廣田 敦也 副院長の独自取材記事
坂井橋クリニック
(桑名市/星川駅)
最終更新日:2025/06/12

桑名市西部、員弁川にかかる坂井橋近くに「坂井橋クリニック」は立つ。明治時代に、廣田敦也副院長の曽祖父が開業した歴史あるクリニックで、祖父、父の廣田久佳院長と引き継がれてきた。廣田敦也副院長はもともと循環器内科が専門で、複数の基幹病院での勤務を経て2022年に着任。自身が学んだ三重大学が専門に限らず幅広く診療できる医師の育成に注力していたことからその経験を生かし、内科一般はもちろんけがや皮膚、目、耳などに関する悩みも受け入れている。「病気の早期発見のためにも敷居の低い、気軽に来られるクリニックでありたい」と話す廣田敦也副院長。代々続く地域医療のバトンを引き継ぎ、これからも地域の信頼に応えていく。
(取材日2025年5月30日)
専門の糖尿病と循環器疾患を軸に幅広く診療
こちらは歴史あるクリニックだそうですね。

当院は、私の曽祖父が明治時代の後期、1909年に開業しました。祖父が後を継ぎ、現在は院長である父と私が診療にあたっています。患者さんは、お子さんからご高齢の方まで幅広く、中には祖父の時代より60年ほど通ってくださっている方や、親子で来てくださる方もいて、ありがたく感じています。当院では風邪や生活習慣病などの一般内科に加え、小児科、一般外科にも対応しており、「目がかゆい」「けがをした」「肩や腰が痛い」など患者さんのさまざまな訴えに応じて点鼻薬や目薬の処方、けがの縫合、整形外科的な診療もしています。もちろん、高度な治療が必要と判断した時は専門のクリニックや病院におつなぎします。基幹病院には病院勤務時代からの顔見知りの先生も多く、信頼できる先生をご紹介できます。
着任されて3年、振り返っていかがですか?
私は循環器内科が専門で、病院では重篤な心疾患に対応していました。心臓が止まった状態で救急搬送された患者さんにカテーテル治療を行うことも多く、夜中に呼ばれても15分で病院に着けるように準備していました。一方、当院に来てからは、かかりつけ医として、患者さんのいろいろな訴えに対し幅広い知識やスキルを求められるようになりました。そうしたことに対応できているのは、私が学んだ三重大学医学部の教育方針によるところも大きいですね。三重県の医師数は全国的平均と比べて少なく医師不足が深刻で、三重大学医学部では医師一人で幅広い症例が診療できるような教育方針が取られているのです。開業医となった今、その学びが役に立っていると感じています。
先生が医師をめざされたのはお父さまの影響でしょうか?

はい。明治時代から続く医師の家系ということもあり、迷いはありませんでした。父はどちらかというと無口なタイプですが、患者さんには親身に接していて、感謝されている姿を見てとても誇らしく感じました。医学部へ進み、循環器内科を専門に選んだのは、人の命に直結する診療科だからです。責任は重大ですがやりがいも大きいと考えました。複数の病院に勤務して10年ほどたった頃、生まれ育った地域に貢献したいという気持ちが膨らみ、2022年当院に着任しました。
「人を診ること」「対話すること」を大切に
クリニックの強みについて教えてください。

