槙村 進 院長の独自取材記事
マキムラクリニック
(名古屋市守山区/小幡駅)
最終更新日:2025/08/05

名鉄瀬戸線「小幡駅」下車徒歩10分、矢田川の近くに隠れ家的にたたずむ「マキムラクリニック」がある。1972年から父が開業していた医院を、2009年に槙村進院長が受け継ぎ、以来、勤務医時代から専門としてきた動脈硬化治療と予防をはじめとする循環器内科を中心に、地域に住む幅広い年齢層の患者の健康に貢献してきた。「“医者と患者”というより“ご近所付き合い”のような感覚」を大切にし、その関係ゆえ「人として、自然に患者さんの幸せを願うようになってくる」と語る槙村院長。何よりも患者の生き方を尊重し、どうしたら楽しく生活できるかを考えている。今後は、訪問診療を始めることも考えているという槙村院長に、開業までの経緯や動脈硬化治療のこと、今後の展望などについて聞いた。
(取材日2016年6月9日)
動脈硬化にならないための予防医学に注力
先生が医師を志したきっかけは?

1972年から父がこの地で内科医院を開業していまして、ごく自然な流れで医師を志すようになりました。僕が幼稚園の時、父がかつて乳がんの手術をした患者さんに会いに行くというので僕も連れていってくれたりとか、そういうことが頭に残っていて医者はいいなと思うようになったのだと思います。あと、外科は悪い部分を取り除いたり修復したりして、結果がすぐ現れるところが非常にやりがいがあると感じていました。そのつもりで大学に入ったし、大学6年間も外科医になるという思いは揺るぎなかったですね。
大学卒業後、外科医としてのご経験を教えてください。
大学卒業後、心臓血管外科に入局しましたが、2年間の研修の後は出向先の循環器内科で診断や治療をしていました。今考えると、その時の経験が現在の診断や治療に生かされていて良かったと思うのですが、当時は手術をやりかったのでもどかしい気持ちが強かったです。小児外科になった時期もあり、やっと心臓血管の手術をできるようになったのが大学病院に戻ってからで医師になって8年目の頃だったと思います。それからは外科一辺倒で、動脈硬化の治療にあたってきました。狭心症や心筋梗塞に対する冠動脈のバイパス手術、頸動脈狭窄に対する手術、中でも、腹部大動脈瘤や腹部大動脈の狭窄、あるいは脚の閉塞性動脈硬化症に対する手術を得意としてました。心臓血管外科は術後も勝負なので、場合によっては朝まで術後管理をした後、またすぐ別の手術が始まったり、当時はもう鬼のように手術をしていましたね。
クリニックが掲げる「予防医学」が大切だと感じたきっかけは?

外科の手術後、患者さんはすごく喜んでくれるんですよね。けれど、いつからか患者さんを本当には救えていないなと思うようになったんです。というのは、動脈硬化というのは全身の病気のため、例えば、心臓や脚の詰まっている血管をバイパス手術しても、それは全身の動脈硬化の一部分の血行の再建を図っただけであって、全身の動脈硬化はまだ残っている状態なんです。ですから、例えば脚の手術をした人が今度は狭心症や心筋梗塞、脳卒中などで倒れることもあって、非常に不本意な思いで見ていたこともありました。動脈硬化自体は治らないので、ならば予防が必要ではないかということで、生活習慣病である高血圧、糖尿病、高脂血症などの段階で動脈硬化にならないように治療・指導していくことが大事じゃないかと思うようになりました。
内科医として全身を診て、専門家として動脈硬化を予防
予防医学の大切さを痛感したことが開業のきっかけに?

