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伊藤 志門 院長の独自取材記事

アガペクリニック

(日進市/日進駅)

最終更新日:2019/08/28

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地下鉄鶴舞線の日進駅から徒歩8分。「アガペクリニック」は、外来診療は当然ながら在宅医療にも注力する有床クリニックだ。1階に診察室や各種検査室、2階が手術室と病棟、3階にはリハビリテーション室もある。1992年の開業だが院内は清潔で、待合室は広く車いすも通れる幅がありゆったりとしている。院長の伊藤志門先生は、2015年に父からクリニックを引き継いだ。趣のある院内には患者から贈られた風景画や、院長の祖母が60歳から始めたという油絵が飾られている。在宅診療を行う関係上、クリニックにはケアマネジャーなど医療関係者がよく出入りしているが、院長やスタッフとのやりとりから日頃の良好な関係がうかがえた。すべての人が避けて通れない終末医療や看取りについて伊藤院長の思いを聞いた。
(取材日2017年4月12日)

クリスチャンの医師として患者と地域に奉仕する

まずは先生の簡単な経歴とクリニックの紹介をお願いします。

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1996年に岐阜大学医学部を卒業し、大学病院や愛知県がんセンターなどを経て、2015年に先代院長である父から院長の職を引き継ぎました。僕も父もクリスチャンで、アガペクリニックという名前は、ギリシャ語で神の愛を意味する「アガペ」にちなんでいます。病気で身体や心が弱った患者さんたちに、聖書や神様に出会う機会を持ってほしいという願いもあって、父は院内で定期的に集会を行ったり、さまざまなイベントを行っていました。私も年に一度年末に、看取らせていただいた患者さんとそのご家族を招待して、弔いの想いを込めたピアノコンサートを行っています。ピアニストの方も、その方のお母さまを当院で看取らせていただいた方なんですよ。これからも私なりに、父が大切にしてきた理念をしっかりと引き継いでいきたいと思います。

医師になろうとしたきっかけは、やはりお父さまの影響ですか?

そうですね。生まれて最初に知った職業が「医師」ですから。子どもの頃の自分にとって、病院は正面玄関ではなく裏口から入るところでした(笑)。病院の裏とか地下とか、そんなところにばかり詳しい子どもでしたね。でも職業として医師を選んだ理由は、クリスチャンとして「神様のつくったもの」と向き合う仕事がしたいと思ったからです。法廷ドラマが好きで弁護士にも興味がありましたが、法律もやはり人間がつくった仕組みです。工業系も人間の知識の結晶でしょう。でも自然の営みには、人間業じゃないと思えるところがあります。それで選んだのが、医学の道でした。昔は医師として海外で働くことを夢見た時期もあります。世界中どこでも人間の体の仕組みは同じで、それも医学の面白いところですから。

院内にたくさんの絵が飾ってあるのが印象的ですね。

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はい。もともと父が好きで集めていたんです。他にも患者さんからいただいたものや、祖母の絵も。祖母は60歳から趣味で油絵を描き始めて個展も開いたんですよ。絵が好きなのは遺伝するらしく、僕も子どもの頃は漫画を描いていました。漫画家にも憧れましたが、自分にはストーリーをつくる才能がないことに気がついて諦めましたけどね(笑)。

患者に最後まで寄り添える医療機関をめざして

こちらでは緩和ケアや在宅医療に力を入れていますね。

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ご高齢の患者さんは先代の頃から多く、共に歳を重ねた患者さん方のために往診や在宅医療も行っていました。当時に比べると、在宅医療のための環境は格段に良くなっています。在宅専門の医師も増えてきました。でも僕としては、医療の過度な分業には違和感も感じています。例えば、健康診断センターで受診し、異常が見つかれば専門病院で再検査や手術、リハビリテーションのために転院、さらに紹介された病院で抗がん剤治療、最後はまた別の病院で看取られるというのは、今では当然の流れになりました。でも患者さんにしてみれば「私の主治医は誰?」ということにならないでしょうか。多くの患者さんはやはり、同じ先生に最初から最後まで診てもらいたいと感じておられる気がします。当院はそうした思いに、最後まで寄り添えるクリニックでありたいと思っているのです。

これまでの患者さんの中で印象に残るエピソードはありますか?