お話ししたように、内科を中心に幅広く診療できることがまず一つですね。もう一つは、父が日本糖尿病学会糖尿病専門医、私が日本循環器学会循環器専門医で、2つの分野の専門家がいて連携できるということです。高齢になるにつれ、いろいろな病気になり合併症が起こりやすくなりますが、専門的かつ幅広い診療ができるということで、地域の方々のお役に立てるのではないかと思います。診療においては「他に気になることはありますか?」と尋ねるようにしており、そうすると「実は〇〇も痛い」などと打ち明けてくださる方も。複数の悩みを抱えておられることが少なくないので、一つでも多く対応して差し上げたいです。診療中は世間話などをして患者さんがいつでも話しかけやすいように心がけています。
他にも心がけておられることはありますか?
一番は、「病気だけでなく人を診る」ということです。主訴だけでなく全身の状態や患者さんの不安な気持ち、生活背景なども含めて診療にあたるということですね。これは当院の初代から伝えられてきた伝統的なことであり、大学でも最初の頃に教えられたことでもありました。ただ、今思えば、病院時代は命に関わる重症な方が多かったこともあり、どうしても病気のみに目がいきがちでした。開業医となり、患者さんとの距離が近くなって、「人を診る」ことの大切さを改めて痛感しています。最近では認知症のご相談も増えました。その場合はご家族との対話や行政との連携も重要になってきます。医療において治療が大事なのはもちろんですが、患者さんにわかりやすく説明して理解、納得していただくことも大事。「人を診ること」「対話をすること」を大切にしています。
スタッフの方々についても教えてください。

スタッフは、10年20年と勤務してくれているベテランが多く、とても頼りになります。私が生まれた時から知っているというスタッフもいますね(笑)。患者さんとのお付き合いも長いので、お人柄や家族構成、生活状況などの情報を教えてもらって診療に生かすことができています。4代目として、父のように、ともに協力して患者さんを中心にしたより良いクリニックにしていきたいと思います。ただ、患者さんを中心にしすぎてスタッフの働く状況が悪くなってはいけません。患者さんもスタッフも、クリニックも100点満点という状況は難しいと思うのですが、全体の平均点が上がるように、互いに理解し合い、一緒に成長していきたいですね。
気軽にふらりと立ち寄れるクリニックに
こちらは設備も整っていますね。

はい、エックス線撮影機器や超音波検査機器、糖尿病や循環器疾患に関わる検査機器のほか、CTも備えており、一連の検査ができる設備が整っています。また、院内のDX化により業務の効率化を進めています。電子カルテというと医師がパソコンを見てばかりで患者さんを見ないという批判がありますが、私は逆だと思っており、医師の業務が軽減されるのでその分、患者さんとの対話に時間が取れると思うのです。また、DX化はスタッフ業務の効率化にもつながります。受付、会計における業務が減れば、スタッフも患者さんの顔を見て話しかけたりする時間ができるでしょう。DX化はひいては患者さんの満足度向上が期待できると思います。時代に合わせて、患者さんのためになる設備やツールは取り入れていきたいですね。
読者へのメッセージをいただきたいです。
病気は早期発見・早期治療が重要です。病院時代はもっと早く治療を始めていれば、と残念に思うことも多かったので、少しでも体の異変を感じたらすぐに受診を、と切に思います。しかし実際には悩みを抱えたまま受診をためらっている方も少なくないでしょう。そのため当院は、いつでも気軽にかかれる、ハードルの低いクリニックでありたいと思います。電話でもいいし、どこかで出かけたついででもいいので、ふらりと立ち寄っていただければ。患者さんによく話すのは、私も医療以外は素人だということです。普通の一般人であり、家電製品を買うときはお店で店員さんにいろいろ教えてもらいます。知らないことはその道の専門家に聞くのが一番。ホームページやSNSで情報発信をしているのも少しでも患者さんに身近に感じていただけたらという思いからです。SNSでは休日に家族で遊びに出かけたことなども発信しています。
今後の展望についてお考えをお聞かせください。

病院勤務時代、このまま専門の道を進むか、クリニックの後を継ぐかで迷った結果、生まれ育った桑名市に恩返しをしたいという気持ちで、ここに戻ることを決めました。戻った時に「これで坂井橋クリニックは安泰だね」と患者さんに言っていただいたことがうれしく、心に残っています。4代続いている当院への信頼と期待のお言葉をいただけたと受け止めています。本当に曽祖父や祖父、父のおかげだと思うのですが、たくさんの患者さんから頼りにされて信頼されていることを身をもって感じています。たまに患者さんから、員弁川で釣れたアユや山で採れたタケノコをいただくこともあるんですよ。自分自身も今後、しっかりと地域に根づき、実績と信頼を積み重ねて、先代たちがしてきたように皆さんの健康のために力を尽くしたいと思っています。