鴇田 尚樹 院長の独自取材記事
鴇田医院
(座間市/小田急相模原駅)
最終更新日:2025/06/10

神奈川県座間市相模が丘エリアの閑静な住宅街で、内科・小児科のかかりつけ医として診療を続けている「鴇田医院」。鴇田尚樹院長は一人ひとりに合わせた丁寧な説明により患者の不安を取り除くことに努め、地域住民に寄り添った診療を提供する。10年前にリニューアルした院内は、フローリングやドアが木製で、落ち着きのある雰囲気。温かい接遇で迎えるベテランスタッフも同院の強みだといい、小さな子どもから高齢者まで誰もが安心して通える医院をめざす。「地域の方に、気軽に足を運んでもらえる場所でありたい」と話す鴇田院長に、診療方針や今後の展望について聞いた。
(取材日2025年5月28日)
ぬくもりを大切に、安心して受診できる体制の整備を
10年前にリニューアルされたのですね。

4月でちょうど10年です。ここは駅から近いわけではない住宅街にありますので、近隣に住まわれていて、徒歩で来られる方がほとんど。ですので、入り口にはスロープを作り、車いす利用者や、ベビーカーを押していらっしゃる方、手押し車を使われるご高齢の方でも来院しやすいようにしました。北欧の国にならって気密性を高く保つよう分厚い木材を使用し、床も2〜3メートル掘り下げてコンクリートを詰めているので、院内はとても暖かいんです。断熱材もたくさん入れているので、冬の寒さの厳しい時でも、暖かいと言われますね。ドアや床に木材を使うことで気分も落ち着きやすいのか、患者さんにもリラックスしてお待ちいただけているように感じています。
最近はどのような診療を行っていますか。
大きな変化は、新型コロナウイルス感染症が流行した時から感染症の外来を始めたことですね。受診前の3日間以内に37.5度以上の発熱がある方は、事前に電話でご予約いただきます。診察室が2部屋あるので、1つを感染症の患者さん専用にしています。発熱されている方は、受付、診察、会計もすべてその部屋で行うので、他の患者さんとの接触を少なくすることができるんです。これによって、他の病気で来院される方たちの安心につながるかなと思っています。もし、ご家族全員が発熱している場合は、全員同じ時間に来ていただいて、感染が広がらないようにするなどの対応をします。前日に予約されても来院前に回復されることがあるので、電話予約は当日のみ受けつけています。
医療機器に関してこだわりはありますか。

循環器科内科が専門ですので、循環器に関わる医療機器を入れたいと思い、12〜3年前から心臓のエコーと動脈硬化を調べる機器を導入しています。心臓のエコーでは、心臓の動きをダイレクトに見ることができます。われわれ医師は、心臓の左心室の動きを把握したいんですね。左心室は大動脈につながっており、最終的に体へ血液を送り出しているので、左心室がきちんと動いていることがとても重要なのです。また、血液の逆流や狭窄がないかも、エコーを見ればよくわかります。動脈硬化は、両手両足の血圧を同時に取り、血管の脈波を測ることで調べます。波線が急であれば血管はやわらかくてなめらか、逆に平らな場合は硬くなっていると推測できるのです。血管の模型を実際に触ってもらい、自分の血管がどのような状態かを説明してご理解いただくようにしています。
スタッフの皆さんについても教えてください。
受付2人、看護師4人の体制で、一番長い人は10年以上勤めてくれています。総合病院勤務を経験し、急変時の対応ができるベテラン看護師もいて、助かっています。ご高齢の患者さんなどに対し、素早く察する力も持っているので頼もしいですね。私のほうから細かく指示することはほとんどなく、新しいスタッフも上を見て自然と育つような環境です。長く勤め続けてもらうことが患者さんにとっても心強いと思いますので、それぞれの家庭の事情も鑑みながら、無理のない勤務体制にすることを心がけています。
少しの不調も気軽に相談できる、通いやすい医院に
どのような患者さんが多いですか。

