中村 豊 院長の独自取材記事
釜萢内科小児科医院
(藤沢市/藤沢駅)
最終更新日:2025/06/06

藤沢駅北口から徒歩10分の閑静な住宅街にある「釜萢(かまやち)内科小児科医院」は、50年以上地域から頼られ続けてきたクリニック。開設者の孫として、祖母そして母から医院を引き継いだ中村豊院長が診療を続けている。内科の医師であった父の影響も受け、多くの診療科の研鑽を積み、総合的な観点から診療を実践。長年原因不明とされてつらい思いをしてきた患者の病名の特定に努めるなど、豊富な知見をもとに診断をつけていく真摯な診療スタイルが特徴だ。小児科では自らの子育て経験も生かして保護者にアドバイスを行い、通院が難しくなった高齢患者のための往診にも対応する。さまざまな世代の患者に寄り添う中村院長に、診療の特徴や地域医療への思いを聞いた。
(取材日2025年5月19日)
総合的な診療で、半世紀にわたり地域の健康をサポート
長い歴史のある医院だと伺いました。

祖母がこの地に「釜萢小児科医院」を開業したのは、50年以上前のことです。母が副院長を務め、長年地域に親しまれてきた医院を私が引き継ぐかたちで「釜萢内科小児科医院」として2002年に新たに開業しました。正式に院長に就任したのは2018年ですが、院長になったからといって特に大きな変わりはありません。ただ、長年通ってくださっている患者さんが高齢になられて、歩いて通院するのが難しくなることが増えてきたのがずっと気がかりでしたので往診も始めました。
小児科も含め、総合的に診療できるのが強みと聞きました。
診療スタイルは内科医師の父の影響を受けています。父は高血圧症が専門でしたが、多様な診療科との連携を重視して研鑽を積み、高血圧症の合併症などの診療に力を入れていました。私も、母校の東邦大学医学部で専門以外にも各診療科でしっかり勉強することができたので、内科というよりプライマリケア、いわゆる総合診療的に診られることが特徴です。発熱や頭痛から、高血圧、腰痛、足の痛み、顎関節症まで幅広く対応しており、内科・小児科という枠にとらわれずに、どんな患者さんでも診るという昔ながらの町のかかりつけ医ですね。口腔外科も勉強しましたので、お子さんの口の中を見て虫歯を疑い、歯科医院をご紹介することもあります。「いろいろな病院に行って『異常なし』と言われたけれど、どうしても納得がいかない。もう一度診てほしい」と言って来院される方が多いのも特徴でしょう。成人と小児の受診は、ちょうど半々くらいといったところでしょうか。
生活習慣病の診療にも力を入れているそうですね。

高血圧症と動脈硬化、糖尿病については特に力を入れており、血液検査に加えて眼底鏡による検査も行います。内科で眼底まで調べることは少ないと思いますが、私は大学時代に神経内科や眼科で学んだ経験があるので、重い病気の兆候や緑内障の見逃しがないよう、しっかり検査に取り組んでいます。例えば、血圧の高い患者さんは脳出血のリスクが高いため、眼底を診てそのような兆候を発見すれば大きな病院を紹介します。特定健診にも対応しており、精度の高い検査を心がけながら、今後も働き世代の皆さんの病気の早期発見・早期治療のお役に立ちたいと思っています。
「ネバーギブアップ」の気持ちで困り事や不安に対峙
小児科については、どのような特徴がありますか?

