中村 豊 院長の独自取材記事
釜萢内科小児科医院
(藤沢市/藤沢駅)
最終更新日:2021/10/12
藤沢駅北口から徒歩10分。藤沢小学校にほど近い閑静な住宅街にある「釜萢(かまやち)内科小児科医院」。地域の患者が信頼を寄せるこの医院を祖母、母から引き継いだのが中村豊院長だ。内科医師であった父の影響も受け、多くの診療科の研鑽を積み、総合的な観点から診療を行う。長年原因不明とされてつらい思いをしてきた患者の病名の特定に努めるなど、豊富な知見をもとに診断をつけていく真摯な診療スタイルが特徴だ。小児科では自らの子育て経験も生かして保護者にアドバイスを行い、通院が難しくなった高齢患者のための往診にも対応。さまざまな世代の患者に寄り添う中村院長に、診療の特徴や地域医療への思いを聞いた。
(取材日2020年11月18日)
診療科の枠組みにとらわれない、総合的な診療をめざす
まず、こちらの医院の成り立ちを教えてください。
祖母がこの地に「釜萢小児科医院」を開業したのは、50年以上前のことです。母が副院長を務め、長年地域に親しまれてきた医院を私が引き継ぐかたちで「釜萢内科小児科医院」として2002年に新たに開業しました。数年前からは私一人で診療していましたが、正式に院長に就任したのは2018年です。院長になったからといって特に変わりはないのですが、長年通ってくださっている患者さんが高齢になられて、歩いて通院するのが難しくなることが増えてきたのがずっと気がかりでしたので往診も始めました。
小児科も含め、総合的に診療できるのが強みと聞きました。
診療スタイルは内科医師の父の影響を受けています。父は高血圧症が専門でしたが、多様な診療科との連携を重視して研鑽を積み、高血圧合併症疾患などの診療に力を入れていました。私も、母校の東邦大学医学部では専門以外にも各診療科でしっかり勉強することができたので、内科というよりプライマリケア、いわゆる総合診療的に診ることが特徴です。腰痛から頭痛、高血圧、足の痛み、顎関節症まで幅広く対応しており、内科・小児科という枠にとらわれずに、どんな患者さんでも診るという昔ながらの町のかかりつけ医ですね。いろいろな病院に行っても「異常なし」と言われたけれど、どうしても納得がいかない。もう一度診てほしいと言って来院される方が多いのも特徴でしょう。口腔外科も勉強しましたので、お子さんの口の中を見て虫歯を疑い、歯科医院をご紹介することもあります。
特定健康診査への対応をはじめ、生活習慣病の診療にも力を入れているそうですね。
高血圧と動脈硬化、糖尿病については特に力を入れ、血液検査に加えて眼底鏡による検査も行います。内科で眼底まで調べることは少ないと思いますが、私は大学時代に神経内科や眼科で学んだ経験があるので、重い病気の兆候や緑内障の見逃しがないよう、しっかり検査に取り組んでいます。例えば、血圧の高い患者さんは脳出血のリスクが高いですので、眼底を診てそのような兆候を発見すれば大きな病院を紹介します。特定健診にも対応していますから、今後も精度の高い検査を心がけ、働き世代の皆さんの病気の早期発見・早期治療のお役に立ちたいと思っています。
「ネバーギブアップ」の気持ちで診療に取り組む
小児科については、どのような特徴がありますか。
小児科の当直や救急の経験もあり、「一刻を争う症状かどうか」の見極めにも自信があります。保護者の方からの電話対応も行いますし、不測の事態にも迅速かつ落ち着いて対応できるよう具体的な助言を心がけています。また、私自身も子どもの育児にはおむつ替えからミルク、幼稚園の送り迎えまで、父親としてできることは全面的に協力しました。離乳食も自分で作りましたから、お母さん方の質問にもすぐに答えられます(笑)。医師として働きながら一通りのことをやってきたので、保護者の方の忙しさや苦労が本当によくわかりますし、お子さんを怖がらせないための対応方法を見つけるなど、育児経験は私にとってもとてもプラスになりました。お父さん方にもぜひ積極的に育児に関わっていただきたいと思っています。
先生の診療方針について教えてください。
