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上田 宗 院長の独自取材記事

中津クリニック

(中津川市/中津川駅)

最終更新日:2024/07/03

上田宗院長 中津クリニック main

60年ほど前から地域医療を担ってきた「中津クリニック」。先代院長が中津川駅近くで外科の病院として開業し、その後今の場所に移転した。現在は小児科と内科全般を診るクリニックとして、父の後を継いだ上田宗院長が診療している。上田院長が特に力を入れるのが高血圧症、糖尿病、慢性腎臓病などの生活習慣病の治療や重症化予防、また、透析になる人を減らす活動だ。在宅医療にも取り組み、患者に対して「住み慣れた地域で安心して最期まで暮らしてほしい」と優しい笑顔を見せる。行政や他の医療機関とも手を携え、地域の医療レベル向上に力を尽くす上田院長に、注力する医療や地域への熱い思いについて聞いた。

(取材日2024年4月17日)

支援する姿勢で糖尿病など生活習慣病の患者に寄り添う

クリニックの歴史や医師をめざしたきっかけからお伺いできますか?

上田宗院長 中津クリニック1

当院は、入院施設もある病院として1965年に開業したのが始まりです。父は外科医でしたが、外傷など外科的な病気はもとより風邪や腹痛などさまざまな病気を診ていて、夜中でも往診に飛び出していくこともありました。警察医として検死に行くことも多かったですね。来られる患者さんを拒まず、休みや昼夜を問わずに呼ばれたら駆けつける医師でした。私自身は子ども好きなこともあり、高校で進路を決める際に幼稚園教諭や保育士といった仕事と医師とで迷うこともあったのですが、ある先生から「お父さんが築いた土台があるなら、それを土台にしてジャンプしたほうが高く跳べるのでは」と助言をいただいたのです。そんなアドバイスもあって医師をめざす決心がつきました。

院長になるまでの経緯についてもお聞かせください。

私が進んだ大学では早くから総合的な診療に取り組んでいました。臓器や病気ごとではなく患者さんを多角的に診ることが特徴で、どの科を受診していいかわからない方や、複数の科をまたぐ病気の患者さんに対応していました。幅広い病気の診断や診療ができるように鍛えられましたね。医師になった時に考えたのは、小さい頃からお世話になった中津川の方々に恩返ししたいということです。また、患者さんが人生の最期を迎える時に周囲に感謝できる時間を持てるようにしたい、そのために認知症を減らせたらという思いもありました。そこで名古屋大学大学院の老年科で、認知症や、寝たきりの一因となる糖尿病や肥満症を研究していたのですが、父が体調を崩したため1999年にこちらに戻ってきた次第です。

こちらではどんな治療に力を入れているのですか?

上田宗院長 中津クリニック2

透析になる人を減らすことを念頭に、糖尿病の重症化予防と、CKDと呼ばれる慢性腎臓病対策に取り組んでいます。特に、糖尿病は血管がぼろぼろになりやすく、脳梗塞、心筋梗塞といった動脈硬化や血管障害で起こる病気のリスクが高まります。もちろん糖尿病から透析にならないようにめざすことも重要です。合併症が出ないように病気とうまく付き合うことが大切で、それには生活習慣や体重の改善が鍵となります。そこで当院では管理栄養士がカウンセリングや栄養指導を担い、カロリーを抑えつつバランスの良い食事や、食べる順番などを丁寧に指導しています。糖尿病になるのは体質の問題という側面があり、必ずしもご本人が悪いわけではありません。本来は食べられる太れるというのは素晴らしいことです。でも患者さんには元気で長生きしてもらいたいので、できないことを責めたり管理したりするのではなく、支援する姿勢で見守りたいと思っています。

糖尿病や腎臓病から透析に移行しないように注力

糖尿病に加えて、腎臓病の治療にも注力されているのですね。

上田宗院長 中津クリニック3

そうなんです。糖尿病とCKDを一緒に対応していくというのは岐阜県の方針でもあります。私自身、中津川市民病院で研修医をしていた時、ご指導いただいた先生が腎臓の専門だったこともあり、腎臓病については強い思い入れがあるんです。透析治療を受ける方の4割が糖尿病といわれますが、それは糖尿病の合併症として腎機能が低下してしまうからです。腎臓には糖尿病以外にも血圧、塩分、体重が影響しますので、定期的に患者さんの数値を診ていくとともに、腎臓専門の先生とも連携して必要に応じてご紹介することもありますね。とりわけ塩分の取りすぎは高血圧症にもつながり、脳の血管や心臓に負担がかかるため、糖尿病と同様に管理栄養士が減塩の市販品のアドバイスをしたり、減塩に関する資料をお渡ししたりして、無理のない指導で改善をめざします。