咳や鼻水、発熱といった風邪症状の方が多いです。父の代から長く通われている患者さんも多くいらっしゃいます。少しでも不調を感じたら当院に足を運んでいただけているのだと思います。専門的な治療などが必要な場合は、適した医療機関を紹介させていただきます。最近は、小児の患者さんが半数を占めています。座間市全体では子どもの数自体は減少していると思うのですが、このエリアでは小児科を標榜している医院が少ないようで。私は小児科専門の医師ではありませんが、クチコミで広がっているのかもしれません。お子さんの体調が悪い中、長時間待たせるのはかわいそうなので、なるべくお待たせしないように心がけていますね。
待ち時間短縮のために行っていることを教えてください。
小さなことですが、事務的なことは早く済ますようにしています。例えば、メインで診察を行う第1診察室と受付を直結するような動線にしています。これによって、時間短縮につながりました。診察室と受付が離れていると、スタッフが私に何か聞きたいことがあっても、メモでのやりとりになってしまいますし、受付で患者さんが医師に聞きたいことがあるといった場合にも、対応しにくいのです。健康診断を行う際も、検査項目をスムーズに受けられるようこちらも動線に配慮してご案内しています。
生活習慣病の診療にも注力されているそうですね。

はい。生活習慣病は、生活の見直しだけでも改善へつなげることができます。気をつけてもらいたいのは、肥満と運動不足。食事の指導を希望される方には、相模原病院をご紹介しています。運動は何もしていない人なら、週3回以上早歩きで1回30分以上のウォーキングが推奨です。ちなみに私は、毎日フィットネスバイク20分かジョギング30分、月1回は登山に出かけています。ジョギングは無料でできますし、気分転換にもお勧めですよ。また、健康診断を定期的に受けることも大切。そこでがんなどの大病が見つかることもあります。ここでは大きな病気の治療まではできない場合が多いですが、早期発見の手助けができればと思っています。
不安払拭も医師の仕事。信頼の診療を後世につなげたい
患者さんへの対応で大切にしていることは?

当院にいらっしゃる患者さんは、比較的軽症の方が多いのですが、何かしら不安を抱えて来院されます。ですので、丁寧に説明することを心がけています。例えば、「胸が痛い」と訴えていた患者さんがいたとしたら、「胸が痛くなる病気は、AとBとCがあります。検査結果から、Aの症状ではありません。可能性としてはBかCですね」などと説明を行います。患者さんの病状に合わせた対応をすることも大切ですが、不安を取り除くことも医師の仕事だと思っています。ですから、風邪のような軽い病気であっても、患者さんがわかりやすいように、原因などをきちんと話すようにしています。
改めてご経歴を伺えますか。
北里大学医学部を卒業後、循環器科内科に入局しました。その後は、福島県会津若松市、新潟県長岡市などの病院に勤務し、大阪では大学院で研究に打ち込んでいた時期もありました。父が亡くなり、2011年に当院を継ぐことになりましたが、それまでの経験が今の診療にも生かされていると感じています。先ほどお話ししたことに通じますが、患者さんと対話をして、顔色を見て重症度を見るというスタイルは、経験をしながら確立していきました。例えば、心筋梗塞は胸が痛くなるといわれますが、中には「食欲がない」と受診し、顔色が良くないことから血圧や心拍数を測ってみたら数値も良くなく、結果的に心筋梗塞だったというケースもあるのです。これはただ症状を聞いただけではわからないという例だと思います。なので、対面して診療することがとても大切。どんな足取りで来たのかも病状を知るための重要な手がかりです。
今後の展望を教えてください。

皆さんの健康寿命を可能な限り延ばしたいですね。仕事を引退されたご高齢の方なら、地域コミュニティーに参加するなど、張りのある生活を送ってもらいたいです。お子さんなら、小さなケガや病気はそこまで気にしすぎず、好きなことに邁進してもらえたら。一人で遊ぶよりは友達と遊んで、周りとのつながりも大切にしてほしいです。私自身は、後継者探しに力を入れていきたいですね。理念をともにできる医師と出会えたら、まずは2人体制で一緒に診療していきたいと、医療法人を設立し、新たな医師の入職がスムーズな体制を整えました。ここがなくなると地域の方々が困ると思うので、それは絶対に避けたいのです。