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鬼頭 正人 院長の独自取材記事

きとうクリニック

(名古屋市守山区/守山自衛隊前駅)

最終更新日:2023/12/05

鬼頭正人院長 きとうクリニック main

守山自衛隊前駅を最寄りとし、古くからある住宅街の一角に建つモダンな建物が「きとうクリニック」だ。鬼頭正人院長はこの町で生まれ育った2代目院長。診療では患者の話をよく聞くことを重視し、医師がそれに集中することができるように、電子カルテの入力を専門に行う医療秘書まで採用している。医療と介護の両面から患者を支える鬼頭院長の姿勢からは、地域の人々と深い絆で結ばれ、高齢者の多い町で親しまれている様子がうかがえる。「患者さんが笑顔になることがやりがいです」と、話す鬼頭院長に、診療の内容はもちろん、地域や患者に対する思いをたっぷりと語ってもらった。

(取材日2023年10月26日)

地域住民の高齢化に対応し、デイケアや訪問看護も提供

こちらのクリニックの歴史を教えてください。

鬼頭正人院長 きとうクリニック1

私の父が、1951年に今の場所のすぐ隣で外科医院を開業しました。私は大学病院に勤めていたのですが、1992年に父が亡くなったため、後を継ぐことになり、この場所に移転新築しました。昔は入院病棟もあったのですが、より地域のニーズに合った医療を提供していこうと考えて病棟は閉鎖し、旧クリニックのあった場所も活用して通所リハビリテーションやデイサービス施設を運営するようになりました。当院の患者さんも高齢化し、介護保険も始まりましたから、デイケア、訪問看護、居宅介護支援事業所を併設し、在宅療養する患者さんのサポートに力を入れています。

先生は、なぜ医師をめざされたのですか?

子どもの頃から父が働く姿を見ていましたので、自然に医師になる道に進んだのですが、父は外来も入院も往診もして常に多忙でしたから、私自身は実は開業医にはなりたくなかったんです。だから大学病院に残っていました。しかし、父が亡くなった頃は、この地域にクリニックが少なかったんですね。ここで患者さんを診ていくかかりつけ医が必要だと思って戻ってきました。その頃から比べると、地域の開業医の数は倍になりましたが、それでも守山区は人口比で計算すると名古屋市内で一番、開業医数が少ない区です。いずれ地域に戻って貢献しなければならないという思いはありましたし、今は強くそう思っています。私が継いだ31年前からの患者さんもいらっしゃいますから、感慨深いものがありますね。また、スタッフについても、看護師や介護士の中には継承当時から勤めてくれている人もいます。

守山区はどんな地域で、貴院ではどんな医療を提供されているのですか?

鬼頭正人院長 きとうクリニック2

守山区は高齢者率が高くて、特に独居の高齢者が多い地域ですね。当院の周囲は昔からの古い住宅地ですが、若い人がどんどん出て行ってしまって、高齢者だけが住む町になりつつあります。高齢者は通院できない人も多いですから、私も時々往診に行っていますし、当院併設の訪問看護ステーションはかなり多くの在宅患者さんの看護を引き受けています。私が自身で訪問診療をお引き受けしているのは、昔から当院で診ている患者さんや大学病院から依頼されたがんのターミナルケアの患者さんですね。通所リハビリテーション施設は定員40人で、常勤の理学療法士がいてさまざまなリハビリテーションを実施しています。ここでは、例えば、要介護2の人を要介護1に、要支援2の人を要支援1に回復させるための自立支援の機能訓練に力を入れ、利用者さんのADL(日常生活動作)の向上をめざして努力しています。

患者の目を見て話を聞くために、カルテは秘書が入力

地域の方たちも、昔なじみの先生が診療してくれて喜ばれているのでは?

鬼頭正人院長 きとうクリニック3

そうですね。私の小さい頃をよく知っている人が多いですからね。わんぱくだったから、こちらが恥ずかしいですよ(笑)。長くお待たせしたくないので、診察はできるだけ手早く進めたいと思うのですが、ご高齢の患者さんはとにかく話を聞いてほしいという人が多く、どうしても時間がかかってしまいます。ちょっとした話の中で気になることはカルテに記録しておきます。病気の半数以上はストレスが原因なのではないかと感じます。また、診察中に言いにくいようなご意見も聞きたいと思って、待合室には投書箱も設けています。例えば、駐車場や駐輪場の整備、受付の対応など、投書を参考に改善したことはたくさんあります。

先生は警察医もなさっていると聞きましたが、どんなお仕事ですか?

