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伊藤 伸介 院長の独自取材記事

はざま医院

(名古屋市南区/笠寺駅)

最終更新日:2019/08/28

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勉強が趣味、学ぶことが好きだという医師は少なくないが、時には仕事以外の分野でも徹底的に追求し、玄人はだしの実力を備える人もいる。JR笠寺駅から徒歩10分のところにある「はざま医院」の伊藤伸介院長もその一人だ。学生時代はマンドリン独奏コンクールで日本一になるほど根気よく音楽に取り組み、医師となってからも医学の勉強をコツコツと続けてきた。EBMの手法を身につけ、日々の疑問を学びの面白さに変えて、知識を蓄えてきた伊藤院長。多趣味で、複数の勉強会の主宰や司会などを引き受けてきただけに、話し上手で聞き手を飽きさせない。インタビューの最後に「今日の取材は1時間だったけど、僕の中では5分しかしゃべってないからね」と語るチャーミングな笑顔が印象的だった。
(取材日2016年5月10日)

地域の健康を診る父の姿を見て。そうなりたいと思った

医師をめざしたきっかけやこれまでのいきさつを教えてください。

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学生時代から理科系、特に化学が好きでした。親が開業医だったのですが、早朝や深夜でも患者さんが飛び込んでくる診療所だったので、子どもの頃のイメージは大変そうなイメージしかありませんでした。でも、親の体があまり丈夫ではなかったこともあり、これは手伝わないといけないと思って、私も医師になることにしたんです。入学した医学部では、慢性呼吸器疾患を勉強することにしました。というのも、地元のこの地域は、当時公害のために呼吸器疾患を患っている方が多かったからです。そうした経緯もあって、地域の役に立ちたいと考え後を継いでの開業を決心しました。

患者さんは近隣の方が多いのでしょうか?

当院より南側や西側にお住まいの方が比較的多いようです。ホームページをご覧になり、呼吸器科やアレルギー科があるのを知ってお子さんを連れてみえる方や、高血圧や糖尿病、脂質異常症を患っている成人の方や、皮膚科の診療で来られる方が増えていますね。過去にこの地区は公害による喘息の指定エリアだったので、当時から通院を続けている方も多いです。ですから、患者さんも0歳から100歳以上の方まで、幅広い世代の方がみえます。開業して丸20年ですが、最初から幅広く対応できる「知」があったわけではなく、コツコツと勉強を重ねてきて今があります。

勉強しながら少しずつ幅を広げてきたのですね。

2

開業した当時、勤務医時代とは異なる疾患をもった患者さんの診療に携さわるようになり、知識はあっても経験をしたことのない疾患について改めて勉強しなおしました。臨床の場で大切なのは知識と経験のすり合せなんです。それを経て初めて応用できる「知」が身に付きます。本を読み、情報収集のために足を運び、とにかく勉強しました。疑問を疑問のままにしない、必ず解決して再び患者さんにお伝えする、そして患者さんに対しても「何でも聞いてください」「他に聞きたいことはありませんか」とお尋ねして、答えられないことはまた勉強する、ということの繰り返しでした。

探究心を忘れずに学んだことを現場で生かす

どうやって研鑽を積み、知識を得てこられたのですか?

3

診療上の疑問を疑問解決ノートに書きだし後で調べたり、医師会の勉強会や学会などの予定をびっしりと入れて、空いている時間を利用していっぱい勉強してきました。医療サービスの提供方法として、EBM(エビデンス・ベイスド・メディスン)という指針があります。これは「科学的根拠に基づく医療」のことで、論文や情報源を入手して精査・吟味し、実際の医療に反映するものです。それを実践している先生を特集した番組を偶然テレビで見たのですが、実はその方は私が以前に働いていた病院の後輩にあたる先生でした。田舎の診療所に勤務しているのですが、へき地であっても新しく裏付けのしっかりした医療を提供したいと考えて、実践されてきたのです。私もたいへん感動し、その先生の勉強会に入れていただくことになりました。

