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黒川 豊 院長の独自取材記事

黒川医院

(名古屋市千種区/池下駅)

最終更新日:2019/08/28

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「大切なのは認知症の知識ではなく関心です。認知症の人を地域ぐるみで支える仕組みづくりを全国で進めていくことが急務だと思います。」と話す黒川豊先生が院長を務める「黒川医院」は地下鉄東山線の池下駅から徒歩7分の住宅街にある。リウマチ科で学び、総合診断をする内科医として勤務する傍ら、当時では珍しい認知症を診る病院の立ち上げを手伝ったところから認知症との関わりが始まる。1996年に現在の黒川医院を父より継承し診療を始めたところ、認知症関連の患者や家族からの相談の多いことと、認知症に対応できる医療関係者の少なさに驚き、危機感を感じた先生は、医師会、医療や介護の担い手、行政や地域の関係者へ声をかけ、認知症対策のネットワークづくりをはじめた。
(取材日2016年7月13日)

増え続ける認知症と内科医として感じた危機感

内科医を志したきっかけを教えてください。

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若い頃は心臓外科など、メスを持つ外科医になりたいと思っていました。しかし、私自身、敏感肌で刺激に弱く、手荒れがひどくてどうしようもならなかった。よくテレビなどでも見かける、医師が手術前に厳重に手を洗う光景ありますでしょう。あれができなくて、外科医になるのを諦めました。そして自分は医師としてどうあるべきかを考えた結果、総合診断ができる内科医をめざそうと決めたんです。総合診断ができる内科医は、さまざまな疾患にある程度精通していて、患者さんに対して適切な場所、治療へ導く案内人のような役割を期待されています。リウマチ科は患者さんの症状がでる原因がさまざまで、精神科、皮膚科、眼科、整形外科、消化器科など色々な科目に病気が重なる特徴があり、私はリウマチ内科を持つ母校でお世話になることにしました。

認知症との関わりはいつからだったのでしょうか?

浜松赤十字病院にいる間に、知り合いの病院の立ち上げを手伝うことになりました。それが私と認知症との出会いですね。当時の世間からの目線は、認知症の人イコール半分精神的におかしくなっている人たち、という扱われ方でした。立ち上げた病院は認知症患者さんを見る為に、精神科登録で、閉鎖病棟がで50床、全体で150床でした。私はそちらで10年ほどさまざまな認知症の症状を持つ患者さんを診た後に、父の後を継ぐタイミングとなりました。

医院を継承されてすぐに認知症対策を始められていますね。

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1996年にこちらの医院を継承し診療を始めました。帰ってきて驚いたことは、認知症に関する患者さんや相談件数の多さです。浜松の認知症対応病院であれば、認知症の患者さんを診断したあと、治療方針を決めたら指示し、必要な治療ができたのですが名古屋では認知症患者への適切な対応を知っている人があまりいないことに気がつきました。対して患者さんや相談件数は増える一方です。その状況を見て、私は認知症の治療やケアの担い手が不足していることと、医療関係者だけではなく、家族、地域の人が認知症に対しての知識をつけ、理解が深まるような環境づくりをしなければならないと感じ、地域のかかりつけ医として何ができるのかを考えた末、医師会や地域、行政など多方面に声をかけ、地域ぐるみで認知症について学べる勉強会を立ち上げました。

納得いくまでお話してほしい、そのための問診です

先生が診療で心がけていらっしゃるのはどんなことですか?

