の患者さんがよく来られます。また院内に入院施設があるので、高齢の方にも、安心して手術を受けていただけると思います。
緑内障治療用インプラント挿入術とは、どのような手術ですか?

【悦夫理事長】緑内障は、日本における失明原因の第1位で、目の内圧(眼圧)を下げるよう図ることが治療になります。眼圧を下げるためには点眼、内服薬、レーザーと手術があり、緑内障インプラント手術は非常に細いチューブを目の中に差し込んで眼圧を下げるための手術法です。私は1987年からこの手術方法の改善に取り組んできました。初期の頃にはインプラントの脱出や炎症、眼圧の下がりすぎなどのトラブルがあり、その解決が京大時代の私の主要なテーマの一つでした。しかし、その後これらは解決につながり、厚労省と折衝し、遂に2012年には保険診療として認められ、多くの患者さんに提供できるようになりました。
父子で患者に寄り添う質の高い医療をめざす
息子の智之先生も、院長としてこちらで本格的に診療を行っているそうですね。

【智之院長】以前は関西医科大学の眼科で勤務しながら、当院でも週2回ほど、非常勤で診療や手術を行っていました。2023年の10月からはこちらへ完全に移り、診療とともに運営にも本腰を入れています。
【悦夫理事長】息子は大学で臨床や研究を重ね、実績も積みましたので、もう引き継いでも大丈夫です。硝子体疾患を中心に手術でも専門性の高い技術を発揮してくれます。ですので現在は、彼が手術の7割ほどを、そして私が緑内障手術を中心に2割ほどを担当し、その他は院内のドクターや京都大学から非常勤で来てくれている先生にお願いしています。
智之先生が眼科の医師を志したのは、やはりお父さまの影響ですか?
【智之院長】確かに父が開業していたことは大きく、いずれは自分が受け継ぐ可能性も意識はしていました。一方で、初期研修を終えて専門を選ぶ際には、消化器の分野にも関心があってかなり悩みましたが、まずは眼科で頑張ってみて、性に合わなければまた考えようと。でも実際に仕事を始めてみると、眼科の診療が楽しかったんです。例えば、治療後の早い段階で患者さんに喜んでもらいやすい分野であること。患者さんに喜んでもらえるのは、やはりうれしいものです。また、初診でお会いした患者さんに対して、点眼での治療から手術まで私自身で治療を完結できる点も、眼科ならではのやりがいだと感じています。
では、理事長先生が診療において大事にされてきたことは?

【悦夫理事長】「当院へ来てもらった患者さんには、治って帰ってもらえるように、大学にも負けない一流の医療を提供する」ということを心がけています。開業から現在まで、毎年1本は英語論文を発表していますし、勉強会にも毎年参加して国内外の先進の動向を常に把握し、こちらでの診療にも反映しています。ただ医療とは残酷なもので、1000人に1人ぐらいは手術をしても思うような結果を得られない方は必ず出てきます。また、私自身が幼い頃に中耳炎から難聴を患い、手術の怖さや、耳が聞こえづらいことのつらさを実感してきました。視力障害はもっとつらいと思いますので何とかそれを防ぎたいと思っています。また、治療がうまくいったときもそうでないときも、患者さんの気持ちに寄り添う姿勢や言葉を大切にして信頼してもらえる関係を育み、治療の成果につなげようと心がけています。
クリニックとしての利便性も高め、次の時代へ
智之先生が、新たに取り組んでいきたいことはありますか。

【智之院長】父が築いた当院の医療水準や地域からの信頼、これをまずは維持していくことです。さらに、クリニックの仕組みや利便性も、時代のニーズに合わせて高めていきたいですね。2025年に電子カルテを導入しました。また当院はスタッフ数が非常に多く、父はそれぞれの自主性を尊重していました。ただ私はスタッフとの関わりを増やすことも大切だと考え、すべてのスタッフと面談をして意見を聞く試みを始めました。さらに、2020年3月には伊勢田から4駅南にある富野荘駅の駅前に、分院を開院ました。当院の治療では漏れてしまう日常的な目の不調や子どもの患者さんが気軽に受診できるよう、連携して治療を行っています。
お互いに医師として尊敬している点をお聞かせください。
【智之院長】普通は開業すると、医院の経営や日々の診療にかかりきりになりがちですが、父は学問的な探求にも取り組み続けてきました。これは素晴らしく、またまねのできないことでもあります。大学の先生方と対等に意見交換ができるクリニックというのは、さほど多くはないでしょう。その一方で、必要であれば私の意見にもフラットに耳を傾けてくれる、そういう父の姿勢もありがたいと思っています。
【悦夫理事長】手術の腕も信頼できますし、仕事にもこちらが体調を心配するぐらい熱心に取り組んでくれています。また私と違って話が上手ですので、患者さんやスタッフとも良い関係を築いてくれていますね。
最後に、患者さんや地域の方へのメッセージをお願いします。

【智之院長】患者さんには専門用語を使わずわかりやすく説明したいと心がけています。診療では、よくしゃべるほうなので、待ち時間との兼ね合いは配慮しながら、わかりやすい説明で安心して治療を受けていただきたいですね。
【悦夫理事長】宇治、城陽、伏見、近鉄京都線沿線の患者さんを中心に、地域に密着した医療を提供しています。緑内障の手術では北海道から九州まで全国からも患者さんが来られており、東京の方も多いです。そういった患者さんの期待や信頼に応えて、より良い医療を提供できるように、引き続き頑張っていきます。目に関するお悩みがあれば、どうぞ気兼ねなくご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とはレーシック手術(片眼)/16万円~