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丸井 規博 院長の独自取材記事

まるいクリニック

(京都市中京区/烏丸御池駅)

最終更新日:2021/10/12

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京都の市中、学生や家族連れでにぎわう四条通室町を北に上がってすぐの所に「まるいクリニック」がある。1998年に四条通沿いにて開院、2003年に現在の場所に移転した。「日の当たらない精神科のイメージを払拭し、患者さんも私も堂々と京都の町中を歩きたい」そんな思いを胸に診療にあたるのは、院長の丸井規博先生。開院前は京都大学医学部神経精神科の病棟医長を務め、同医局のモットーである非入院治療をクリニックでめざしている。診療のほか、デイケアや患者の就労支援、訪問看護を行う「多機能型」クリニックでは、丸井院長をはじめ大勢の専門スタッフたちが日々患者の心のケアに取り組んでいる。穏やかに語る丸井院長の熱い胸の内を聞いた。

(取材日2020年3月17日)

精神科のマイナスイメージを払拭すべく京都市中に開院

こちらは、京都で一番にぎやかな場所ですね。

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はい。皆さんはご存じないかもしれませんが、精神科の病院というのは、たいがい郊外の不便な場所にあるものです。町から遠く離れた、古びた暗い精神科病棟……、当然精神科医師も外科や内科とは対極のイメージの「変わり者」という目で医師仲間から見られていました。私にはそういった精神科のイメージへの強い反感がありました。「精神科の患者さんと、こんな京都の町のど真ん中を歩くということは素晴らしいことじゃないか!」と思ったんです。今から思えば若気の至りですね(笑)。もともとは法学部に在籍していましたが、医学部に入り直し、卒業に際して精神科を選んだのは文系に最も近い領域だと思ったからでしょう。京都大学医学部神経精神科助手・病棟医長を経て、1998年夏この近くの四条通沿いに開院、2003年にこの場所に移転しました。

5階建てのビル全体がクリニックなんですね。どのような患者さんが来られるのですか?

うつ病系の患者さんが全体の約40%、統合失調症と発達障害、神経症がそれぞれ約20%です。3歳から100歳まで幅広い年齢層の患者さんがいらっしゃいますが、お子さんの場合は児童精神科の医師が診療を担当します。治療は薬物療法と心理士によるカウンセリングなどの精神療法が中心ですが、良い人間関係を築くためのコミュニケーションの練習を望む患者さんにはデイケア、就労をめざす患者さんには就労移行支援事業所を用意しています。クリニックには医師だけで10人以上、看護師や精神保健福祉士、心理士、作業療法士や事務スタッフを合わせると50人を超えるスタッフが在籍しています。毎朝行う全員参加のミーティングでは、容態の重い患者さんについてなど全員が知っておかなければならない情報を共有します。

診療時に心がけておられることは?

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クリニックの理念の一つである「一人ひとりの患者さんのことを丁寧に考える」ことを常に念頭に置いています。「ここに来てこんなふうに気持ちが良くなった」と患者さんに感じていただけるように、良い思いを抱いて帰っていただけるように、日々患者さんに向き合っています。精神科医療では患者さんとお付き合いする期間が長く、20年以上にわたって診療している方も少なくありません。そうなるともう、その方の人生を診ているようなものです。高校生の頃から診療している患者さんが成人して結婚し、子どもが生まれて家族旅行に行く……、そんな幸せな写真を持ってきてくださるんです。本当にうれしいものですよ。

「多機能型クリニック」で初診から就労サポートまで

こちらが「多機能型クリニック」と呼ばれる理由は?

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一般的に精神科のクリニックといえば、医師と少数のスタッフで外来診療を行う単機能型で横との連携を取るスタイルです。それに比べて当院は、患者さんが社会復帰するために必要なことすべてがクリニック内で完結します。診療、デイ・ナイトケア、それに就労移行支援。初診から就労まで、そして通院困難な在宅の精神疾患の方も訪問看護でカバーしています。だから多機能型と呼ばれます。「いかにして患者さんの入院を防ぐか」を考えた結果、このようなかたちになりました。「非入院治療」は私が在籍していた京都大学医学部精神科医局のモットーでもあります。望まない入院というのは患者さんにとっては非常にショックな状況ですから。海外、例えばイタリアでは精神科医療の入院制度は廃止されました。この日本でどこまでできるか挑戦してみたいという気持ちがあります。

デイ・ナイトケアではどのようなプログラムが受けられるのですか?

