星野 彰宏 院長の独自取材記事
ほしの眼科
(岡崎市/北岡崎駅)
最終更新日:2023/07/10
愛知環状鉄道線の北岡崎駅から徒歩約5分の井田西町にある「ほしの眼科」。1989年に同じ岡崎市の康生通東に先代である父が開業して以来、30年以上地域医療に貢献してきた。開業の翌日に平成に変わり、その平成も終わり、令和の時代を迎えるとともに院長も交代。クリニックも世代交代を果たし、現在は2代目院長である星野彰宏先生が中心となって外来診療や手術を行っている。開業当時から白内障手術を数多く手がけ、現在は院長を含む3人の医師が年間数多くの白内障手術を行っているという。岡崎では眼形成や涙道手術を受けられる病院がほとんどないとのことだが、2022年5月より同院でも涙道手術もできる体制が整った。同院の歴史から現在の診療、そして今後の展望までさまざまな話を聞いた。
(取材日2019年11月20日/更新日2023年7月3日)
開業以来、白内障手術の実績を積み重ねてきた30年間
平成と同時に開業し、令和と同時に世代交代して先生が2代目の院長に就任されたそうですね。
初代院長である私の父は名古屋市出身ですが、安城更生病院に長く勤め地域の方々にもお世話になったことから、三河地域医療の発展を考えて東岡崎で開業し、2016年に北岡崎に移転しました。当時から私も医院を手伝うようになっており、ゆくゆくの継承を見据えて、より医療の幅を広げていきたいと思い、広さにはこだわりました。大通りに面したこの場所を選んだのは、患者さんの利便性を考えてのことです。患者さんの多くが車で来院されるため、移転時に広い駐車場を用意しました。温かみと解放感のある空間づくりにこだわり、ナチュラルカラーを基調にした院内は幅広い世代の患者さんが来やすいようバリアフリー設計になっています。手術室にはベッドと顕微鏡を2台ずつ設置して、患者さんの入れ替えをスムーズに行えるようにしました。その後、「新しい時代に世代交代をしたい」という父の希望から、年号が令和に変わる2019年に院長職を継承しました。
最初は脳外科に勤務されていたそうですが、いつから眼科の診療をするようになったのですか?
父の影響で医師という仕事を身近に感じ、医学の道を志したのですが、最初は父の後を継ぐことは考えていませんでした。研修医の頃は救急医療に興味を持ち、人助けをするという意味では、救急に身を置くのが理想だと考えていました。また、尊敬していた脳外科の先生についていきたいという思いもあって、脳外科を専門に選んだのです。父は当院を継ぐものだと考えていたので、その時は父と心の距離が離れてしまったように感じましたね……。それでも、脳外科に勤務し、手術を行った患者さんや意識障害で動けなかった患者さんが歩いて退院できるようになったら、医師としてのやりがいにつながりますし、そのために力を尽くしていました。一方で、父のことはずっと心にひっかかっていたので、やがて中京病院の眼科へ行く決心をしました。
どんな疾患の患者さんが多いですか?
白内障の患者さんが一番多いです。開業当時、白内障手術を行っているクリニックは少なかったのですが、父はその頃から白内障手術をしていました。途中からは、連携する中京グループの医師も来て、1日に行える手術件数が増えたことも要因となっています。そういった長い実績もあり、近隣のクリニックからも紹介を受けていますね。他には、結膜炎やものもらい、ドライアイ、近視などの一般診療から、網膜疾患や緑内障など専門性の高い疾患なども診ています。近くに小学校がありますので、学校検診で要検査になった小学生も増えていますよ。近隣の方だけでなく、東岡崎で開業していたことから、そちらの方も引き続き来ていただいていますし、患者さんの紹介で遠方から来られる方もいらっしゃいます。
中京グループ内で連携し、機器、情報を共有
名古屋市の中京病院の関連施設とお聞きしましたが、どんな連携をとられていますか?
