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水野 健雄 院長の独自取材記事

医療法人三健会 水野内科クリニック

(知立市/知立駅)

最終更新日:2021/10/12

水野健雄院長 医療法人三健会 水野内科クリニック main

内科、消化器内科、小児科などを標榜する「医療法人三健会 水野内科クリニック」。穏やかな印象の水野健雄院長は、薬学部を卒業後「医師になりたい」という思いが強くなり、医学部に入り直したという経歴の持ち主だ。単に薬を処方するだけではなく、治療への意識を高める診療を心がけている水野院長。地域の校医や産業医も務め、昼休みの間は往診や在宅診療も行い、さまざまな世代の健康を守っている。特に在宅診療は、高齢化社会の中で今後果たす役割は大きくなると語り、病院や介護施設など地域全体で患者を見ていく地域包括ケアへの協力にも力を注いでいる。在宅診療や往診、家での看取りも行い、その人らしく生きることを大切にした「心の通った診療」を行う水野院長に、診療方針や在宅診療についての考えを聞いた。

(取材日2017年5月2日)

生活習慣病は治療への「やる気」を引き出す診療を

医師になられたきっかけをお聞かせください。

水野健雄院長 医療法人三健会 水野内科クリニック1

中学生の頃に、4歳年上の従兄が医学部に入学したのを見て、自分も行ってみたいなと思ったのがきっかけですね。ただ、最初に入ったのは薬学部でした。いざ就職という時に教授から「お前は何がやりたいんだ」と聞かれたのですが、やはり医師になりたい気持ちもあって迷っていたんですね。その教授が医学部出身だったので思いきって相談したら「水野君、そんなに迷っているなら医者になりなさい」と背中を押してくれて、そこから関西医科大学に入りました。ですから6年分の回り道をしています。卒業後は5年ほど大学病院に勤務してから、京都や安城の病院で糖尿病・内分泌内科や腎臓内科を中心に診療を行い、1996年に開業しました。

薬剤師としての知識が診療に生かされているところはありますか?

それが、私はどちらかというとあまり薬は出さないんですよ。もちろん必要な薬は出しますが、最初からとにかく薬を飲めではなく、アドバイスを重視しています。たとえば、尿酸値が高いからお酒は控えましょうとまずは指導して、それでもダメなら薬出しますからね、というアプローチです。患者さんも私があまり薬を出さないことを知っているので、逆に「先生が出す薬だったら飲むよ」とおっしゃってくれます。薬って、好きで飲んでいる人は少ないですよね。ですから症状はもちろん、処方する薬に対しても十分に説明をして納得してもらうことは、内科の医師としての使命だと思っています。

糖尿病の患者さんが多いそうですが、治療へのモチベーションを高める工夫はされていますか?

水野健雄院長 医療法人三健会 水野内科クリニック2

糖尿病は、食事や運動などの生活習慣が大きく関係します。ですから薬さえ出していれば良いわけではなく、患者さんに指導をすることが大切です。しかし実際は、注意や指導をしても響く人ばかりではありませんので、どうやって患者さんに意識を変えてもらうか、そのための説得力が医師にも必要ですね。あまり脅かしても怒ってもいけないし、何も言わないのは患者さんのためになりません。中には「食べたいものを食べて、それで悪くなっても良いんだ」という方もいらっしゃいますが、それじゃダメだと言うだけでは患者さんは納得しないんです。納得してもらえるアプローチが必要なので、例えば「お孫さんが大きくなるのを見たいでしょう、それなら最低でもこれは我慢しましょうよ」など、わかりやすくアドバイスするようにしています。できるだけ相手が理解できる言い方で説明して、患者さんのやる気を引き出せる診療を心がけています。

これからは地域全体で患者を診る時代

生活習慣病が気になる方にアドバイスはありますか。

水野健雄院長 医療法人三健会 水野内科クリニック3

糖尿病や高血圧は自覚症状がなく、健康診断で気付くパターンが多いですから、早期発見のためにも健康診断は受けておいたほうが良いと思います。よく「自分は健康だ」と言う方がいますが、単に病院に通っていない、検査をしたことがないだけだったりしますので。特に自営業の方は健診の受診率が低く、病状が進行してから病院を受診するケースが多いようです。そうなる前に治療を始めれば、体はもちろん費用面の負担も少ないですから、早めに受診してほしいですね。もしも外来で糖尿病や高血圧が見つかっても、定期的に来ていただくことで必要な治療ができますから結果的に負担は軽くなると思いますよ。押しつける診療ではなく、臨機応変に、その方の生活に合わせて治療方針を決めていきますので、不安なことがあれば何でも相談してください。