勤務医時代のことですが、在宅で亡くなったおばあちゃんの枕元で遊んでいた幼い孫たちが、「おばあちゃん、どこにいっちゃったの?」と親に尋ねた場面を見たことがあります。それに親御さんが「おばあちゃんはね、死んじゃったんだよ」ときちんとご説明されていて。小さな子どもたちにとって、老いや死を見ることは大事な教育の機会です。でも今は日本全体が、死と直面する機会が減り、死を直視しない社会になっていますよね。死は学校では教えられないし、施設や病院でも直接扱うことがありません。確かに自宅での看取りは大変で、お金も労力もかかります。それでも私は、もしそれが可能であれば、自宅での看取りを選択したほうがいいと思います。本来、患者さんやご家族のご希望に合わせて最後をどこで迎えるのかを選ぶ権利はありますが、実際には迷われることも多いので、私はその気持ちに寄り添うことを信条としています。

在宅医療の現場で大切にしていることは何ですか?

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ケアマネジャーさん、訪問看護ステーション、地域包括支援センターなどの行政、薬局などと深く関係していきますので、密に協力し合いながら動くことが大切です。実際の現場では訪問看護ステーションが主役になることが多く、当院は看護師さんたちが動きやすいようにサポートします。こうした中で、当院の特徴は病床を持っていることですね。入院中の末期患者さんやご家族が「最期のときは自宅で迎えたい」と願えば状態を見てお帰りいただけるように尽くしますし、逆にどうしてもここへ戻らなければならない場合もあります。ですが主治医は変わりませんのでご安心いただけます。経営面では苦労もなくはない有床診療所ですが、患者さんやご家族の要望に柔軟に応えられるので、そのメリットをご提供したくて維持しています。昨年当院では、時代を反映するように、約半数の方が在宅での看取りを選ばれました。

地元に根差したホームドクターとしての使命

日進市という地域の医療環境についてはどうお考えですか?

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日進市には市民病院がないんですが、100床ぐらいの病院が東西にありますし、近隣に救急病院や大学病院もあります。専門の得意分野を持つ診療所やクリニックは市内にたくさんあるので、担当医師としては患者さんにどんな医療機関でも紹介できる点が地域としてのメリットですね。ただ当院としては、急性期の治る病気や救急病院に運ぶ必要はない程度の患者さんについては、私どものところで治してもらうほうがいいと考えています。例えば高齢者の肺炎、腰痛や骨折など。一人暮らしの学生さんが胃腸炎や扁桃腺で使われることもありますよ。救急病院だと治療が終わればすぐ帰されてしまいますが、患者さんによっては帰っても食事の支度ができないなど、生活に支障が出る方もいます。そういう場合、当院で治療を行えは、体力が回復するまで入院して在宅支援につないでいくことも可能になります。

患者さんとの関係で何を大切にしていますか?

患者さん本人の意志を尊重することです。例えば喫煙治療ひとつ取っても、本人がタバコをやめたいと望むなら、医師として最大限のサポートをします。でも本人にその気がないのであれば、無理にやめなくてもいいと思うんです。たとえ医師であっても、その人の生き方や歴史、考え方は大切にすべきです。頭ごなしにやめろとは言えません。最終的に決めるのは患者さん自身。これは在宅医療など、他の問題についても同じことが言えます。医者は神様ではありません。私たち医師は、患者さんの望まれる思いにほんの少しお手伝いをさせていただくだけなんです。

先生の医療へのお考えを知れました。最後に今後の展望をうかがいます。

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子どもやお母さん世代の患者さん向けに、院内に子ども用のスペースを作りたいと思っているところです。小児科が専門ではないんですが、わが家には中学3年から2歳児まで子どもが7人いて、昔から子どもの病気はひと通り診てきました。今はご高齢の患者さんが多いですが、今後は若いお母さん方にも利用していただきたいと思っています。ご高齢の家族を持つ奥さま方もぜひいらしていただきたいですね。「うちのお婆ちゃんが」というご相談にも乗りますし、そこでアドバイスできるだけの情報は集めておきます。めざしているのは、お子さんからご老人まで一家全員を診られる"ホームドクター"です。

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