透析への移行を防ぐ活動についても教えてください。

県では新たに透析になる人を、2028年までに年間500人以下にする目標を掲げています。恵那・中津川地域においては年間30人を切れたらと思っており、そのための対策には一番力を入れています。以前から「地域の糖尿病治療のレベルを上げたい」という思いがあり、中津川市民病院の勤務医時代に糖尿病教室を立ち上げたり、当院の開業直後からは地域の医療スタッフ向けの勉強会を始めたりしてきました。現在は恵那医師会の理事として、他の先生や県と一緒に、透析になる患者さんを減らそうと頑張って取り組んでいます。

他にもさまざまな取り組みをされていると伺いました。

上田宗院長 中津クリニック4

医師会では糖尿病手帳のさらなる活用や、糖尿病性腎症発見のために患者さんがアルブミン尿検査を受けられるような取り組みを進めています。県が作ってくれた、「GFR値」という腎臓の機能の数値をレベルごとに色分けしたゾウさんのシールも普及させたいですね。自分の腎臓の状態を把握できますし、お薬手帳に貼れば薬剤師さんが処方の際に役立てられるでしょう。糖尿病や腎臓病に気づいて改善するには、特定健診が大きなチャンスですが、残念ながら中津川市の受診率は高くありません。特定健診は行政にデータが蓄積されていきますし、地域の病気の傾向を把握することにもつながります。私は行政の対策メンバーでもありますので、保健師さんとも協力しながら受診率を上げるとともに、下呂や高山のように中津川市を減塩優良エリアにしたいとも思っています。

地域の人と手を携え、健康で安心して暮らせる町に

先生は在宅医療にも対応されているそうですね。

上田宗院長 中津クリニック5

はい。最初にお話ししたように、患者さんが最期に人生を振り返り、周囲に感謝できる時間を持てるように支えたいというのが当初からの思いです。長年診てきた患者さんに「最期まで診ますからね」と約束しているので、その責任を果たしていきたいですね。在宅医療は生活の中に入るので患者さんの全体像が見えてくるんです。病気はその方の一面に過ぎず、病気治療のためだけに生きているわけでないと気づかされますし、その感覚を大事にして、一人ひとりの生き方を尊重したいと思っています。

普段、先生やスタッフの皆さんが心がけていることはどんなことですか?

全員で気をつけているのは患者さんの反応を見て動くことです。自分本位の一生懸命にならないように、患者さんの表情を確かめながら行動しようと話しています。糖尿病や高血圧症の治療は続けていただくことが大切なので、声のかけ方一つから意識して、当院に「来て良かった」と感じてもらえたらなと思っているんです。またスタッフには、患者さん目線でどんな情報が欲しいか考えて資料を作ったり、糖尿病の療養に関する専門知識を勉強したりといったことにも努めてもらっています。知識をアップデートしながら、毎回の診療ごとに患者さんご自身で新しい気づきを得られるような工夫を重ねています。さらに地域の医療スタッフや行政も交えた症例検討会を開くなど、地域全体で医療レベルを上げるための活動も継続していることですね。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

上田宗院長 中津クリニック6

この地域には、小さい頃お世話になった方や親しくしている町内会の方など、たくさんの知り合いが住んでいます。いつまでも住みやすく、健康で安心して暮らせる町にしたいというのが私の願いです。そのためには糖尿病や高血圧症など生活習慣病の予防が重要ですから、医療の向上や啓発活動を進めていきます。病気になっても重症化を防げれば、透析になることを遅らせるだけでなく、その間に画期的な治療法が出てくるかもしれません。ただ、一人で何でもできるわけではないので、父が近隣の病院や開業医の方々、保健師さん、介護従事者の方たちとの連携を大事にしてきたように、私もそうした方々との信頼関係を大事にして、ともに歩いていけたらと考えています。患者さんにとって隣のお兄ちゃんのような医師でいたいと思っていますので、ぜひ何でもご相談ください。

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