守山警察署の警察医をしています。「検案」という仕事を、私がお引き受けしていますが、亡くなる方の6割はいわゆる孤独死なのです。ですから、ご高齢の方の不安というものがよくわかりますね。東日本大震災の時は、全国各地の医師会から被災地の医療支援のために医師が派遣されましたが、私は名古屋市医師会の救急医療担当でしたから、当時、名古屋市医師副会長だった先生と一緒に、第一陣として、3月13日から仙台市の遺体安置所で被害に遭われた方の検案を行いました。普段、検案しているのはほとんどがご高齢の方なのですが、ここでは、子どもさんや若い方々も驚くほど大勢亡くなられていて、胸が締めつけられる思いでした。ボランティアですが、こういうときに少しでも役立つのが医師だと思っています。検案のような仕事も地域医療の一環なのです。

普段の診療では、どのようなことを心がけていますか?

鬼頭正人院長 きとうクリニック4

患者さんの話を聞いてあげるということですね。聞けば、なぜそういう病気になったのかが、わかることもあります。最近は核家族化が進んだこともあって、独居の高齢者は疎外感を感じている方が多いようです。うつ症状を抱えている方も少なくありません。「病は気から」という言葉があるように、実際、メンタルの原因から痛みなどの身体症状が出ているという患者さんが多いです。また、当院は電子カルテを採用していますが、私などは自分で入力していたら、患者さんの目を見て話ができません。ですから、話をしっかり聞くために、当院では電子カルテ入力専門の医療秘書を雇っています。

独居高齢者の不安を少しでも和らげたい

患者さんの主訴で多いのはどのようなことですか?

鬼頭正人院長 きとうクリニック5

当院の患者層の中心は75歳以上ですので、腰痛や関節痛といった何らかの痛みを抱えている方が多いですね。そのような症状に対して、痛み止めの薬やブロック注射などを必要に応じて処方しています。午前と午後の診察の合間の時間には院内でもリハビリテーションを行っていますので、そちらも受けていただけます。理学療法士などのスタッフが在籍し、運動系リハビリテーションを中心に行っています。当院が運営しているリハビリテーション施設は全部で3ヵ所あるのですが、先ほどお伝えした通所リハビリテーション施設と、この院内の施設、そしてもう1ヵ所、トレーニングに特化したリハビリテーション施設もあります。要介護認定を受けているかどうかや重症度に応じてご利用いただく施設が異なります。

鬼頭院長以外に、専門の先生が診療されることもあるようですね。

常勤の医師は私一人ですが、整形外科、肝胆膵、消化器でそれぞれ専門の医師に非常勤で来ていただいています。先生方には日々の診療に加えて、超音波検査や胃の内視鏡検査もお願いしています。今後は循環器の先生にも診療に加わっていただく予定です。患者さんのニーズは変化しますし、医療はどんどん進歩していますから、新しい知識や技術を入れていかなければ、置いていかれてしまいます。大学から先生に来ていただいて、そこで私も聞いて勉強させていただいています。治療のマニュアルがどんどん新しくなっていますから、患者さんのために知らなければならないことがたくさんあるのです。エックス線や内視鏡などの医療機器もできる限り更新しています。例えば、血圧脈波検査装置で動脈硬化の程度を検査する体制も整えています。より専門的な治療が必要な患者さんに対しては、適切に総合病院などへ紹介しています。

これからの展望をお聞かせください。

鬼頭正人院長 きとうクリニック6

独居の高齢者が行くところがないので、そういう方々を預かるような施設を作りたいなと思っていますが、なかなか難しいですね。有料老人ホームを開設するのにもたいへんなお金がかかりますからね。ハードだけでなくソフト面、そこで医療と介護を提供する体制を整えるのも簡単ではありません。私は患者さんたちとそれほど年も離れていないので、病気の悩みだけでなく、お金や家族に関して相談をされることも多いんです。聞いてあげるだけで解決できないことがほとんどなのですが。私の次男が大学病院で医師をしていますので、将来的には一緒に診療をして、患者さんたちが安心できるよう、何かお役に立てたらと思っています。

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