武 王基 院長の独自取材記事
武整形外科
(横須賀市/衣笠駅)
最終更新日:2026/05/07
京急バス竹川停留所から徒歩2分。青い看板と白い壁の平屋が目印の「武整形外科」は、先代の父が開業して以来、30年以上にわたり地域の患者の痛みに寄り添ってきたクリニックだ。2023年に継承した院長の武王基先生は、東京医科大学卒業後に救命救急や総合診療の領域でも研鑽を積んだ実力の持ち主。整形外科の枠を超えた幅広い知見を生かし、丁寧な触診で痛みの原因を見極める注射治療と迅速な手術、理学療法士によるリハビリテーションで、患者の痛みを取り除くことに全力を注ぐ。「絶対にネガティブな発言はしない」と語る真っすぐな人柄の院長のもとには県外からも患者が訪れ、休診日も遠方へ出向くなど休みなく駆け回る。その原動力と父から受け継いだ志を聞いた。
(取材日2026年4月14日)
父の志を受け継ぎ、痛みの本質を見極める
先生が医師を志されたきっかけを教えてください。

小学生の頃、整形外科の医師だった父が「患者さんに感謝されるときほどうれしいことはないんだぞ」と語ってくれたことがありました。自分の仕事をそれほど誇らしく語る姿が純粋にカッコいいなと感じ、医師を志しました。整形外科を選んだのも、父と同じ道を歩みたいという思いからです。父が約30年前に開業し、地域とともに歩んできたこのクリニックを、2023年に継承して現在に至ります。振り返ると、幼い頃から父母に一度も怒られたことがなく、家族の間にいさかいを見たこともありません。そうした穏やかな家庭の空気が、患者さん一人ひとりに温かく向き合う自分の姿勢の土台になっていると感じています。父が築いてくれた場所だからこそ、全力で頑張り続けたいと思っています。
こちらでの診療に至るまで、どのようなご経験を積まれてきましたか。
東京医科大学を卒業後、総合診療や救命救急の領域に携わり、研鑽を積みました。その経験で得た内科や救急の知識を失いたくないという思いから、整形外科医になった後も15年以上にわたり毎週、救急や内科の現場に立ち続けています。現在も葉山ハートセンターで救急医療を担当しており、整形外科の枠を超えて全身を診られることが当院の強みです。例えば、肩の痛みで来られた高齢の方の触診で血圧の左右差に気づき、大動脈解離を発見する可能性もありますし、心筋梗塞やがんが見つかるケースも考えられます。痛みの原因が整形外科的なものか、命に関わる疾患なのかを見極め、適切な治療につなげられる体制を整えています。
こちらのクリニックには、どのような患者さんが来院されていますか。

当院は開業から30年以上の歴史があり、10代から90代まで幅広い年齢の方が来院されています。近隣にお住まいの方はもちろん、東京や横浜、鎌倉、さらには埼玉や茨城など県外から足を運んでくださる方も多く、ご家族に付き添われて4時間かけてバスで通われる方もいらっしゃいます。ありがたいことに、患者さんがホームページを自ら作ってくださったり、クリニックの壁の塗装や修繕をしてくださったりと、温かなお気持ちを形にしてくださることもあります。先代である父の時代から通い続けてくださっている患者さんとの会話の中では、父にまつわる思い出話がよく出てきます。「お父さんのほうが優しかったんだよ」と笑顔で話されると、父の偉大さを改めて感じずにはいられません。
注射と迅速な手術で諦めた痛みに応えることをめざす
痛みの治療において、特に力を入れていることを教えてください。

当院が特に力を入れているのは、痛みの引き金となる「トリガーポイント」を丁寧な触診で見極め、ピンポイントで注射を施すハイドロリリースです。エックス線だけで判断するのではなく、必ず患者さんのお体に触れて痛みのある箇所をすべて探し出し、一つ残らず注射で対処することをめざしています。教科書に載っていない独自の手法も複数開発してきました。膨大な臨床経験の積み重ねを日々の診療に生かしています。
手術が必要な患者さんには、どのように対応されていますか。
葉山ハートセンターで私自身が手術を執刀しています。90代の方が骨折された場合、年齢を理由に手術を見送られるケースは少なくありません。しかし手術をすれば歩ける見込みのある方を寝たきりにしてしまうのは忍びなく、積極的にお引き受けするようにしています。そして、手術時間が短いほど体への負担が軽く、早期の回復が期待できるので、手術時間の短縮にも努めています。骨折の整復や固定にも自信があり、来院された方を機能障害なく回復に導くことをめざしています。さらに痛みのポイントをマイクロ波で焼却を図る機材も導入し、治療の選択肢を広げました。
注射のほかに、痛みの緩和のために取り組んでいることはありますか。

私が信頼を置く理学療法士によるリハビリテーションも、痛みの緩和に大きな役割を果たすと考えています。注射でトリガーポイントの痛みにアプローチした直後にリハビリテーションを行うことで、相乗的な効果が期待できます。例えば交通事故後のむちうちで何年もつらい思いをされてきた方にも、注射とリハビリテーションを組み合わせて痛みの緩和をめざしていきます。また、現代はスマートフォンやパソコンの影響で前かがみの姿勢が日常化しており、首や肩の痛みを訴える方が増えています。この先、長年の姿勢の影響による神経痛がさらに深刻化する時代が来ると考えているので、早めのケアをお勧めしたいですね。
「困ったら来てほしい」患者のために走り続ける
クリニックの休診日は、どのように過ごされていますか。

休診日も休んではいません。以前勤務していた福島労災病院で担当した患者さんが今も多くいらっしゃるので、休みの日には朝4時に起きて車で4時間かけて福島まで出向いています。痛みで苦しむ方を放っておけない一心ですから、やめるわけにはいきません。普段の診療日も同じで、90代の方には昼休みに訪問診療に伺いますし、24時間いつでも葉山ハートセンターと連携し私が対応できる体制を整えています。末期がんの疼痛に苦しむ方のご自宅へ夜遅くに往診し、トリガーポイント注射を施すこともできます。患者さんの力になりたいという思いが原動力です。
患者さんと接する際に、大切にされていることを教えてください。
患者さんに対して絶対にネガティブな発言をしないと決めています。「きっと治るよ」「きっと歩けるようになるよ」と前向きな言葉をかけ続けると、患者さんの表情が変わるんです。どんな方が来られても、自分の家族だったらどうしてあげようと考えて全力で向き合う。これは父から受け継いだ姿勢です。整形外科の領域にとどまらず、がんの相談など幅広い悩みにも親身に耳を傾けるようにしており、何か困ったことがあればまず相談していただける存在でありたいと思っています。将来的には小児科の医師の弟や脳外科の医師の義兄とも力を合わせ、ここに来ればどんな悩みにも対応できるような総合的な医療体制を築いていくことが目標です。
最後に、痛みに悩む読者の方へメッセージをお願いします。

諦めかけている痛みでも、少しでもご相談いただければ改善が期待できる場合もあります。私はいつでも全力でここにいますので、遠慮なく頼ってください。実は私自身、手の痛みで手術ができなくなるほど苦しんだことがあります。何をしても治らず眠れない日々を過ごし、最後は注射を打ったんです。そのとき、痛みというのは本当につらいものだと実感しました。だからこそ、痛みで困っている方の気持ちが痛いほどわかります。お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、誰でも痛みで困っている方がいたら、全力で痛みの緩和に努めます。せっかく技術があるのだから、周りの方に少しでも楽になってもらいたい。それが私の願いです。

