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篠田 紳司 院長の独自取材記事

あじろ診療所

(岐阜市/岐阜駅)

最終更新日:2022/03/30

篠田紳司院長 あじろ診療所 main

JR岐阜駅から車で北に30分程度、岐阜市北西部の緑豊かな場所に位置している「あじろ診療所」。発達障害の診療をメインに、リハビリテーションを行う施設を備えた診療所だ。院長の篠田紳司先生は、日本小児科学会小児科専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医の資格を持ち、郡上市民病院では一般小児科の診療、食物アレルギーの治療に注力し、副院長を務めた経歴も持つ。その実績を生かし2020年より同診療所での勤務を開始し、2021年4月には院長に就任。日々の診療では、一人ひとりの患者や家族の声に耳を傾けることを大切にしているという。そんな篠田先生に、これまでの経験や同診療所の概要、今後の展望などを聞いた。

(取材日2022年2月16日)

一人ひとりの患者に合わせた施設で、多職種で支える

発達障害の診察に力を入れていると伺いました。診療所の特徴を教えてください。

篠田紳司院長 あじろ診療所1

患者さんの年齢層は3歳頃から小学生の層が最も多く、中学生や高校生もいらっしゃいます。岐阜市内だけではなく、大垣市や美濃加茂市など近隣市町から通われている方もいます。受診のきっかけとしては、3歳児健診で発達の遅れを指摘された、園や学校で周りのお子さんとのトラブルが起きて発達障害を疑った、などのケースが多いですね。また、近隣の小児科や療育を行う施設からの紹介で来られるケースもあります。こちらでは、理学、作業、言語、心理療法の専門スタッフがいるリハビリテーションの施設が併設されています。一人ひとりの発達特性に合わせたメニューを組み立てて、リハビリを行っています。

診察や治療はどのように行われますか。

初診では、現在の状態を記入した書類をお持ちいただくことが多いので、そちらを確認しながら30分ほど時間をかけてお話を伺い、大まかな見立てをします。初回の見立てをより確実にするために再診にお越しいただいたり、発達検査を受けていただいたりしながら診断をしていきます。それと同時に、必要に応じて作業療法や言語療法など、その方に合ったリハビリを受けていただくという流れです。対外的には、環境調整といってそのお子さんの特性を周りに理解してもらうように働きかけることも重要です。周りの人からすると、一見特異な行動だったとしても、それを悪意があってしているのではないと周知していくことで理解を深めてもらうアプローチです。そしてさらに次の段階では、投薬による治療へと進むこともあります。

リハビリテーションではどんなことを行うのですか。

篠田紳司院長 あじろ診療所2

理学療法は歩行訓練や姿勢を保ったり、バランスを取ったりする粗大運動に課題がある場合に改善を図っていきます。一方で作業療法では箸を使った作業や字を書くといった微細運動の訓練を行います。言語療法については発音が不明瞭な方や吃音のある方を対象としています。心理療法では、知能検査や発達検査を行い、その結果を踏まえてカウンセリングも行っています。それぞれの分野ごとに専門スタッフがおり、部屋も分けて実施しています。リハビリテーションを行う頻度は個人差がありますが、週に1度から月に1度くらいの方が多いですね。現在、1日50人ほどの方がリハビリテーションに通われています。

食物アレルギーにも精通する小児科のベテランドクター

先生の経歴について教えていただけますか。

篠田紳司院長 あじろ診療所3

佐賀医科大学(現・佐賀大学医学部)を卒業後、岐阜大学医学部附属病院小児科で臨床と研究を行ったのち、新城市民病院で9年間勤務をして、その後、関連病院である郡上市民病院へ移りました。当時、郡上で小児科医は私1人でしたので、小児科の医師としてさまざまな症例の患者さんの治療に従事してきました。また、私のサブスペシャリティーは食物アレルギーでしたので、食物経口負荷試験など食物アレルギーの検査や治療も数多く行ってきました。郡上市民病院で25年勤めた後、2020年から当診療所での勤務を開始し、2021年4月に前院長より院長職を継承しました。

