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板倉 義之 院長の独自取材記事

板倉医院

(名古屋市北区/志賀本通駅)

最終更新日:2021/10/12

板倉義之院長 板倉医院 main

志賀本通駅から歩いて5分ほどの場所にある「板倉医院」は、現在の院長である板倉義之先生の祖父の代から地域医療に貢献してきた歴史を持つクリニックだ。精神科を専門分野とする院長は、内科・小児科だった父の跡を継いで、すでに20年以上にわたって診療にあたっている。清潔感のある院内は、来院した患者がほっとできる雰囲気づくりを心がけているそうで、受付カウンター、ソファ、カーテンなどに淡いピンク色が使われている。内科・小児科も手がけるが、最近では院長とスタッフが協力して作成しているホームページの効果もあり、精神科としての認知が広がっているという。うつ病をはじめとする精神疾患に苦しむ患者が笑顔を取り戻すため、誠実に接することをモットーとしていると語る院長に、いろいろと話を聞いた。

(取材日2016年5月19日)

一番大切なのは、患者からのサインを見逃さないこと

どんな悩みで来院される患者さんが多いのでしょうか?

板倉義之院長 板倉医院1

男性の場合は、職場でのトラブルや仕事上のストレスといったことが多いですね。最近は女性でもそういった悩みで来られる方が増えています。女性の場合、かつては恋愛関係の悩みなどのほうが多かったんですが。その点では、女性の社会進出が進んでいるんだなという気はします。いずれにしても、がんばりすぎてしまう人が多いですね。特に仕事のストレスなどの場合は、かんたんに仕事を休めないとか、自分がいないと会社が困ると考えてしまうような責任感の強い人が、うつ状態になりやすい傾向にありますね。

診療の方針に特徴などはありますか?

当院が診療の理念としているのは「笑顔と誠実」ということです。患者さんは笑顔をなくしていますから、その笑顔を取り戻してもらうために、誠実に接することをモットーとして、治療にあたっています。具体的には、まずカウンセリングが有効かどうかを見極めます。患者さんの視野が狭まっていて、いろいろなことを「こうだ」としか考えられないと、いくらカウンセリングで内面を引き出そうとしても、心の奥までは届きません。そういった患者さんには、まず人の話を聞けるぐらいよくなるように、薬をお出しします。重症の患者さんは、富士山に例えると頂上近くにいる状態です。もっと低い、三合目あたりまでにいるような方の場合は、友達に悩みを聞いてもらうだけでもよくなることもあります。その中間ぐらいの患者さんですと、薬を使わずに医師のアドバイスだけでよくなることもあります。ですから実際の治療の内容は、患者さんによってさまざまです。

現在は薬を少しずつ減らしていくという方向に向かっているようですね。

板倉義之院長 板倉医院2

そうですね、その背景には、多量服薬によって総合病院に救急車で搬送される患者が増加してしまうなど、救急医療側からの要請が出てきたようです。なぜそんなに貯め込んでおけるほど薬を出し続けたのか、という批判があり、現在では使いすぎないように、あまり長期間出さないようにと言われるようになってきました。実際にそういった危険性を感じた場合は、それまで2週間分出していたのを1週間分にするなどしています。そうすると、気にされていることが患者さんに伝わって、そういった気持ちを抑えることにもつながるんです。やはりいちばん気を使っているのは、自殺のサインを見逃さないことです。今までの二十何年かの経験を通して、振り返ってみると「あのときの言葉、あの表情がサインだったのか……」と気付くことがあります。何気ない場面で患者さんはサインを出してくれています。そのサインを見逃さないようにと思いながら、日々診療を続けています。

電子カルテの導入で治療のスケジュール表を作りたい

児童を対象とした遊戯療法もされているそうですが、どのような療法なんですか?