当院が加入している中京グループは、高品質な眼科医療を築くために中京病院を核として三十数ヵ所の眼科施設が連携する眼科医療グループです。飯田市立病院や佐藤裕也眼科医院など県外にも多数施設があります。中京グループの医師による協力のもと、白内障手術に使用される眼内レンズや眼科医療のための検査・手術用機器類、眼科医療に関する情報が共有できることが、大きなメリットですね。定期的にインターネットを通じたウェブでの勉強会を行っているので、先進の情報や知識を得ることができます。大学の医局のようなシステムになっていて、現在は約30人いる中京グループの医局員が開業医の手術のサポートや診療の手伝いに出向いています。私も木曜と金曜は中京病院で眼形成の外来の診療と手術を行っています。
中京病院で手術をすることもあるのですか?
現在は、白内障手術、眼形成・前眼部手術、硝子体手術を行っています。当院は日帰り手術のみの対応になりますので、例えば専門性の高い緑内障、網膜硝子体、角膜の手術などは、こちらから中京病院へ紹介いたします。また、小さいお子さんや認知症の方で入院にて全身麻酔が必要になる場合も、紹介しています。私の専門である眼形成と涙道疾患の手術であれば、中京病院で私が執刀することも可能です。もちろん、名古屋市ではなく患者さんの家から近い病院がご希望であれば、近隣の病院を紹介することもできますので、ご相談ください。
ご専門の眼形成と涙道疾患について教えてください。
私は中京病院や飯田市立病院などに16年間在籍し、眼科一般診療に加え、白内障や緑内障の手術、前眼部の手術などを経験しましたが、2006年からは眼形成と涙道疾患を専門に研鑽を積んできました。眼形成を行う主な病気は、まぶたが下がる眼瞼下垂や逆まつ毛など。涙道疾患は、涙が鼻に抜ける道が細くなったり詰まったりして、涙目になるなどの症状が出る病気です。涙道疾患の手術は、2012年からは涙道内視鏡手術が保険適用になったので、まずは内視鏡手術を行いますが、涙嚢炎併発例や内視鏡ではうまくいかないケース、再閉塞例では、涙嚢鼻腔吻合術といって新たにバイパスを作るための手術も行っております。
専門の眼形成や涙道疾患の手術ができるクリニックへ
お話は少し変わりますが、クリニック入り口にある花壇は初代院長がお手入れされているそうですね。
父の趣味はガーデニングで、入り口の花壇に季節の花を植え替えては楽しんでいます。休日も当院に来て庭仕事に精を出していますよ。私にはなかなかできないことなのでありがたいです。父はジャズも趣味で、ベース奏者でもあるんです。岡崎では毎年11月にジャズストリートというジャズの祭典があり、父も毎回、参加することを励みにベースを練習しています。多趣味な父と違って、私はこれといった趣味はないのですが、3人の子どもがいるので休日はもっぱら家族サービスですね。1日公園で遊んで終わってしまいます(笑)。
読者へのアドバイスやメッセージなどをお願いします。
うちの子どもたちもそうですが、スマホやパソコンの影響が大きいのか小学生の近視が増えています。目を1時間使ったら15分休憩するように、親御さんからも促すといいでしょう。子どもだけでなく大人も眼精疲労やドライアイなどにもなるので、目を休めることは大切です。高齢の方の場合ですが、白内障は徐々に進行していくので、0.2ぐらいまで視力が落ちているのにそのまま車を運転している方もおられます。最近、ニュースでもあるように高齢者の事故が多いので、少しでも見づらいと思ったら検査を受けてください。白内障以外にも緑内障や網膜疾患など失明につながる疾患が見つかることもあります。また、白内障の手術では、新しく入れるレンズを選んで術後の見え方を患者さんと相談しますが、当院では患者さんのニーズに合わせたレンズも各種ご用意させていただいています。
最後に今後の展望をお聞かせください。
2022年5月から涙道内視鏡を用いた涙道内視鏡手術を開始いたしました。特に三河地域では涙道手術ができるところが少ないため、多くの患者さんの紹介をいただいております。2023年6月より緑内障のある白内障患者さんに対して、水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術を開始いたしました。現在、緑内障の手術にはさまざまな術式がありますが、この術式は初期の緑内障に対し白内障手術と同時に行えるといったメリットがあります。詳しくは当院にて説明をさせていただきます。今後も地域医療に貢献できるよう、幅広く質の高い医療を提供し、充実、発展していければと思います。