篠原 美絵 院長の独自取材記事
さつき町診療所
(海老名市/厚木駅)
最終更新日:2024/09/13
神奈川県海老名市のさつき町という地域に大規模な団地が成立したのが1974年。それとともに開業したのが「さつき町診療所」だ。50年にわたり地域に根差してきた診療所を2023年に父から継承したのが現院長の篠原美絵先生。父と同じく消化器内科を専門分野とする医師の道を歩み、大学病院で臨床経験を積んだ後、地域医療に貢献するという父の意志とともに歴史ある同診療所を引き継いだ。昔から住む高齢者に加え、海老名市の開発とともに移り住んだファミリー層も多く、幼児から90代まで幅広い年齢の人たちのかかりつけ医として頼りにされている。「私自身も育った町で恩返しの意味も込めて、地域の皆さんの健康をサポートしたい」という篠原院長に話を聞いた。
(取材日2024年8月6日)
かかりつけ医として50年の歴史ある診療所を引き継ぐ
お父さまが開業された診療所を継承されたそうですね。経緯を教えてください。
1974年頃に海老名プラーザという大きな団地ができた際、クリニック開業の募集があったことがきっかけで父がこちらに開業しました。その頃からもう50年になりますね。一時期は違う場所に移転していたのですが、今は開業当初の場所に戻っています。私は大学勤務や2年半の海外留学を経て、2010年から当診療所を週1回手伝うようになり、2020年には大学を辞めて、副院長として専念することになりました。そろそろ引き継ぎをしようかという話をしていた矢先、2023年8月の末に父が亡くなり、9月から院長を引き継いだという経緯です。私が生まれたのは五反田のほうですが、父が開業した時に3歳でこちらに引っ越してきました。それから小学校3年生までこの団地で育ったので、私にとっても非常になじみのある地域です。
引き継がれた後に改装などもされたのでしょうか。
実は、もともとお隣にはうちと同じ頃に開業された歯科医院がありました。そちらの先生もうちの父と同世代で、移転のタイミングでご相談させていただいて、2つの診療所を合わせるというようなリフォームをしました。ですから、今は開業当初のちょうど2倍くらいの広さになっています。内装は患者さんの不安を和らげるような落ち着いた雰囲気にしたかったので、白い壁に木目調で若草色のような緑色をメインカラーにしました。その際に、胃カメラや超音波などの医療機器もいくつか新しく導入しました。
先生が医師をめざされたのは、やはりお父さまの姿を見ていたからでしょうか。
そうですね。父は私が通っていた幼稚園の園医でしたので、予防接種で園に来た姿を見たり、兄弟と一緒に診療所へ遊びに行ったり、幼い頃から父の仕事を見る機会は多く、中学生になった頃には父のような医師になりたいと考えるようになりました。大学の医学部に入った頃にはここを継ごうと決めていましたので、卒業後は開業医に必要なスキルを身につけるために、たくさんの症例を経験できる病院で勉強させていただきました。父は私から見ても、とても優しい人でしたが、昔からの患者さんからもことあるごとに「先生はとても優しかった」「先生に会うとホッとした」という話を聞きます。本当に地域の皆さんに頼りにされていたんだなと改めて実感し、誇らしくもありますね。
地域の幅広い悩みに対応していく
地域のかかりつけ医ということで、診療内容も幅広いのでしょうか。
父の代から、専門は消化器内科ではありましたが、内科だけでなくお子さんの診療も行っていて、 団地に住んでいらっしゃる皆さんのかかりつけ医という役割でした。私も専門は消化器内科ですが、日本内科学会総合内科専門医の資格を持っており、小児当直のお手伝いも1年ほど担当させていただけたことから同じような形でやっています。小児科に関しては、風邪や腹痛などの急性疾患を中心に診させてもらっており、少し心配な症状や検査が必要だと判断した場合には、近隣の大きい病院に紹介します。幸いなことに、歩いて10分ぐらいのところに海老名市の基幹病院があるので、連携もしやすいですね。