小児科の当直や救急の経験もあり、「一刻を争う症状かどうか」の見極めにも自信があります。保護者の多くは「すぐに受診すべきか、様子を見て良いのか」の判断を求めていらっしゃいます。電話対応も行い、しっかりとお話を伺いながら医師の視点から慎重に判断を下し、不測の事態にも迅速かつ落ち着いて対応できるよう具体的な助言を心がけています。また、私自身も子どもの育児にはおむつ替えからミルク、幼稚園の送り迎えまで、父親としてできることは全面的に取り組みました。離乳食も自分で作りましたから、親御さんの質問にもすぐに答えられます(笑)。医師として働きながら一通りのことをやってきたので、保護者の忙しさや苦労が本当によくわかりますし、お子さんを怖がらせないための対応方法を見つけるなど、育児経験は私にとってもとてもプラスになりました。近年はお父さん方がお子さんをお連れになるケースも増え、うれしく思っています。
特に初めての育児では不安に思うことも多いですね。
私自身も子育てを経験したことで、育児中の親御さんが何を不安がっていて、何をしてほしいかがわかるようになりました。当院には1歳未満児の受診も多く、生後10日ほどで発熱してしまった赤ちゃんが来られることも。1ヵ月健診もまだな赤ちゃんが病気になると、どこに相談すればいいのかと困ってしまいますよね。ベッドからの転落などの事故もよくあります。私は大学病院では新生児医療にも携わってきましたから、低月齢の赤ちゃんも診療可能です。飲食できているか、呼びかけに反応するかといったポイントと、気をつけるべきサインを伝え、「大丈夫です」だけでなく「今後どうなったら受診すべきか」も含めて情報提供しています。
先生の診療方針について教えてください。

「諦めない」ことです。当院にはほかの医療機関で診てもらっても、なかなか良くならない、原因がわからないという患者さんが少なくありません。わざわざ私を頼ってこられた患者さんに対しては常に、「ネバーギブアップ」という気持ちで最善を尽くしたいと考えています。そもそも教科書どおりの診察で病気が判明するケースはごくわずかです。ガイドライン的には可能性が高くなくても、考えられるあらゆるケースを想定し、知識や経験を集中して病名を絞り込んでいくのが私の診療スタイルです。そして、かかりつけ医として地域の患者さんを治すことも大切ですが、症状からある程度病名を絞り込んで適切な専門機関に紹介することも、私の重要な役割だと思っています。
不安の多い時代だからこそ、頼られるかかりつけ医に
昨今の受診状況で気になることはありますか?

新型コロナウイルス感染症が5類に位置づけられて以降、発熱がある方が受診に困るケースが増えているようなのが気がかりです。感染症としてのリスクは変わらないのに診療報酬が大きく下がったため、リスクのある診療は避けたいというドクターが増えているのでしょう。当院では、新型コロナウイルス感染症の流行当初から、発熱患者さんを診続けてきました。家族から感染リスクを懸念されたこともありましたが、困っている方がいれば助けたい、そう思って受け入れてきました。そうした経緯から感染症予防のノウハウが蓄積できており、安心して受診していただける体制が整っています。かかりつけの方に限定せず、どなたでも診るスタンスですので、近くに診てくれるドクターが見つけられないと、遠方からお越しになる方も少なくありません。そうした方の受診も受け入れ、落ち着いたら近隣のかかりつけ医にお戻しするようにしています。
地域医療に携わる医師として、心がけなどがあればお聞かせください。
2024年1月1日に起きた能登半島の地震が記憶に新しいですが、私はそれ以前からいつ直下型地震があってもおかしくないと考えてきました。また、米国では麻疹(はしか)が流行しており、死亡例も確認されているそうです。たいへん感染力の強い病気ですので、いつ国内で流行が起きてしまうかと考えると恐ろしくなります。このように、いつ、どんなことが起きるかわからない時代ですから、何があっても対応できるようにしておくことが大切です。私も医師会を通して災害時医療の取り組みに参加しており、何かあれば近隣の病院を拠点にトリアージなどの対応にあたる準備をしています。
読者に向けて、ひと言メッセージをお願いします。

新しいマンションが増え、近隣からの受診も増えているとはいえ、決して交通の便が良いとはいえない当院まで、わざわざ来てくださる患者さんには本当に感謝するばかりです。私自身が患者さんの一言に救われることもあり、だからこそ、来院された患者さんは責任を持って診させていただきたいと思っています。この町の「かかりつけ医」、なんでも診る「総合診療」を提供する医院として、これからも全力を尽くしていきたいですね。とはいえ、決して無理をすることなく、「断らない診療」を長く続けてお困りの方をお助けしていきたいと考えています。予約なしで受診される場合、少しお待たせしてしまうこともありますが、どうぞご理解の上気軽にご相談いただければと存じます。