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米川 俊 院長の独自取材記事

米川医院

(名古屋市西区/浄心駅)

最終更新日:2024/11/27

米川俊院長 米川医院 main

生まれも育ちも名古屋という「米川医院」の米川俊(よねかわたかし)院長は、院長を継いで35年余り、地域で生活する患者の健康を支えてきた。同院では標榜している耳鼻咽喉科や小児科にとらわれない、東洋医学による総合的な診療に力を入れており、処方も漢方が中心となっている。「症状を治すだけでなく、その症状が出にくい健康な体を作ることが重要」と話す米川院長に、東洋医学と西洋医学の特徴や、双方の特徴を生かした治療の内容など、普段触れる機会の少ない東洋医学の奥深さについて話を聞いた。

(取材日2018年7月31日/情報更新日2023年8月8日)

父の代から通う患者のために大学卒業から2年で院長に

この地にクリニックを開業して、どのくらいたつのでしょうか?

米川俊院長 米川医院1

「米川医院」は、私の父が40年以上前に開業したクリニックです。私も父の背中を見て医師を志すようになりました。関西医科大学に進学し、卒業後は研修医として名古屋第一赤十字病院の医局に入局。当初は脳外科などにも興味を持っていましたが、体力的に厳しい面も多く、自然と耳鼻咽喉科へ軸を置くようになりました。同時期に小児科の勉強にも取り組み始めましたね。研修医としてたくさんの経験を積んでいた時、父が急逝しました。すぐにクリニックを継ぐこともできず、1年ほど閉院することになりましたが、研修終了後すぐに、平日と土曜日の夜間のみの診療でクリニックを再開しました。まさか大学卒業から2年で院長になるとは思ってもみませんでしたね。

突然のことで、大変ではありませんでしたか?

今考えると無謀ですよ(笑)。でも父の代から通っている患者さんのためにも1日でも早く再開したかったんです。父のように開業医になりたかったので、父の死はショックでしたが同時にチャンスだと考えました。実は父も父親である私の祖父を大学在学中に亡くしていて、苦学の末大学を卒業し、このクリニックを開業したんです。私以上に苦しい状況で開業までこぎ着けた父の姿を、間近で見ていたからか、自分にもできると自然と思えましたね。夜の診療は父の代から続けておりましたが、2023年7月より夜間の診療を休止し、現在は受付時間を17時15分までに変更しております。

患者さんの多くがお子さんなのでしょうか?

米川俊院長 米川医院2

3割程度が小さいお子さんですね。そのほかは高齢の患者さんと働き盛りの患者さんといったところです。小児科、耳鼻咽喉科のどちらも診療ができるので、重宝されていると感じていますね。子どもがかかる病気は耳鼻咽喉科関連のものが多いですし。でもここ数年は、標榜科目にかかわらず患者さんの治療を行っています。現在の治療の軸となっているのが漢方をはじめとした東洋医学。例えば鼻水が止まらない時、「鼻水が出ているから止めなきゃ」と思われがちですが、鼻水が出るのは体内から異物を排出しようとしているから。東洋医学における治療とは、薬で無理に止めるのではなく、原因に対して適切に対処することに重きを置くのです。

東洋医学では、良薬は口に“甘し”である

東洋医学に力を入れるようになったきっかけは何ですか?

米川俊院長 米川医院3

院長を継いで5~6年後の頃から取り入れるようになり、当初は「この症状にはこの漢方」というような型にはまった処方をしていました。転機となったのは、25年ほど前に漢方の分野で知られる先生の講演会に参加したこと。東洋医学の奥深さに触れたことで、より深く知識を身につけたいと思い、毎月行われる勉強会に参加するようになりました。勉強会には漢方、鍼灸のエキスパートの先生や、生薬に詳しい先生、東洋医学の原理から説明くださる先生も参加していて、たいへん勉強になりますね。勉強会を通じて経絡、経穴に詳しい先生との交流もでき、最近では鍼を取り入れるようになりました。

西洋医学と東洋医学の違いとは何でしょうか?

