阿知波 洋一郎 院長の独自取材記事
ハートクリニック阿知波医院
(関市/関駅)
最終更新日:2026/03/05
越前美濃街道沿いの静かな住宅街に立つ「阿知波医院」は、1934年に名古屋市に開業して以来3代にわたり、その歴史を紡いできた。2015年に継承した3代目・阿知波洋一郎院長は、「岐阜市民病院」で20年以上にわたり数多の心臓カテーテル検査・治療に携わってきた循環器内科のスペシャリスト。「この人の今後の医療に対する関わり方が自分の診察で決まると思って患者さんに向き合うんだよ」と若い医師への指導の際に語っていたと、朗らかな笑顔で振り返る。そんな一人ひとりのニーズをくみ取ることを何より大切にし、地域医療への思いと専門性を併せ持つ阿知波院長に、同院での取り組みや診療への姿勢などを尋ねた。
(取材日2026年1月28日)
約90年の歴史ある医院で循環器の専門家が診療
まずはクリニックの歴史についてお聞かせください。

当院は祖父が1934年に名古屋市で開業したのが始まりで、移転をしながら3代で約90年の歴史を歩んできました。戦時中に祖父は軍医として出征し、家族は疎開していたのですが、終戦後に名古屋が焼け野原となったこともあり、1945に関市伊勢町で改めて開業。その後、父が1974年に現在地へ移転開業し、私が2015年に継承したという流れになります。継承の際には院内を全面リニューアルしましたが、外観はあえて50年前の建物をそのまま残しています。今のはやりのデザインとはまったく違うと思いますが、この地域に根差してきた歴史を感じていただけるのではないかと、内装だけを一新し、明るい院内に仕上げています。
これまでのご経歴を教えていただけますか?
「岐阜市民病院」で20年以上にわたり神経内科や腎臓内科など、一般内科疾患の治療と並行して循環器内科の専門医療に従事し、数えきれないほどの心臓カテーテル検査・治療に携わってきました。私が医師になった頃はちょうどカテーテル治療が台頭してきた時代で、一番注目を集めていた分野でしたね。また、もともと「医療は救急だ」という思いを強く持っていて、今すぐ何とかしなければならない患者さんを助けたいという気持ちがありました。循環器内科は命に直結する疾患を扱いますから、その点で自分のやりたかったことと合致したんです。「岐阜市民病院」では地域連携部の副部長も務めていましたので、開業医の先生方との関係づくりや、地域医療の仕組みについても理解を深める機会に恵まれました。
クリニックを継承されるまでの経緯をお聞かせください。

実を言いますと、ずっと「岐阜市民病院」に残って循環器内科のスペシャリストとして実績を積んでいこうという考えもありました。ただ、父が体調を崩した時期があり、それを機に「やはり帰るべきではないか」と。迷いはゼロではありませんでしたが、祖父や父が地域の開業医として患者さんと向き合ってきた姿を子どもの頃から見ていましたので、今度は自分が地域医療を担おうと決意しました。大きな病院で勤務しているだけでは気づきづらい、開業医側の気持ちや地域医療の大切さは、家族の姿を通してもともと理解していたつもりです。継承してからは、大規模病院で培った専門性と、祖父・父から受け継いだ地域密着の視点、その両方を生かした診療を心がけています。
患者のニーズを重要視し、医療への信頼を築く
どのような患者さんが来院されることが多いですか?