地域包括ケアに関する活動もなさっているそうですね。

高齢の方が、住み慣れた地域で医療や介護、生活支援のサポートなどを受けられる地域包括ケアは、今後ますます必要性が高くなると思っています。急性期の病院から回復期の病院、介護施設、自宅での介護など、医療や介護に関わる業種の連携がとれて成り立つシステムです。私も今、在宅診療で15人ほどの患者さんを診させていただいています。ケアマネジャー、訪問看護ステーションや地域の薬局などとも連携を密にして、患者さんをトータルにケアできるように心がけています。要介護状態になられた患者さんが自宅や施設に移られたとしても、今までの病院と変わらない質の高い医療を受けられるために、さまざまな職種の方々と連携・協力をしています。

お忙しい中、在宅診療や往診にも行かれるんですか。

水野健雄院長 医療法人三健会 水野内科クリニック4

昼休みにほぼ毎日、在宅診療に行っています。そのほかに小学校の校医や企業の産業医もしているので、休みがなかなかとれないのですが、開業医ってそんなもんですよ。開業する前は「開業医になると午前と午後の間に昼寝できるから良いな」なんて思っていたんですが、実際は全然違いました(笑)。在宅診療を依頼されるケースはさまざまで、通っている病院では在宅診療をしていないからお願いしたい、という理由もありますし、胃ろうや経管栄養など医療的処置が必要な患者さんは特別養護老人ホームや老人保健施設には入所できない場合もあります。ですから、在宅診療は今後ますます重要になってくると思います。

命の大切さを常に感じながら患者と向き合う

これまでの経験の中で、印象深い出来事は?

水野健雄院長 医療法人三健会 水野内科クリニック5

日本の医療は進歩しているので、良くも悪くも「医者まかせ」の部分があります。「おまかせします」と言われると、医師はできることはやってあげたいと思うものですがそれが結果として、本人は意識がないのに人工呼吸器で命をつないでいる状態になったりもします。在宅診療の患者さんでそういう方がいて「なぜここまでして」と感じたことを覚えています。もちろん、医師としてはできることはすべきですが、そこで医師の立場と私個人としての葛藤がありました。それ以来、自分も含めて「人生をリタイアする時にどうしたいかを明確にしておいたほうが良い」と考えるようになりましたね。もちろんそれは、患者さんが決めることです。ただ、医師として、そういう局面にどう関わっていくかは常に考えています。在宅診療は消極的な医療だという意見もありますが、私は患者さん本人がどう生きていくかを一緒に考え、より良い過ごし方のお手伝いができればと思います。

在宅診療も行っているからこそ見えることがあるんですね。

そうですね。私は家での看取りもしています。これからは病院や施設だけではなく、家で看取る時代になっていくのかもしれません。昔は当たり前でしたが、今は家で亡くなる人は12%くらいといわれています。でも自宅で最期を迎えたい人は多いのではないでしょうか。今は、人間はいつか亡くなるという当たり前のことを感じにくい世の中になっていると思います。人間の死をきちんと見ていれば、命を大切にする意識は生まれます。家で亡くなるおじいちゃんやおばあちゃんを見ればお孫さんは悲しみますが、悲しむことでお孫さんには生を大切にする心が育つのではないかと思います。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

水野健雄院長 医療法人三健会 水野内科クリニック6

医師の前だと遠慮して聞きたいことも聞けないという方がいますが、自分が思ったことは相手に失礼のない範囲で聞きましょう。患者さんが本音で聞けばほとんどの医師は向き合ってくれます。私自身も病気で手術・入院をしたことがありますが、担当医に聞きたくても聞けないことがありました。医師である私でさえ聞けないのだから患者さんが言えないのも無理はないですよね。言葉で言いにくければ、紙に書いて出してみても良いんですよ。大多数の医師は「良い先生」ですから聞いてくれるはずです。今は情報が氾濫しているので患者さんも迷うことが多いと思いますが、多くの人が自分にとっての「良い先生」、何でも話せる医師にめぐり会えると良いなと思っています。

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