外科をやっていましたので自分としても「まさか!」という感じですけど、大学を辞め父が開業していたこの地に戻ってきたんです。2009年の3月に僕が院長に就任したので、医師になって16年くらいたってやっとそういう思いに行き着いたという感じです。狭心症に対しては、現在では非常に多くの人がカテーテル治療を受けていますが、最近の研究で、カテーテル治療をしたからといって生命予後が延びるわけではないことがわかっています。それは全身がすでに動脈硬化となっているからです。そんなこともあって、全身を診ることが必要だと感じられ、内科医として患者さんの全身を診る、そして専門家として動脈硬化の予防に力を入れたい、という思いが開業のきっかけになりました。
患者さんの症状としては動脈硬化が一番多いのですか?
ホームページやクチコミなどで動脈硬化を心配して来られる患者さんは非常に多いですね。一方で動脈硬化という認識がなくても、血圧やコレステロール値が高かったり、糖尿病がある方もみえますが、そういう患者さんこそ動脈硬化を見逃してはいけないんですね。動脈硬化は症状がないまま進行していくものなのです。コレステロールが高くても動脈エコーで見てみると意外ときれいな人もいる一方で、びっくりするくらい動脈硬化が進行している人もいます。症状がないので気づかないんですね。症状が出てからでは動脈硬化は進行しているということ。早い段階で動脈硬化を見つけることが大事です。胸の血管が狭いために狭心症の症状が出てしまったら、頭の脳血管もそれくらい狭くなったと考えていいんです。
動脈硬化の予防・早期発見のための検査内容は?

一般的なガイドラインでは、コレステロールの数値や他の危険因子から鑑みて薬を開始するかを決めているのですが、それだけでは動脈硬化のリスクは本当にはわかりません。そこで当院で柱になっている検査に頸動脈エコーと、血圧脈波検査があります。血圧脈波検査は血管の硬さを推定して血管年齢を見る非常に簡単な検査です。エコーのように予約を取らずにすぐ行えますし、血圧を測るような簡単な検査です。血管が硬くてリスクが高いなということから、この方は動脈硬化が始まっているなというのがわかるんです。そういう検査をしながらその患者さんに合った治療を行います。単に血圧や、コレステロール値が高いから、糖尿病だから、タバコを吸っているから、などそれだけではわからないんです。
食事も運動も楽しんでやってもらいたい
治療を続けてもらうために心がけていることは?

血圧の高さを心配される方は多くても、コレステロール値の高さを心配される方は意外に少ないんです。例えば、コレステロール値が高めだからと薬を始めますよね。するととりあえずはすぐにコレステロールの数値は下がることが期待できます。もともとコレステロール値の高さは重要視していない上に、それを見て安心して通院しなくなる患者さんは多い。その後に動脈硬化の病気になったということはよくある話です。そこで当院では患者さんにも意識を高めてもらいたいので、頸動脈エコーの画像を患者さんにも見てもらっています。そうすれば「コレステロールがたまって動脈が狭くなっている」とビジュアル的に一目瞭然ですから。患者さん自身に治療を頑張ろうと思ってもらうことが、自分なりの動脈硬化予防の戦略の一つですね。
患者さんとの関わりで気をつけていることは?
最近大きな病院では「患者さま」ですし、ひと昔前は「お医者さま」という関係もあったかもしれません。ただ、僕は高血圧、糖尿病、高脂血症といった慢性疾患の患者さんとは趣味やご家族の話、旅行に行くという話を聞いたら「どうでしたか?」などと、世間話をするようにしています。そうなると医者と患者というより、ご近所付き合いのような雰囲気になるんです。僕はただ好きでそうしているだけなんですけど、患者さんのほうもちょっとした体調の変化や、環境が変わってストレスを抱えているとか、細かい話を気軽にしてくれるようになるんです。それは治療を行う上で大事ですし、そうすると僕も自然に患者さんの幸せを願うようになってくるんですね。それが良好な関係だなと思います。
今後の展望を教えてください。

動脈硬化を予防して成果が出てきても、やはり筋力や脳などもいろいろと衰えていきます。皆さん長生きになってきており、食事も運動も楽しんでやってもらいたいですし、痛く苦しい病気にかからないよう、寝たきりにならないように、患者さんとの付き合いの中で一人ひとりに合ったいい治療をしていきたいです。だんだん足腰が弱ってきたり、悪性疾患で通えなくなってくる患者さんも出てきていて、7年たって遅ればせながら訪問診療を始める予定です。訪問診療は最初は考えていなかったんですが、通院が難しくなった高齢の方を放ってはおけないですからね。お年寄りを大切にした医療に一層力を入れていきたいです。