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初診の際は特に、患者さんのお話を聞くことに時間をかけます。それは患者さんからのお話の中には、疾患の原因だと考えられることや、患者さんが本当に望んでいること、その人をかたちづくっている生活習慣、暮らしそのものを浮き彫りにするためです。その上で患者さんの希望にできるだけ沿った治療方針を決めていきます。患者さんにはどんなことでも良いので気になることは話してほしい、とお伝えしています。その人にあった治療へ導くために、カウンセリングには時間をかけ「患者さんのお話を聞き、適切なアドバイスをする」ということにこだわっています。認知症の患者さんが多い当院ですが、最近は名古屋でも認知症ということを隠すのではなく正しく理解して病気としての対応や治療を使用という人たちが増えてきました。

在宅医療も手がけられているのですね。

はい、勤務医だった浜松時代、かなり交通が不便な地域に病院があったため、通院が困難になった高齢者向けに訪問診療という用語も無かった時代でしたが、訪問看護チームを複数編成し、医師が週に一度ほど患者さんのお宅を廻るという方法で始めました。当院を継承し名古屋に戻って以降も、患者さんのニーズがあるため、午前と午後の診療時間の合間に患者さんのお宅を訪問しています。基本的にはもともと当院に通ってくださっていた患者さんのお宅ですが、中には施設に移られた患者さんも見えますので施設を訪問することもあります。

認知症の方がご家族にいらっしゃる方に、アドバイスをお願いします

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もの忘れが疑われるときは早めに医療機関を受診してください。認知症と診断された人の多くは2~3年前には症状が出ていることが多いのです。認知症にはいくつかの種類があり、それぞれに症状が違い、もの忘れの目立たない認知症もありますし、他の病気により認知症のように見えるだけのこともあります。認知症患者の家族の精神的な負担も大きく、その原因は家族の中に「患者が頼れる存在であった時の記憶」があるからです。患者本人は自分の失敗を忘れてしまうので「どうして家族に責められるのか?」とは思うものの、わざと家族を困らせるようなことはできません。認知症は覚えていたことを忘れていくために幼児と同じ失敗をします。教えても覚えることはできずむしろ失敗が増えていきます。そしてそのことを本人は理解できないのです。ですので、家族による早期の気づき、かかりつけ医や専門医への相談による予防医療の動きが非常に重要です。

認知症対策はいずれあなたも、という意識を持って

ご一緒に働いているスタッフさんはどんな方でしょうか。

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内科の患者さんは認知症の方も多く、またさまざまな合併症があることも多いので、看護師にも観察力、判断力と決断力、行動力が求められます。また受付事務のお仕事も事務処理能力、コミュニケーション能力、両方とも高いスキルを求められます。当院のスタッフはその事をしっかりと理解して取り組んでくれています。個人的に思うことですが、優秀な看護師さんは、ある程度「気が強い」人が適任ではないかなと思います。先ほど申し上げた、決断力、行動力、そして逃げない強い心が必要です。その点ではありがたいことに、私はスタッフさんに恵まれていますね。

今後の展望についてお聞かせください。

認知症対策をさらに充実させていきたいですね。まずは地域住民や認知症患者の家族の意識や行動を変化させていく必要があると思います。近所の人にも気軽に「うちのおじいちゃん、1人で歩いていることがあったら声かけてくださいね」と頼むことができるような環境ができれば近所の人とのつながりも増えていき、認知症でない人たちにも暮らしやすい安全な街ができます。些細な取り組みから、地域全体が自然と助け合える関係性を築くことができるようになれたら、患者さんにとってもより良い環境となるのではないでしょうか。これからは軽度の認知症の人も増えてくるため、認知症でも安心して暮らせる社会のインフラ整備を進める必要があると思います。例えば標識などの色やデザインを統一し、わかりやすくすれば、一般の高齢者にも優しい街づくりができます。全国的に統一した規格みたいなものができるとよいですね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

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認知症に限らず高齢になればだれでも認知機能は低下してしまいます。認知症になってもならなくても大切なかけがえのない家族であることを忘れないでいていただきたいと思っています。介護の悩みを抱え込みすぎるあまり押しつぶされてしまうご家族もいます。そんな時は「患者と介護者」以前の、「親子」であった時のことを思い出してほしいですね。親が子を心配するように、認知症を患った親も、言葉や態度にはできなくても介護してくれている子を心配しているのだと思ってほしいのです。そして何より、そうなる前にクリニックを頼っていただきたいです。患者さんの症状の改善はもちろん、介護する家族のケアも私たち医師の役割なのですから。

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