木村 仁志 院長の独自取材記事
きむら内科小児科クリニック
(名古屋市緑区/徳重駅)
最終更新日:2025/12/15
名古屋市緑区にある「きむら内科小児科クリニック」。「今日ここに来て良かったと感じていただけるクリニックでありたい」と穏やかに語る木村仁志院長は、腎臓内科医として10年以上の病院勤務や在宅医療を経験。自身の入院・手術経験から、治療を受ける側の不安や痛みに深く寄り添う。院内は細部まで心配りが行き届き、待ち時間を快適に過ごせる工夫やトイレの使用状況がわかるランプ、発熱患者専用の動線設計など、院長の温かな思いが息づく。小児科は木村多化子先生が担当し、小さな子どもから家族ぐるみで相談しやすい体制も整う。さらに新年餅つき大会や野菜マルシェなど地域交流にも力を入れ、誰もが立ち寄りやすい場づくりをめざす。患者の立場に立つ姿勢を大切にする院長に診療への思いを聞いた。
(取材日2025年11月14日)
地域に開かれた、ぬくもりある医療を届けたい
院内が洗練されていて、こまやかな心配りを随所に感じます。こだわりのポイントを教えてください。

院内の設計には細部までこだわりました。腎臓内科では尿検査が多いため、トイレの使用状況がひと目でわかるランプを採用。尿を置く小窓の扉が開くと音が鳴る仕組みにし、個室ごとに音を変えて動線をスムーズにしています。また、発熱患者専用の外来を建て替え時に新設しました。専用動線とトイレを確保し、受付から会計まで完結できるようにしています。端末やパネルは内蔵型にして見やすさと安全性に配慮。待ち時間対策としてスマホでQRコードを読み込めば雑誌や漫画を読める仕組みや季節のお知らせのモニター、非接触のセミセルフ会計も導入しました。駐車場には満車・空車サインを設置し、車でお越しの方でも安心して利用できるよう工夫しています。来院された方が迷わず動ける環境づくりを大切にしています。
現在、どのような患者さんが多く来院されていますか?
患者層は本当に幅広いですね。内科は私がゼロから始めたこともあり、健診を機に来られる30〜40代から80代までさまざまです。古くからの住宅地なので「遠くまで通えない」という地域のご高齢の方も増えています。一方で腎臓内科は専門機関が少ないため、岐阜・三重・浜松など県外からの受診も多く、渡航ワクチンでは名古屋市全域から来院されます。小児科併設でお子さんも多く、昔からのご家族も変わらず通ってくださっています。
地域とのつながりを大切にされていると伺いました。具体的にどのような取り組みをされていますか?

地域とのつながりは私にとって大切な使命です。地元出身でもあり、患者さまやスタッフ、家族を含め関わる人が気持ち良く過ごせる場でありたい。そのためSNS発信やイベントにも注力しています。恒例の「新年餅つき大会」は、つきたてのお餅を振る舞い、お子さんも体験できる人気行事。また管理栄養士による栄養指導など、食と健康の活動も重視。医師と農家さんが参加する「ドクターズマルシェ」も当院で開催しています。地域に少しでも恩返しができればと考えています。
スタッフが笑顔で互いに成長し合える環境を整えたい
地域全体に開かれた場づくりをされているのですね。

