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半田 喜久美 院長の独自取材記事

多治見眼科院

(多治見市/多治見駅)

最終更新日:2021/10/12

半田喜久美院長 多治見眼科院 main

「この病気になぜなったのか」をともに考えてくれるのが養老町出身の「多治見眼科院」院長、半田喜久美先生だ。50歳の誕生日に漢方を学び始め、現在は西洋医学と漢方を併用した治療を実施。日頃の目の不調や病気の治療に、薬の処方だけでなく食生活や冷え、気持ちの持ち方や目の使い方など、生活においてのアドバイスを行う。同じ白内障でも、患者によって治療法やアドバイスは異なっており、一人ひとりの目だけでなく全身まで考慮。暖炉の存在や木のぬくもりが印象的な院内は、化学物質、シックハウス症候群対策にこだわっており、暖炉の煙突から空気が抜けることで換気の役割も果たしている。食におけるポイントや、目を使いすぎないことの大切さ、漢方に出会ったきっかけなど、じっくり聞いた。

(更新日2021年3月1日)

原因がわからない目の不調に漢方で対応

患者さんはどのような悩みで来られますか?

半田喜久美院長 多治見眼科院1

不定愁訴の方が多いですね。「はっきりとした病気ではないのに、自分としてはつらくて困っている」と訴えて来られる方々です。例えば白内障の手術後で、経過は良いのに何かがおかしい……など。診察してみると、全身のアンバランスを背景に、患者さん自身が気を病むことによるストレスが症状を悪化させていました。当院で対応するのは、目だけでなく体全体を整えること。目の治療ももちろん行いますが、冷えや食生活の改善、及び必要に応じた漢方薬の処方で、全身を管理していきます。患者さんによっては、目の治療は自宅近くの眼科で受けて、当院では全身を診るという方もおられます。結膜炎やまぶたの腫れなど普通の目の病気でいらした方でも、なぜそうなったかをともに考えます。

全身を診るとはどういうことでしょうか?

漢方では「気血水(き・けつ・すい)」といって、自律神経やストレスの状態はどうかの「気」、血液や体液が体の中をうまく巡っているかの「血、水」を診ます。目にも血液が流れていますし、目の中へは血液の血漿成分が流れ込んで、栄養を補っています。それが「水」です。ですから、冷えやストレスから血流が滞ったり、食生活が乱れて血液内の栄養素などが適切でなくなると、目に悪影響が出ます。また、目の中に水が多いと眼圧が高くなって、緑内障が引き起こされますから、体液やその背景の血流をゆったりと巡らせておくことが大事です。目は部品ではなく、体の一部なのです。

食生活ではどのようなことに気をつけると良いのですか?

半田喜久美院長 多治見眼科院2

甘いものや冷たいもの、とろけるものがよくないと指導しています。とろけるものとは、噛まなくていいもののこと。よく噛んで食べると唾液、胃液や腸液までしっかり出ます。消化が良くなりますし、消化液は血液から作られますから、よく噛むことで血が動いて体を巡っていくのです。それだけ目にも栄養が行きますし、老廃物もしっかり出ていきますよね。味わって感謝することも大切です。ビタミンやミネラルは目にとって大事ですし、特にビタミンCは目が体内で最も多く必要としています。目は光を受け止める臓器だからです。目が何年も透明でいられるのも奇跡ですね。それから、お勧めしたいのが、温かい飲み物。ほのかな香りを楽しみながら、「あ、おいしい」と感じると、ふっと気持ちが緩むでしょう。ストレス解消という意味でも、良いと思いますよ。便通に良い食生活も大切です。体全体が浄化されていれば目も浄化されているのですから。

これからも伝統的な漢方と最新の医学を学び続ける

目に関して他に気をつけることはありますか?