勉強会について詳しく教えてください。

EBMの勉強会には全国から同じ志をもった医師が参加し、ピックアップした論文をもとに学ぶという方法で、テレビ会議で全国をつないで討論し、グループで勉強をして問題を解決する、とても楽しく充実した時間でした。また年1回、持ち回りでワークショップを主要都市で開催し、EBMの普及に努めていました。論文といえども情報を鵜呑みにしない、権威ある人の意見であっても頭から信じ込まないなど、大切なことをたくさん学びました。その後、2004年からは名古屋市南区医師会の勉強会の主宰を任されたり、母校出身の医師たちと「はざまフォーラム」という勉強会を立ち上げたりしてきました。南区の勉強会はすでに100回を、「はざまフォーラム」も40回を超えました。僕は盛り上げるのだけはうまいんですよ(笑)。

実際の治療で心がけていることは何ですか?

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患者さんの状態やお気持ちや経済状況を感じ取って、柔軟に対応することです。お薬のことなら、いつも同じ薬を同じ量ということではなく、例えば血圧の薬なら十分下がれば減量したり、冬は血圧が上がりがちなので元の量に戻したりと、過剰な治療は行いません。検査も同じで、その方にとって問題のあるところだけを必要最小限行います。また、肝臓の病気のため「お酒を減らしましょう」とお伝えしたら、患者さんが居酒屋の店長さんで「そんなことをしたら売り上げが減る」と怒られたこともありました。各々のご事情も含めて、患者さんのお気持ちを理解する工夫をしたいし、何でも話してほしいですね。より良い治療のためには、勉強に励むことも大事ですが、一番大切でまた一番難しいのが、患者さんに合った治療を行うことなんです。だからこそ、これからも患者さんのことをよく観察し、訴えに耳を傾けることを大切に診療していきたいですね。

大きなことより、一歩ずつ前に進むことを大切に

忘れられない患者さんはいますか?

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100歳近い患者さんで、半年くらい在宅医療を行っていましたが、ある時、絶飲食が続いているとご家族から連絡がありました。すでにできることはなく、間もなく亡くなられました。大往生といえる静かな旅立ちで、帰路、青空にすっと雲が上がっていくのが見えて「ああ、患者さんが天国に上っていくんだな」としみじみと感じたことがあります。また、心肺停止状態の生後数箇月の赤ちゃんを抱えてお母さんが飛び込まれてきた時には、お母さんが激しく動転される中、一緒に救急車に同乗し心肺蘇生を行いながら病院に向かいました。赤ちゃんは残念ながら亡くなりました。でもその後しばらくしてあいさつにみえたときに、生まれて間もない赤ちゃんを抱いてみえたんですね。このときは本当にほっとしました。尊敬する先輩医師に「死を看取れる医師になりなさい」と教わりましたが、こうした出来事一つ一つの積み重ねなんでしょうね。私は恵まれていると思います。

休日の過ごし方を教えてください。

勉強以外では、音楽とサイクリング、ミュージカルですね。音楽は若い頃にマンドリンをやっていたのですが、51歳の時にバイオリンに初めて挑戦し、コツコツ続けています。ほかには声楽やオーケストラも。ミュージカル鑑賞が好きだったのが、だんだん自分もやりたくなってしまって、参加資格50歳以上のサークルに参加し、月に2回、稽古をしています。音楽以外では、サイクリングもします。実は母が糖尿病なので糖尿病に関心が強く、運動が体に良いとわかって自転車を取り入れたのです。それがテレビ番組の影響を受けてロードバイクを購入したところ、長距離を走ることに目覚めてしまい、一日で数十km走るのを楽しんでいます。多趣味ですが最優先は仕事で、仕事に差し支えるほどのことはしません。

今後の展望と読者へメッセージをお願いします。

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「今日できることを明日に残してはいけない」という格言がありますが、私はそれよりも、一歩だけでも良いので前に進み、それを続けることが大切だと思います。大きなことを描き過ぎると、落ち込むこともあります。私自身、これからも勉強や趣味をコツコツと続けていきますし、バイオリンはいつかオーケストラから信頼してもらえるような演奏者になりたいと思っています。大きすぎる目標かもしれませんが(笑)。毎日の診療においては可能な限り普遍性の高い標準的医療を提供し、0歳から100歳以上の方まで対応しますし、質問には丁寧にお答えしますので、何でも遠慮なく聞いてください。

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