「諦めない」ことです。当院には他の医療機関で診てもらっても、なかなか良くならない、原因がわからないという患者さんが少なくありません。わざわざ私を頼ってこられた患者さんに対しては常に、「ネバーギブアップ」という気持ちで最善を尽くしたいと考えています。そもそも教科書どおりの診察で病気が判明するケースはごくわずかです。ガイドライン的には可能性が低くても、考えられるあらゆるケースを想定し、知識や経験を集中して病名を絞り込んでいくのが私の診療スタイルです。そして、かかりつけ医として地域の患者さんを治すことも大切ですが、症状からある程度病名を絞り込んで適切な専門機関に紹介することも、私の重要な役割だと思っています。
先生の立場から気になることはありますか。
新型コロナウイルス感染症流行の中で、特に小児科では受診を控える方が増えました。新型コロナウイルス感染症は、子どもの場合は感染しても軽症が多いことがわかってきていますが、反対にインフルエンザは重くなりやすく、インフルエンザ脳症や心筋炎など命に関わることも少なくありません。どんな病気も進行してからでは治療に時間がかかりますから、お子さんの体調が悪い時は早めに受診していただきたいですね。一方、お年寄りの中には、コロナ禍の影響で、当院に来る以外はどこにも外出していないという人が多いと感じています。ですから、じっくりとお話を聞いてさまざまな不安も解消して差し上げたいと考えています。当院では、発熱の患者さんには電話をしていただき、受け入れや専門機関への紹介を判断していますので、まずはご連絡いただきたいですね。
いざという時に頼りになる、町のかかりつけ医に
ところで、プライベートな時間の過ごし方を教えてください。
料理がよいリフレッシュになっていましたが、最近は、勉強会や医師会の会議で忙しく、またコロナ禍で妻が衛生面に気をつけて調理しているので遠慮しています。妻と娘はいろいろな面で私を支えてくれていますね。また救急の際は、すぐに電話をしていただけるように携帯電話番号も公開しているので、18時から22時はいつでも対応できるようにお酒も飲みません。緊急の際は遠慮なくご連絡いただければと思います。電話に出られない場合も、留守番電話にメッセージを残してもらえれば、できる限り対応させていただきます。
これからの展望について聞かせてください。
最近は、遠方からの患者さんや、当院を信頼して退院後の患者さんの逆紹介をしてくださる専門機関も増えてきました。英語診療も可能ですので、外国人の方の診療依頼もあります。一方、高齢化が進む地域の中で、長年お付き合いのある患者さんやご家族からは「最期は中村先生に看取ってほしい」と言われることが多いのです。病状が急変したり、どのような対応をすればよいかわからなかったりするときに、今まで以上に「いざと言う時に頼りになる町のかかりつけ医」になりたいと思っています。もちろん普段の診療もありますので対応は限られますが、高齢化が進む地域に、少しでもお役に立てばうれしいです。コロナ禍の影響もあり、地域医療もいろいろ変わっていくとは思いますが、私は「いかに、患者さんのお役に立てるか」という理念を大切に、当たり前の、今までどおりの診療を行い地域医療に貢献していきたいと思います。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
決して交通の便が良いとはいえない当院まで、わざわざ来てくださる患者さんには本当に感謝しかありません。私自身が患者さんの一言に救われることも少なくありません。だからこそ、来院された患者さんは責任を持って診させていただき、この町の「かかりつけ医」、なんでも見る「総合診療」を提供する医院として、これからも全力を尽くしていきたいと思います。顔なじみの患者さんはもちろん、新しい患者さんに対しても、常にかかりつけ医という思いで対応させていただくのが私のモットーです。お子さんの病気や健診、育児の悩み、働き世代の生活習慣病、高齢の方の不具合やお悩みまで、どんな些細なことも気軽に相談してください。