漢方の得意分野とは?
漢方治療の特徴と活用方法について
本山クリニックふじわら内科
(名古屋市千種区/本山駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
漢方をはじめとした東洋医学の歴史は非常に古く、現在に至るまで西洋医学とは異なる発展を遂げてきた。近年は診療の中で漢方を取り入れるクリニックも増加。しかしその一方で、漢方治療の特徴や西洋医学との違いなどを知る機会はあまり多くはないと言えるだろう。ともすれば、体に良い、優しいといったイメージばかりが先行してしまっていることも。また、治療にかかる費用なども気になるところだ。今回は、長年にわたって西洋医学と漢方治療で研鑽を深めてきた「本山クリニックふじわら内科」の藤原道明院長に、漢方治療とはどのようなものか、得意分野などを含めてじっくり解説してもらった。
(取材日2018年6月21日)
目次
漢方治療の基本的な考え方や治療内容を知り、活力ある体を手に入れよう
- Q漢方治療の特徴、西洋医学との違いについて教えてください。
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A
▲豊富な種類の漢方がそろう
漢方をはじめとした東洋医学の大きな特徴の一つが、「全身のバランスを整える」という考え方です。西洋医学が、症状が起きている臓器を細かく検査し、診断していくのに対して、東洋医学では、症状だけでなく患者さんの体の中のバランスがどのように崩れているかを詳しく見極めていくのです。バランスが崩れてしまうのは、体の中だけに問題があるというわけではありません。生活環境や季節の変化、ストレスなども体に大きな影響を与えます。そこで診療では、不調の原因は何か、体の状態、患者さんを取り巻く状況を把握しながらひもといていき、ひずみが生じているところを漢方薬や生活の是正・指導を通して調整していきます。
- Q診察方法にも特徴があるそうですね。
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A
▲多角的に患者を診て治療内容を考える
はい。大きく4つの方法に分類され、これを「四診」と言います。まず患者さんの顔色や舌の状態を診る「望診」。東洋医学では特に舌の状態を重視しますので、色や形、苔のつき方、舌の裏側まで細かくチェックします。おなかや呼吸、心臓の音を確認する「聞診」、患者さんの訴える症状や生活背景を確認する「問診」は、西洋医学的な診察にも通ずるものですね。そして、実際に患者さんに触れ、脈などを確認する「切診」があります。脈は左右の腕で確認するのですが、心拍数だけではなく脈の強さや指先に感じる硬さ、左右差なども細かく確認します。これらの「四診」から得た情報をもとに、バランスを整えるべく治療内容を組み立てていきます。
- Q治療を進める上でのポイントとは何でしょうか?
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A
▲東洋医学と西洋医学の知識を掛け合わせ、症状を解決へ導く
東洋医学では診察方法だけでなく、治療においても「標治」と「本治」という特徴的な考え方があります。おなかが痛いと訴える患者さんの治療を例に説明しますと、痛み止めのお薬を処方するといったように、今ある症状を解決に導くことを、東洋医学では「標治」と言います。対して、症状を引き起こした原因を根本的に解決することを、「本治」と言います。単に原因といっても、臓器の疾患である場合もあれば、生活習慣の乱れや環境の変化が原因することもありますので、その見極めが肝心です。当院では状態に応じで「標治」と「本治」を行うタイミングを考えていくとともに、処方する薬についても漢方薬だけでなく西洋薬も含めて検討していきます。
- Q貴院で処方する漢方薬について教えてください。
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A
▲患者の気持ちに寄り添い診療を行う藤原院長
当院では粉末のエキス剤を基本に、必要に応じて煎じ薬を処方しています。一般的な病気は基本的にエキス剤でカバーできますし、西洋薬と同様に手軽に扱えるのが特徴です。ただエキス剤は配合が決まっているものですので、重度のアトピー性皮膚炎や喘息、リウマチやがんなど、難治性の疾患の治療の場合は、煎じ薬を用いています。煎じ薬であれば患者さんに合わせて量や種類を調合できますからね。最近は薬局などでも手軽に漢方薬を手に取ることができますが、同じ症状・病名であっても、「合う薬」というのは患者さん一人ひとりで異なります。応急処置として利用する分にはいいですが、なかなか改善しない場合は診察を受けることが望ましいです。
- Q漢方が得意とする症状・疾患はどういったものでしょうか?
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A
▲薬や治療方法への丁寧な説明も心強い
いわゆる「未病」と言われるような、西洋医学的な病名がつかない状態や、西洋医学的な病名があるものでも、治療方法がなかったり、副作用が強く治療の継続が難しい場合などは、漢方薬の出番かと思います。体に優しいイメージのある漢方治療ですが、間違った治療をすれば当然副作用がありますし、治療そのものは間違っていなくても、病気や体質によっては副作用が出ることもあります。漢方治療に固執することで、遠回りな治療となってしまうこともあるでしょう。患者さんの悩みに対して常により良い方法を考えていくことが難しさでもあり、醍醐味でもありますね。