それでは、患者さんの年齢層も幅広いのでしょうね。
下は3ヵ月くらいのお子さんから90代の方まで、本当に幅広い年齢層の患者さんがいらっしゃいます。父が開業した当時に子育て世代だった方が今は80歳を超えていたり、その時お子さんだった方がお母さんになっていたり、長年通い続けてくださっている患者さんも多いです。父の代からの患者さんの中には、私の小さい頃を知っている方も結構いらっしゃるんですよ。この辺りは昔は田んぼだらけでしたが、最近は開発されてマンションが立ち並び、近隣に大きなショッピングセンターもできて、だいぶ変わりましたね。ですから、小さいお子さんや若いお母さんの患者さんも増えています。
診察をする上で先生が心がけていらっしゃるのはどういったことでしょうか。
患者さんの中には、具合が悪いけれど、何科にかかったらいいかわからないというような方もいらっしゃいます。その場合は、まずは話をよく聞いて、こちらで対応できるのかどうかを判断することが大切になります。特に高齢の方は「なんとなく具合が悪い」と言って来院される方もいますからね。また、団地に昔から住んでいる方はお子さんたちが巣立って、高齢のご夫婦だけでの生活に不便が出てきたり、何かあってもどこに相談したらいいかわからなかったり、というようなことも増えているようです。ですから、体の不調で来院された方に今後ご家族のサポートが必要になるのか、地域包括支援センターなどのサポートが必要なのかといったことも考慮しなければなりません。ただ病気を診るだけではなく、患者さんのバックグラウンドも含めて、相談に乗れる存在でありたいといつも思っています。
専門分野での経験も生かしながら、健康をサポート
消化器の中でも特に肝臓がご専門だったとお聞きしました。こちらでも肝臓疾患は診ているのですか?
全体的な患者数の中の割合としてはそう多くはありませんが、ウイルス性肝炎など慢性的な肝炎の経過観察や、健康診断で肝臓の数値に異常があったなどのケースで相談のために来院される方がいらっしゃいます。健康診断で肝臓の数値に異常が出る場合はその多くが脂肪肝ですが、脂肪肝でもまれに短期間で肝硬変に進行してしまうような方もいらっしゃるため、そういったケースを早めに拾い上げることが大切です。肝臓はとても我慢強い臓器で、多少の肝障害があったとしてもなかなか症状が出ません。健康診断で引っかかって、いきなり大きい病院に行くのは気が引けるような方は、当院で超音波の検査などもできますので、放置せずに受診していただくといいかなと思います。
今後どのような診療所にしていきたいとお考えですか。
やはり父の代から来ていただいている方は大事にしたいですね。高齢になってきた方たちが、できるだけ健康を維持しながら家で生活できるようなサポートをしていきたいと思っています。また新規の患者さんとしては、お子さんがすごく増えてきているので、急な発熱など、小児科のファーストタッチの患者さんたちにきちんと対応していきたいと思っています。大学病院の消化器内科で内視鏡検査の経験を非常に多く積んできましたので、内視鏡検査にも力を入れていきたいと考えています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
地域に根づいた、誰でも気軽に相談できるような地域のかかりつけ医であることを目標に診療を行っています。ここは私自身も育った町で大好きな場所ですので、恩返しをしたいという想いもあります。どんな症状でもまずは診させていただいて、病気があればきちんと見極めて、うちでは手に余る場合は適切な病院に紹介する。そういった橋渡しをしながら、地域の方々が長く健康でいられるようにサポートしていきたいと思っています。当院は18時半まで受付をしており、最寄駅からも徒歩5分以内と近いので、仕事帰りの方も受診しやすいと思います。無料駐車場も5台分用意しておりますので、お車での来院も可能です。また発熱がある方は事前にウェブ予約や電話予約をしていただければ初診の方でも受診可能です。気になる症状がある方は気軽に受診していただければと思います。