腎臓病と糖尿病には密接な関係が
予防の鍵は、生活習慣の見直し
野村内科
(一宮市/妙興寺駅)
最終更新日:2024/12/16


- 保険診療
「20歳以上の8人に1人が罹患」と推計され、今や新たな国民病といわれつつある腎臓病。初期の段階ではほぼ自覚症状がなく、気づいた時には病状が進行していることも少なくないそうだ。もし悪化したならば、透析が必要となるケースもあるという。そんな腎臓病だが、実は糖尿病とも大きく関連していることをご存じだろうか。実際に透析治療中の患者の約4割が糖尿病を併発しているという報告もある。生活習慣に大きく左右される、この2つの病気の診療に力を入れているのが「野村内科」の野村敦院長だ。20年以上前から近隣の基幹病院と共同で糖尿病診療の地域連携に携わるほか、28年前の開業当初から腎臓病の治療にも注力。診療経験が豊富な野村院長に、慢性腎臓病と糖尿病との関連性や、これらの予防法について詳しく解説してもらった。
(取材日2024年11月28日)
目次
腎臓病と糖尿病は「無症状でも受診」が肝心。早期に生活習慣を見直し、病状のコントロールを
- Q先生は腎臓内科がご専門だとか。腎臓病とはどんな病気ですか?
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A
▲長年、腎臓病・糖尿病治療に注力してきた野村院長
腎臓には、体内の余分な水分や毒素を尿にして体外に出す働きがあります。ほかにも「血液を弱アルカリ性に保つ」「赤血球を作るためのホルモンを作る」「骨を丈夫にするためにビタミンDを活性化する」なども腎臓の役目です。ですが、腎臓病になり腎不全から尿毒症を発症すると透析が必要となる場合があります。また、動脈硬化も進行しやすくなり心筋梗塞や脳卒中などの危険性が高まるほか、一部の薬が体内に残りやすくなり副作用も出やすくなるでしょう。腎臓が悪化する原因として多いのは糖尿病や腎炎、高血圧やメタボリックシンドロームによる腎硬化症など。これらをまとめて慢性腎臓病といい、成人の8人に1人が該当するといわれています。
- Qでは、糖尿病とはどのような病気なのでしょう。
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A
▲個々の患者の生活習慣病を把握し指導内容を変えているのだという
糖尿病は、糖の代謝を助けるインスリンの減少や作用の低下により血糖値が上がる病気です。内臓脂肪が増えると、インスリンの働きが妨げられ糖尿病の発症につながります。成人では男性の約2割、女性の約1割が糖尿病か予備軍と言われています。特に日本人はインスリン分泌が少なく、糖尿病になりやすい人種といわれます。また、糖尿病は予備軍の段階から動脈硬化が進みやすく、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まるため要注意です。さらに腎不全からの透析、糖尿病網膜症による失明、神経障害や血流障害からくる壊疽(えそ)による下肢切断など、重大な合併症につながることも。合併症は進行すると元に戻らないため早めの対策が必要です。
- Qこちらのクリニックでは、どのような診療をされていますか?
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A
▲食事療法や運動療法、細かな治療計画を立てているのだという
慢性腎臓病や糖尿病といった生活習慣病の管理に注力してきました。これらの疾患は初期の段階から生活習慣の改善を図り、病気をコントロールできれば合併症の抑制が期待できます。そのため、健康診断の段階から病気の早期発見に努め、薬が必要となる前から生活習慣の改善に向け指導しているのです。ただ、診察中のみでは十分な時間が取れませんので栄養士や看護師にも関わってもらいます。患者さんにとっても、栄養士や看護師であれば話しやすいのではないでしょうか。また、一人ひとりの状態に応じて食事療法や運動療法も行い、腎臓病や糖尿病の教室も定期開催しています。血液透析も可能ですので、腎機能が悪化しても継続通院しやすいはずです。
- Q腎臓病や糖尿病の検査項目、相談先についても教えてください。
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A
▲専門の医師へ相談するのが大切だ
健康診断や人間ドックにおいて腎臓病に関わる検査項目は、尿検査で調べる尿たんぱくや尿潜血、血液検査で調べるクレアチニンやeGFRです。中には「泌尿器科を受診すべきでは」と考える方もおられますが、異常が見られた場合は腎臓内科の受診をお勧めします。一方、糖尿病に関わる検査項目は尿糖や血糖値、HbA1cであり、糖尿病内科などに受診すると良いでしょう。もし、健康診断を受けていなくてもこれらの病気を心配されるようでしたら直接内科を受診して相談していただいても構いません。受診される際に過去の検査データがあると医師の判断材料にもなりますので、もし手元にあればお持ちください。
- Q合併症や透析を回避するには、どんな意識が必要ですか?
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A
▲「生活習慣の見直しが大切」と話す野村院長
一般的には肥満にならないよう食べ過ぎに注意する、塩分を控える、飲酒を適量にする、禁煙する、脱水に注意する、運動をするなどです。慢性腎臓病に対する食事療法は、病気の原因や腎機能によって制限内容が微妙に変わるため、専門の医師に判断を仰ぎましょう。通院が必要な方は、薬を決められたとおり服用するほか、他院で出された薬やサプリメントについて主治医に伝えることも大切です。腎機能が低下していたら、他院を受診される際や市販薬の購入時にその旨お伝えください。また、経過観察や食事療法のみ行い、薬が不要といわれても通院が不要というわけではありません。必ず指定された期間、指定がなければ1年後に再検査を受けましょう。