普段の診療で心がけていることはありますか。

診察中にお話を聞いていると、つい自分の意見を言いたくなることもありますが、こちらの価値観を押しつけることはせず、まずは親御さんの話をじっくり聞くことを心がけています。一見、落ち着いた様子で来院されたお母さんも、いざ診察室でお話を伺うと思わず涙を流されることもあります。不安な気持ちを抱えて日々の子育てを頑張っていらっしゃるわけですから、まずはその気持ちを受け止めることが大切だと考えています。そして診察のとき、お母さん方に申し上げていることですが、お子さんの現状だけを見て不安を募らせることなく、これから成長し、発達をしていく、ということを心にとどめておいていただきたいですね。

お子さんに対して接する上での心がけはありますか。

篠田紳司院長 あじろ診療所4

初診の段階では初対面ですので、当然お子さんは身構えますし、最初からあれこれ聞き出すことは難しいんですね。ですので、一般診療と同じように「もしもししようね」という感じで、聴診器を胸に当てたりして、どんな反応が返ってくるかをまずは見させてもらいます。初回は大人しいお子さんも、2回、3回と会う回数を重ねるごとに活発になり、その子の素の部分が見えてくることもあるので、その場合は、初診での見立てを修正するんです。何度か会ってこの場所や私に慣れていただく、ということがより正確な診断につながると思っています。

これまでに患者さんとの印象深い出来事があれば教えてください。

小児科の医師としてのこれまでを振り返ると、闘病の末、亡くなられた患者さんの顔が今でも浮かびます。一方で、小さかった患者さんが成長して家庭を持ち、自分のお子さんを連れて受診してくれたときは、うれしいですね。以前、勤務していた病院では4歳くらいの女の子が私に好意を持ってくれたこともありました(笑)。お母さんの話では、私の診察の日には、その女の子はおしゃれをして出かけようとしていたらしいです。また別の男の子には、診察室に入ってきて一言、とあるお笑い芸人に似ている、と言われたことも。いろいろなシーンが思い出されます。

発達障害の治療に加えて、予防にも力を入れていきたい

先生が医師を志したきっかけについてお聞かせください。

篠田紳司院長 あじろ診療所5

父は岐阜で酒屋を営んでいました。毎日忙しく働く姿を見ていて、私には務まりそうもないと思い、家業を継ぐのは気が進みませんでした。母は結婚当初まで岐阜市民病院で看護師として働いていたようですが、医師になることを勧められたことはなかったですね。私は海が好きなので、航海士に憧れたり、学校の先生になりたいと思ったりもしましたが、最終的には医師になることを決めました。医師という仕事は毎日違う患者さんと接する仕事ですので、その緊張感にも魅力を感じていました。小児科を選んだのは、もともと子どもが好きだったからです。私自身、成人した娘が2人います。小児科の患者さんを見ていると、小さい頃の娘たちの姿を思い出すこともあります。

お休みの日にはどのように過ごされていますか。

診療時間内では片づかなかった書類を家に持ち帰って事務仕事をすることもありますし、好きなお酒を飲んでゆっくりと過ごすこともあります。趣味の魚釣りでは、琵琶湖まで足を延ばして小アユを釣ることも。家に持ち帰り、煮つけにしたり、干物にしたりしていますよ。

子どものことで悩まれている親御さんにメッセージはありますか?

篠田紳司院長 あじろ診療所6

最近の傾向として、グレーゾーン、つまり定型発達でも発達障害でもない「発達障害の傾向があるお子さん」が増えています。本人も家族もどこかに違和感を覚えたり、つらさを感じたりしているケースが見受けられます。具体的には、かんしゃくを起こしやすいだとか、園や学校で先生の指示どおり動けない、といったことです。早期の段階で介入し、治療につなげていくことで、患者さん本人やご家族の負担が少しで軽くなるようなお手伝いをしていきたいと考えています。「発達のことを相談してみたい」といった気軽な気持ちで当診療所へ足を運んでいただけたらと思います。

今後の展望についてお聞かせください。

最近は低出生体重児が増加傾向にあると言われています。その原因として考えられるのは、出産年齢が高齢化していることや、妊娠中の女性が本来必要とする体重より痩せがちであることが挙げられます。小さく生まれた赤ちゃんは、発達障害になる可能性が高い傾向があると言われています。今後は、病院のNICUを退院した後に、当診療所のようなクリニックへそのまま相談に来られるようなシステムづくりや連携体制を築いていけたら、と考えています。

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