半田喜久美院長 多治見眼科院3

今の生活は、目を使うことが多過ぎます。目を休めましょう。目の神経には突起があって、その先に光を取り込むディスク状のものが積み重なっています。一つ一つのディスクにはロドプシンという物質がたくさん含まれていて、目に入る光の粒子によってロドプシンが、ひいてはディスク自体が減っていくのです。つまり、朝から光を浴びて夜を迎える頃には突起が短くなっています。そこで必要になるのが、真っ暗にして眠ること。栄養分が行き渡り、老廃物が排出されることで、夜のうちに修復されるのです。スマートフォンやパソコンを夜中まで見てはいけません。また、老廃物となったディスクを分解するのが色素上皮細胞です。そして、色素上皮細胞を元気にするためには、その裏側にある脈絡膜という血管の膜に血液がさらさらとゆったり流れていることが大事です。

目のためにできることはたくさんあるのですね。

肩の力を抜いてゆったりすること、一生懸命見ようとして目に力を入れないことも大切です。肩や目に力が入ると、脈絡膜の血管もきゅっと狭くなることが予想されます。最近では脈絡膜の研究が進んで、加齢黄斑変性症の人は脈絡膜が薄いことなど新たな知見もあります。最新の情報を勉強すると、漢方での学びとつながってきて興味深いです。なお、これまでの学びや経験を当院以外でも発揮できるよう、週に1度は兵庫県加東市にある、やすらぎの森診療所でも勤務しています。

医師として大切にされていることが多い印象です。

半田喜久美院長 多治見眼科院4

長年眼科診療を続けているうちに、目を治療するだけではなく全身を整える必要があることがわかってきました。目のことでいらした方にいろいろお尋ねするとめまいや便秘などさまざまな症状を抱えておられ、漢方を勉強するまでは対応できませんでした。また、コンタクトレンズ会社の代表取締役も勤めていますが、遠くが見やすいだけでなく、近い距離にあるスマートフォンやパソコンを見るのに無理をしないレンズの調整や処方を心がけています。目を守りながら快適にコンタクトレンズを使っていただきたいですね。

白内障は人生の年輪。緑内障は人生の傷

白内障、緑内障についての考えをお聞かせください。

半田喜久美院長 多治見眼科院5

レンズの役割をする水晶体は胎児の時にできはじめ、成長期までだんだん大きくなっていきます。以降も細胞は増えていくのですが、大きさは変わらないので次第に固くなり、透明度が低下して老眼にもなりますが、その過程で細胞が濁って増殖すると白内障が出てきます。年を重ねた歴史が表れる「年輪」なのです。皮膚の場合は、細胞増殖の新陳代謝で最終的には垢となって体から出ていきますが、水晶体は、生まれる前からの細胞がずっと内部に閉じ込められている。すごいことですよね。その分、生活習慣の影響が蓄積していきますから、漢方の視点から考えれば、早食いや甘いものの取り過ぎ、および血流に気をつけてほしいと思うのです。また、緑内障は人生の細かい傷の積み重ね、あるいは大きな傷の後遺症と捉えています。

先生は、いつ頃から漢方を取り入れ始めたのですか? ご経歴も教えてください。

1973年に名古屋市立大学医学部を出た後、大学での研修後市民病院に勤め、結婚後は義母の眼科医院を手伝いました。夫や義母の亡き後、1982年に眼科医院を引き継ぎ、その後1990年に今の場所に移りました。漢方を扱うようになったのは、それより後のこと。次第に、この治療だけでいいのかなと思うことが出てきたのがきっかけです。例えば、充血しているけれど、結膜炎ではない。目薬でいったん良くなってもまた充血を繰り返す患者さんなどです。詳しくたずねると、ほてりや冷え、めまい、便秘などいろんな症状がある……。何か違うな、と思って漢方を勉強し始めました。基礎医学の勉強にも立ち返りつつ、漢方を学んだことで体全体が見えてきました。

最後に、読者に伝えたいことを教えてください。

半田喜久美院長 多治見眼科院6

目は部品ではないということです。そして、心の窓でもあります。体の一部だから、体調そのものに影響を受けます。全身の血の巡り、水の巡り、そして気の巡りが目の症状として現れます。目が病気になったら、目だけを治療するのではなく、冷えや食生活に気をつけるなど全身を整えていくことが目にとっても大切なのです。壊れたら治すの繰り返しではなく、病気をきっかけに全身の健康を底上げしておくと、目の状態が長期的に変わります。結果的に、医療費削減にもつながるのです。そして目を使い過ぎないこと。使えば使うだけ視神経が減るし、頑張って焦点を合わせようとすると、目の凝りになって血流も滞ってしまいますからね。目はゆったりとして潤わせていきましょう。

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