イベントに地域の方が来てくださるのはうれしいですね。今後はキッチンカーや管理栄養士のメニュー提供など、もっと楽しめる場にしたいと考えています。院内では腎臓病勉強会なども行い、役立つ情報を発信。また「ワクチンプロジェクト」としてペットボトルキャップを回収し、アフリカの子どもたちのポリオワクチンへ換える活動も行っています。地元の少年野球チームが袋いっぱいに届けてくれることもあり、地域のつながりが励みになります。他にもインフルエンザ接種数に応じた海外へのワクチン寄付などを実施し、患者さまと協力しながら自然と誰かの役に立つ仕組みづくりを大切にしています。
スタッフの皆さんと日々診療を進める上で、先生が大切にされている考え方はありますか?
スタッフは、日々の診療をともに支え合うかけがえのない仲間です。当院では「クレド」という独自の行動指針を掲げ、言葉づかいや丁寧な説明など、患者さまへの姿勢を徹底しています。毎朝の朝礼で読み合わせを行い、全員が同じ想いで患者さまをお迎えするのが日課です。また、働きながら輝いてほしいという願いから、興味のある勉強会への参加も積極的に後押ししています。おかげさまで素晴らしい人材に恵まれ、患者さまからお褒めの言葉をいただくことも多いですね。「良いクリニック」であるためには、まず「良い職場」であることが不可欠。互いに成長し合いながら、患者さまにとって心安らぐ居心地の良い場所をつくり続けていきたいですね。
ホスピタリティーも大切にされているのが伝わってきます。

私自身、過去に入院や手術を経験したことで、「治療を受ける側」の心身の痛みを身をもって知りました。術後は起き上がるだけでも激痛が走り、食事やトイレといった日常動作さえままならない。「健康でいられること」がいかに尊いかを痛感した日々でした。 同時に、お見舞いの温かさや、病室を明るく照らしてくれる看護師さんの存在が、どれほど心の救いになるかも学びました。痛みや不安を知る私だからこそ、患者さまがどこでつまずき、どんな言葉を求めているのかを深く想像しながら診療に向き合えます。あの時の経験すべてが、医師としての今の私を支える、何より大切な土台となっているのです。
治療に伴う不安に寄り添い、相談しやすい空気をつくる
これまで積まれてきた経験をお聞かせください。

研修医として東京医科歯科大学で学び、その後約10年間、腎臓内科医として病院勤務に従事しました。診療や講演など責任ある役割が増える中で、「自分はこれから、どのような形で医療に関わりたいのか」を深く考える時期でもありました。 そんな折、妻の職場のご縁で在宅医療に携わる医師と出会ったことが、大きな転機となります。毎日、車で患者さまのもとへ通い、「暮らし」の中に医療を届ける日々。それは病院とは全く異なる経験であり、そこで過ごした2年間は、私に医師としての新たな視座を与えてくれました。今、地元で開業しているのは、専門性の高い病院医療と、生活に寄り添う在宅医療、その両方を経験した私にとって、ごく自然な延長線上にある選択だと感じています。
特に印象に残っている患者さんとのエピソードはありますか?
研修医時代、初めて受け持ったある患者さまとの出会いが今の私の原点です。治療の難しい病気を抱え、週3回の人工透析を受けておられました。当時の私は医療的な介入ができず無力感に苛まれましたが、指導医の「ただそばにいることが仕事だ」という言葉にハッとさせられました。 それからは病室で野球の話などをして過ごすうち、普段は寡黙なその方が、私にはふと笑顔を見せてくれるようになったのです。「先生が来るとうれしそうですね」という看護師さんの言葉は、今も忘れられません。 病気を治すだけでなく、患者さまの人生と長い時間をかけて向き合い、苦楽をともにする医師になりたい。そう強く感じたことが、腎臓内科の道を選んだ理由の一つです。 だからこそ治療方針を一方的に決めるのではなく、どんな不安も話し合える関係性を何より大切にしています。「まずは先生に相談したい」。そう言っていただける安心感をこれからも続けていきたいですね。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

地域のニーズに応えるとは、病気を治すことだけではありません。当院では今、保険診療をベースにしつつ、自費診療、健康診断を組み合わせた「予防・未病」のケアに力を入れています。不調を治すだけでなく、病気を未然に防ぎ、内側から健康で美しい状態をつくるトータルケアです。 ありがたいことに受診される方が増え、予約の取りにくさなどの課題も出てきましたが、チャットボットの導入や人員体制の見直しなど、ITと人の力を合わせて改善を続けています。効率化で生まれた時間は、お一人お一人との対話や診療の質へ還元したい。体調不良はもちろん、「もっと元気になりたい」という時にも頼れる存在として、皆さまとともにより良いクリニックを育てていきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とはニンニク注射/1650円