開業当初は父の代からのさまざまな科の患者さんがいらっしゃいましたが、気づいたら初診の患者さんは心臓に関連した方がほとんどになりました。「ハートクリニック」であることをアピールしたことで、心臓の専門家がいるとわかりやすくなったのかもしれません。また高血圧・糖尿病・コレステロールといった生活習慣病の方、そしてこれらによる動脈硬化疾患、つまり心筋梗塞や脳梗塞の予防を求める方が多いですね。加齢によって誰でもなり得るこうした疾患は、実はすべて循環器の医師がフォローできる分野です。健診で何らかの異常を指摘されて来院される方も多く、早い段階からかかりつけ医として関われることは、予防医療の観点からもありがたいことだと感じています。
診療において心がけていることをお聞かせください。
一番大切にしているのは、患者さんが何を求めて来院されたのかをくみ取ることです。大きな病院であれば「治してほしい」という目的で来られる方がほとんどですが、クリニックではそうとは限りません。今後のことを知りたい方もいれば、取りあえず薬だけ欲しいという方もいらっしゃいます。ニーズを理解しないまま一方的に診療を進めても、患者さんの本当の気持ちには応えられません。「岐阜市民病院」で若い医師を指導していた頃、よく言っていた言葉があります。「この人の今後の医療との関わり方が自分の診察で決まると思って患者さんに向き合うんだよ」と。最初の対応次第で、その方の医療に対する価値観が決まってしまうこともあるんです。その覚悟を持って、今も一人ひとりの患者さんに向き合っています。
患者さんへの説明で工夫されている点はありますか?

高血圧・心臓病・腎臓病など、疾患ごとにシンプルな図や表を使った資料を自分で作成しています。私たち医師が話していることの多くは、患者さんにそのまますべて伝わることはなかなかありません。それは決して患者さんの責任ではなく、そういうものなのです。だからこそ、長くなってしまうこともある待ち時間を有効に使っていただくために、まず受付や看護師が事前に症状を伺い、その症状に合わせて「心臓のことでお越しならこれをご覧くださいね」と資料をお渡ししています。そうして患者さんの理解が深まれば、診察で私の説明もスムーズになる。患者さんから質問もしやすくなるかもしれない。スタッフたちは皆トレーニングされていますから、受付から看護師へ、そして私へとしっかりと情報が引き継がれます。
健康寿命を延ばすために、かかりつけ医を持ってほしい
地域の医療機関との連携についてはいかがでしょうか?

この地域の特徴として、開業医同士の紹介が非常に多いですね。地域によっては「開業医同士で紹介し合うことはあまりない」という話も聞いたことがありますが、この辺りでは当たり前のように行われています。心電図異常があるからと他の開業医の先生から紹介されることもありますし、逆に消化器や耳鼻咽喉科の症状であれば私からその専門の先生をご紹介します。患者さんにとっても、すぐに大きな病院へ行くのは負担になりますから、まずは地域のクリニックで専門的に診てもらい、必要があれば基幹病院へつなぐという流れができているのは良いことだと思います。専門性を生かして完結できる内容は当院で完結し、難しいケースは患者さんのご意向も踏まえてご紹介しますので、どうぞご安心ください。
診療以外にもさまざまな活動をされていると伺いました。
現在は武儀医師会の理事として、地域医療に関わる多種多様な仕事を担っています。地域には誰かが担うべき医療というものがあり、行政の方々が住民の健康を守るために誠心誠意尽力されているのを見ると、私たち医師もお手伝いしなければという思いになりますね。また、子どもの頃からサッカーをやっていた縁もあり、スポーツ医学も専門的に学んでいます。スポーツ医学というと整形外科のイメージが強いと思いますが、循環器内科は心臓突然死の予防などスポーツとも関連が深いです。何より地域に貢献したいという思いが強いですね。
最後に、読者へメッセージをお願いいたします。

高血圧・糖尿病・コレステロールといった動脈硬化の原因となる病気は、年齢とともに全員が等しく向き合わなければならないものです。がんに対するような恐怖心を持たれることは少ないかもしれませんが、放っておくと心筋梗塞や脳梗塞、やがては認知症にもつながっていきます。ただ、これらは予防が可能な病気でもあるんです。だからこそ、かかりつけ医を持って、日頃から自分の体をメンテナンスしていただきたいと思います。毎日お化粧をしながら肌の調子を気にするように、体の内側も定期的にチェックし、元気な80歳、90歳をめざして、健康寿命を延ばすことを意識していただければうれしいですね。「病気と付き合っていく」という前向きな気持ちで、ぜひご相談ください。