西洋医学は、目に見える症状を上から抑えつける治療。熱が出たら解熱剤を処方するのは、西洋医学の発想です。処方された薬を服用して症状が治まった場合、「治った」と思いがちですが、そうではなく、症状を止めている状態なんです。場合によっては反動でよりひどくなってしまうこともあります。対して東洋医学は欠けている力を補い、患者さん自身の持つ免疫力や回復力を高めるための治療です。患者さんそれぞれに合わせた治療なので、いわゆるオーダーメイドのようなもの。同じ症状を訴えていても、症状が出た原因やその背景が異なれば、処方する漢方の内容がまったく異なります。通り一遍の治療ではない分、難しくも奥深いと感じますね。

漢方と聞くと、「苦い」と思われがちですが……。

米川俊院長 米川医院4

確かにそのようなイメージがありますが、漢方は患者さんの症状に合ったものなら、飲んだ時においしく感じるともいわれています。甘く感じる、と言う方も。これは患者さんの症状、東洋医学の言葉でいう「証(しょう)」と合っているからと考えられています。その考え方では、患者さんにとってその漢方が合わないものなら苦いと感じ、また体調が良くなってから漢方を再び口にすると、それも苦いと感じるようになるともいわれます。以前は生薬も取り入れていましたが、最近はエキスを抽出した粉末が主流ですね。成分は同じですが、こちらはそのまま飲むかお湯で溶かせばいいだけなので、手軽に取り入れることができるのも利点だと思います。

時には熱い言葉も交えて治療の信念を語る

診療におけるこだわりとは何でしょうか?

米川俊院長 米川医院5

東洋医学に軸を置きつつも、西洋医学の利点も生かした治療を行うことです。当院では顕微鏡による即時診断を行い、早くてその日のうち、遅くとも次の日には検査の結果をお伝えできます。東洋医学は検査とは無縁と思われがちですが、むしろその逆。きちんと検査をし、漢方処方の裏づけとする方が効率的です。抗生剤使用の判断のためにも、欠かせませんね。基本的に当院では抗生剤を使用することはありませんが、万が一抗生剤を使用しなければいけない場合も、事前に検査をしておけば適切な処置につなげられますし、患者さんの体への負担も少なくできます。抗生剤は強い効き目が期待できる反面、体への負担も大きく、特に子どもには安易に使用するべきものではないと考えているため、抗生剤を使わなくても大丈夫と言い切るためにも、検査は重要ですね。

診療において心がけていることは何でしょうか?

特に子どもの親御さんには丁寧に説明し、治療方針を少しでも理解してもらえるよう努めています。ほとんどの方が東洋医学という分野になじみがなく、不安に思う方もいますからね。ただ、「しっかり伝えなくては!」と熱が入ってしまうあまり、親御さんから怖がられてしまうこともあって……。怒っているつもりはないんですけど、私自身ヒートアップしてしまって、親御さんにとっては怒られていると感じてしまう方もいるようです。でも、伝えるべきことをしっかり伝えるためには、今のやり方を曲げるわけにはいかないとも思っています。

今後取り組みたいことはありますか?

患者さん一人ひとりとじっくりお話ができる診療スタイルを築いていきたいですね。東洋医学において、問診は最も重要。一度の診療では無理でも、継続的な診療を通して、患者さんの不調の根源を探ることが不可欠なので、その時間をとれるよう工夫していきたいです。また、引き続き東洋医学の勉強を重ねていきたいですね。東洋医学は本当に奥が深く、勉強すればするほど、“最善の治療”の形が生まれ変わっていくくらいです。数年前のカルテをみて、当時は最善と考え処方した内容に、「なぜこの処方をしたのか?」と思うこともありますよ。まだまだ勉強の途中。きっとこれは一生涯終わらないものなのだと思います。

最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

米川俊院長 米川医院6

もしも西洋医学のみの検査で原因がわからなかったり、治らないなんてことを言われたりしたことがあるなら、東洋医学の診療も受けていただきたいですね。西洋医学と東洋医学は、症状を治すまでの道のりがまったく異なります。視点を変える意味でも、東洋医学の診療を受けることは有効ですね。もしも当院に継続して通院するのが難しいのであれば、ご紹介もしています。私にとって重要なのは、患者さんの症状を治すだけでなく、その症状が出にくい体を作ること。患者さんとの対話を通して、患者さんの健康を支えていきたいです。

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