福喜多 晃平 院長の独自取材記事
福喜多耳鼻咽喉科
(名張市/名張駅)
最終更新日:2026/10/15
「甲状腺の症状は自覚しづらいので、早期発見のためにも病気を広く知ってもらいたい」と話すのは、「福喜多耳鼻咽喉科」の福喜多晃平院長。バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患にも精通する、日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医だ。前職の伊勢赤十字病院では、乳幼児から高齢者まで幅広い耳鼻咽喉科疾患の診療や手術に携わってきた。1986年に父が開院した同院を2018年に継承し、現在は耳鼻咽喉科診療に加えて甲状腺疾患の診療にも力を入れている。院内にはCTや甲状腺検査機器を備え、細胞診まで行える体制を整備。「ここで診られることはここで完結させたい」と、地域に根差した医療をめざしている。今回は、甲状腺疾患の治療や地域医療への思いについて、福喜多院長に詳しく話を聞いた。
(取材日2026年10月6日)
疲れや体重変化もサイン。気づきにくい甲状腺疾患とは
甲状腺の診療に注力されるようになった経緯をお聞かせください。

私は、東京医科大学卒業後、初期研修を経て、伊勢赤十字病院に10年以上勤務してまいりました。甲状腺治療に注力するきっかけとなったのは、同院で甲状腺治療を専門とする山田浩之先生に出会ったことです。山田先生のもとでさまざまな症例を経験し、甲状腺の専門病院にも見学に伺い、知識や技術を深めました。また、伊勢赤十字病院では、甲状腺をはじめ、鼻・耳の手術から頭頸部腫瘍まで幅広い耳鼻咽喉科疾患の治療に携わり、多くの手術を執刀してきました。こうした経験を生かし、地域の皆さまのお役に立ちたいと考えています。
甲状腺疾患にはどのようなものがありますか?
大きく分けると、「機能性の疾患」と「腫瘍性の疾患」の2つがあります。甲状腺ホルモンは「元気を出すためのホルモン」で、全身の代謝をコントロールしているため、ホルモンの状態によってさまざまな症状が現れます。機能亢進ではバセドウ病が代表的で、汗をかきやすい、食べているのに体重が減る、動悸や手の震え、イライラ、疲れやすいなどの症状がみられます。一方、機能低下では橋本病が代表的で、代謝が落ちて水分が体にたまりやすくなるため、むくみ、体重増加、だるさ、寒がり、皮膚の乾燥、便秘などの症状がみられます。もう一つの腫瘍性の疾患、つまりしこりやこぶは、基本的に初期の段階では自覚症状がほとんどありません。
どのようなきっかけで甲状腺の外来を受診される方が多いですか?

甲状腺の病気は「疲れ」「だるさ」「体重変化」など日常的な不調と区別しにくく、ご自身で気づくのは難しいのが現実です。そのため、受診のきっかけとしては、他の医療機関からの紹介が圧倒的に多いですね。健康診断のほか、内科・循環器内科で不整脈や原因不明の体調不良から甲状腺の関与が疑われたり、不妊症の治療で甲状腺機能の低下が見つかったりするケースも少なくありません。私の経験値として、バセドウ病は20代から40代の女性に、橋本病は40代から高齢の方まで幅広くみられています。
甲状腺疾患を放置すると、どのようなリスクがありますか?
甲状腺ホルモンは全身の臓器や代謝に関わっているため、放置するとさまざまな健康リスクにつながります。機能亢進を放置すると、心臓に負担がかかり続け、心房細動などの不整脈や心不全を引き起こすことがあります。一方、機能低下ではコレステロール値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高まります。また、甲状腺機能の乱れは不妊や流産、早産などにつながることもあります。さらに、感染症や強いストレスをきっかけに急激に重症化し、意識障害や呼吸不全など、命に関わる状態に陥ることもあります。腫瘍の場合は、悪性であれば進行して周囲の臓器やリンパ節に広がる可能性があります。「ただのだるさや体質の違い」と思わず、早期に見つけて適切な治療を受けることが重要です。
充実した体制で、地域で完結できる甲状腺診療を
甲状腺疾患の診察はどのように進めていくのですか。