3階と4階の2フロアで専門スタッフがデイケア、ナイトケアのプログラムを提供しています。人付き合いがうまくできず家に引きこもりがちな方や生活リズムを整えたい方へのリハビリテーションとして、デイケアではバレーボール、卓球などのスポーツのほか、疾患教室、音楽、SST、コミュニケーションクラブといったプログラムを用意しています。創作スペースでは編み物などの手芸や革細工、塗り絵や折り紙に取り組むことができます。ナイトケアでは夕食の買い出しから調理、食事をします。ナイトケアに来られるのは職場や作業所帰りの方がほとんどですので、そこは彼らの和みの場であり、職場の情報交換の場でもあります。広々としたゆとりのある空間で、自分に合ったプログラムが体験できます。また、読書など一人で集中したい時には個別スペースの利用が可能です。

就労移行支援にも取り組んでおられますね。

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一般企業での就労を望んでいる、職場の人間関係が苦手な方や働く自信が持てず悩んでいる方をサポートするのが就労移行支援事業所です。体力づくりやコミュニケーションの練習など所内訓練を行った後に企業実習を行います。ハローワークや地域障害者職業センターなどと連携しながら患者さんの就職をめざし、就職後は定着支援として患者さんをフォローします。ここに通われる患者さんは「就労」というゴールが近いためか、皆さん顔つきもなんだかキリッとされていますよ。就労移行支援の専門スタッフは8人全員が精神保健福祉士の国家資格を有しています。

患者の高齢化に伴う課題に向き合う

クリニックの課題についてはいかがでしょうか?

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患者さんの住む場所について考えなければならない時期にきたと思っています。これまで診てきた患者さんの親御さんが認知症を患ったり、患者さん自身が認知症を患ったりと、高齢化でさまざまな問題が出てきています。私は関西を離れることがなかったので研修医の頃からずっと同じ患者さんに関わっており、その患者さんが私と一緒に年を重ねていくわけです。そんな方々の居住施設を何とかしなければ、という思いがあります。また、患者さんのご家族のサポートについてですが、患者さんと高齢になった親御さんがご自宅で孤立するパターンが増えています。来院できる方には月に一度の家族教室へ参加いただいていますが、来院が困難なご家族の方には訪問看護で個別にサポートしています。

院長ご自身のストレス解消法を教えてください。

患者さんには「1日に30分楽しいことをしましょう」と言っています。私の場合は10年前から始めたバンド活動です。もともとクリニックに自転車部というのがあって、私はそこに入れてもらったんですが、電動自転車だったので運動にならないんですよね。貴船神社や滋賀の近江八幡まで行ったりしましたが、周りはヘトヘトでも私は全然疲れない。電動なのでね。それで、自転車部をやめてバンドをしよう! ということに。私のパートはリードギターでリードボーカル。私よりギターがうまい人は加入を認めません(笑)。ここで思い切りシャウトし、のけぞってギターを弾くんです。去年は祇園でライブをして100人以上のお客さんが集まりました。ほとんどが義理で来てくれたうちの患者さんでしたが(笑)。

最後に、引きこもりのサポートについて教えてください。

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当院で「パーソナルリカバリーサポートチーム」と呼んでいます。私は以前「京都市こころの健康増進センター」という施設で引きこもりの方々の支援をしていたんです。そういうベースがあったので、当院の若いスタッフが「クリニックでもサポートチームをつくりたい!」と言い出したのをきっかけに去年からスタートしました。自宅に引きこもりがちな方またはそのご家族ならどなたでも相談していただけます。このように、当院では一人ひとりの患者さんに合った診療や支援ができるよう、医師とそれぞれの専門スタッフが努力しています。今後も初診から就労まで患者さんの人生に寄り添った医療をめざしたいと思っています。

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