板倉義之院長 板倉医院3

小学校低学年ぐらいまでの、自分のことを言葉で説明できない子どもに対して行う心理療法です。例えば箱の中に砂を入れた箱庭を使って、遊びながら自分の物語を作らせる”箱庭療法”などがあります。本人が口に出せなくても、精神的に追い込まれている状況のときには、小さな世界しか作れませんが、何回かくり返すことで、発散できるようになると、だんだんと作る世界が広がっていって、家族や動物がいる世界に変わっていきます。本人は遊んでいるだけのつもりなんですが、自然と心の中の状況を表現しているんです。

最近になって診療のスタイルを変えたそうですが?

今までは、医療事務専門の職員を置かずに、心理士または精神保健福祉士の資格を持っている者が事務も兼務していて、問診票に記載する内容などを、受付時に患者さんからかなり細かく聞き取り、診察前にカルテに記載してくれていたんです。そういったやり方は、効率としてはよかったんですが、自分が聞いていないところで、何か見落としてしまう可能性もありました。それが最近になって、スタッフが何人か結婚などで退職することになって、そういったスタイルを少し変えないといけなくなりました。そこで受付は通常の事務員が行うことにして、電子カルテを本格的に導入し、今までスタッフが行っていた患者さんからの聞き取りを、自分でやることにしたんです。そうすることで、今以上に深い部分で患者さんと触れ合うことができ、医療の質も高められるのではないかと期待しています。

電子カルテの導入がポイントなんですね。

板倉義之院長 板倉医院4

そうですね。電子カルテで患者さんのいろいろな情報を管理できるようにして、将来的には一人ひとりの症状と、治るまでの期間の見込みや、薬の使い方などもまとめたスケジュール表のようなものを作り、患者さんにお渡しできればいいな、と思っています。ただそういった仕組みを作るまでは大変だと思いますが……。患者さんそれぞれ症状は違うので、定型的なものでは役に立ちませんから。それぞれの患者さんについて「あなたの場合はこうです」と調整しないといけない。でもせっかく電子カルテを導入するのですから、そういったことまでやれたらいいな、と考えています。

何かあったら頼れるクリニックであり続けたい

医院のホームページは先生が作っているんですか?

板倉義之院長 板倉医院5

最初だけ友人に手伝ってもらいましたが、記事の更新などは自分とスタッフでやっています。最近ちょっと古くさいからと、あるブログソフトウェアを勧められて、自分で移行しました。現在は「医院便り」というページの『院長より』という記事は自分で書き、それ以外はスタッフが書いています。記事のテーマもスタッフの自主性に任せていますが、例えば予防接種の季節になるとそういった記事を書いてくれたり、自分たちの仕事のことを紹介してみたり、いろいろと考えて書いてくれるので助かっています。やはりこまめに更新しないと、誰も見てくれなくなりますからね。現在の患者さんの年齢層は30~50代の方が多いんですが、最近ではほとんどの方がホームページを見て来たとおっしゃっています。

精神科にかかるのはハードルが高いという人もいらっしゃるとおもうのですが。

例えば、うつという病気は、いまだに「さぼっているだけだ」とか「気合いが足りない」などと言われることがあって、それも親しい人からそう批判されることが多いんです。そのために治療を受けることを躊躇してしまい、その間に症状が進んでしまうことが少なくありません。そうなってから治療を開始したのでは、治るまで時間がかかってしまうので、自分で「おかしいな」と思ったら、早めに相談にいらしてほしいと思います。自分が怠慢なだけなんじゃないかと迷われている人も多いんですが、そう迷うこと自体がすでにこの病気の症状なんです。本当にさぼっているだけの人は、自分でそれをわかっていますから。そういったことで悩むようになったら、もう受診すべきときだと考えていいでしょう。

最後に先生は患者さんにとってどんなクリニックでありたいと考えていらっしゃいますか?

板倉義之院長 板倉医院6

当院は精神科とかメンタルクリニックといった名前をあえて大きく出していません。「内科の病気かも知れないけれど、もしかしたら精神的な原因かも……」という人も多いので、そういった方が身構えずに来られるようにです。また、症状がよくなって来なくなるのは患者さんにとっていいことなんですが、再び悪化したとしてもすぐにまた来てもらえるような、身近で頼れる存在になりたいですし、そんなクリニックであり続けたいですね。

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