まずはエコー検査と採血を行います。エコーで甲状腺の形態や腫瘍の有無を確認し、採血結果と合わせて診断します。当院では、約20分で結果が出る甲状腺の採血検査機器を導入しています。地域のクリニックでこの検査機器を備えているところは少ないのではないでしょうか。「一刻も早く結果を知りたい」という不安を、その日のうちに解消するのに役立つと感じています。腫瘍が見つかり悪性が疑われる場合は、細い針で細胞を採取する「細胞診」を行います。土曜日を甲状腺専門の外来・細胞診専用の検査日とし、結果も1〜2週間以内にお伝えします。「手術が必要」と判明した場合は、連携する大学病院や伊勢赤十字病院などへスムーズにご紹介します。
診断後の治療や経過観察について教えてください。
疾患によって異なりますが、バセドウ病など機能亢進症の場合は、まず内服治療から始めます。薬の種類は2種類ほどと少ないですが、白血球異常や肝障害といった副作用が出る恐れがあるため、治療開始から最初の2ヵ月間は2週間おきの定期的な採血検査が必須となります。数値が安定すれば、2〜3ヵ月に1回の通院で済むようになります。薬で効果が見込めない場合や抵抗性がある場合は、手術やアイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)ができる医療機関をご紹介します。また、機能低下症の橋本病などの場合は、無症状で経過観察のみでよい方も多いですが、良性のしこりができやすかったり、いずれ機能低下が進んだりするため、状態に合わせて甲状腺ホルモン剤を補充するための内服治療を行います。経過観察は、半年〜1年に1回程度のエコー検査と採血で対応可能です。なお、細胞診でグレーな結果が出た場合などは、3〜6ヵ月のペースで経過観察を行います。
設備を充実させた背景を教えてください。

当院がある名張には、甲状腺を専門的に診療したり、細胞診を行ったりできる地域のクリニックがほとんどなく、以前は小さなしこりでも遠方の大学病院や総合病院まで1時間以上かけて通うケースがありました。特に高齢の患者さんにとって、遠方への通院は大きな負担です。「自分が培ってきた知識と技術があれば、地域の中で完結できる医療を提供できるのでは」と考え、2018年の院長就任時に増築し、迅速な採血・エコー検査から細胞診まで院内で行える体制を整えました。甲状腺疾患の治療のほかにも、発熱専用の外来や各種アレルギー検査、感染症を検査できるPCR検査機器のほか、CTも導入しています。CTは副鼻腔炎や顔面骨折、顎下腺唾石症などの診断に役立てています。
地域に根差した「何でも診る」頼れる存在でありたい
診療の際に心がけていることを教えてください。

患者さんがどのような悩みを抱えて来院されたのか、そのお気持ちや不安をしっかりくみ取ることを第一に考えています。また、当院の大きな特徴として、「聴診器で胸の音までしっかり聴き、全身を診る」という姿勢を徹底しています。もしかしたら耳鼻咽喉科で胸の音まで聴くクリニックは珍しいかもしれませんが、アレルギー症状の陰に喘息が隠れていたり、心臓の疾患が見つかったりすることもあります。どうしても診察に時間がかかり、ときには待ち時間が長くなってしまうこともあって申し訳ないなという気持ちもあるのですが、見逃しのない質の高い医療を提供するためのこだわりです。
地域医療に入られて8年目ですが、感じることは?
やはり、患者さんとの距離が非常に近いのが魅力であり、何より楽しいですね。当院には、0歳の赤ちゃんの耳掃除から、99歳の高齢の方の難聴まで、本当に幅広い患者さんが来院され、甲状腺の診療だけでなく耳鼻咽喉科疾患なら何でも幅広く診ています。治療によって患者さんが目の前でどんどん良くなっていく姿が見れたり、笑顔で「先生の顔を見たらうれしくなったわ」と言っていただけたりしたら、医師として最高のやりがいですね。
最後に地域の方へメッセージをお願いします。

当院は、赤ちゃんから高齢の方まで、患者さんのどんなお悩みにも対応できる「何でも診る頼れるクリニック」でありたいと考えています。アレルギーの舌下免疫療法は5歳以上から対応しており、多くの患者さんに受けていただけます。ほかにも、睡眠時無呼吸症候群の治療や補聴器のご相談など、幅広く対応しています。甲状腺疾患をはじめ、体のちょっとした不調や違和感、どこに相談していいかわからない症状、おなかの調子が悪いといったことでも構いません。どんなことでもお気軽にご相談ください。不安を抱える患者さんをできる限り笑顔にできるよう、これからも尽力できればと思います。

