今西 宏明 院長の独自取材記事
いまにしクリニック
(横須賀市/京急大津駅)
最終更新日:2023/10/04
京急大津駅から徒歩6分にあるのが、「いまにしクリニック」。クリニック内に入ると、広々とした空間が印象的な待合室がある。ゆったりと座れるソファーが配置されており、患者が診療前に感じがちな緊張をほぐしてくれそうだ。今西宏明院長は、大学卒業後に都内の大学病院のほか、海外や関東エリアの病院で研鑽を積み、2008年に同クリニックを開業。大学病院や大規模病院では、患者に対して十分な心の手当てを行うことができなかったと話す今西院長。開業後は、患者の心のケアにこだわり、地域の医療に貢献。温かく優しい、そして相談しやすい雰囲気で、多くの患者に信頼されている。和やかな院内は、患者だけでなくスタッフにとっても快適に過ごせるスペースだ。今回は今西院長に、クリニックの特徴や今後の展望について話を聞いた。
(取材日2023年8月28日)
大切にしていること、それは患者の心のケア
大学卒業後、この地に開業されるまでの経緯を教えてください。
2008年にこのクリニックを開業しました。1987年に浜松医科大学を卒業。その後は長い間、東京大学医学部附属病院の肝胆膵外科・人工臓器移植外科で勤務しました。大学病院で、先端医療を駆使した治療を手がけ、専門性の高い数多くの症例を経験させてもらえたことは私の財産です。そうした環境での仕事にやりがいを感じつつも、40代後半になると気持ちに変化が生じました。これまでのように専門性に特化するのではなく、診療範囲を広げてこれまで以上に患者さんの心にふれる診療に携わりたい、開業したいという想いがこみ上げてきたんです。そして、のどかな土地柄で、高齢者をはじめとする地域住民の皆さんと密な関係を築くことができるこの地を、開業場所に決めました。
クリニックのコンセプトについて教えてください。
患者さんは誰もが悩みを抱えているので、患者さんの心に、繊細かつ慎重に配慮して、日々の治療を行いたいと思っています。大学病院やほかの病院での勤務医時代は、治療が完了すると、そのタイミングで医師としての対応も終了します。これまで、数多くの悪性腫瘍の患者さんと接してきました。医師の対応が終わったとしても、患者さんは常に再発を恐れ、一生その不安を抱えて毎日を過ごす方も多いわけです。当時の私はその部分にまで手が行き届きませんでした。患者さんの中には、その不安に寄り添われることなく、医師のケアから切り離されてしまう医療スタイルに、満足できない方もいるのではないでしょうか。勤務医時代は、こうした悩みに対して、何も手を差し伸べることができなかった悔しさとやるせなさを感じる日々でした。この気持ちが私の根底にあるので、自分のクリニックでは患者さんの心のケアを大切にしています。
訪れる患者さんの傾向について、お聞かせください。
当クリニックは小児患者も受け入れているので、年齢層はお子さんから80代までの幅広い世代の方に来院いただいています。また、近隣にお住まいの方に限らず、勤務医時代のご縁で、東京や山梨など遠方からも来られる場合もあります。医療機関の規模の大きさと病状の深刻さには相関があると思われがちですが、患者さんが悩みを抱えているという事実は、いずれの場合においても同じです。「この症状は何だろう」という患者さんの不安感は、状態の深刻度に関わらず、いずれも同じレベルだと思います。まずは不安の原因を究明するために、当院で検査を行い、診断します。その結果、治療を要する場合は大規模病院と連携しながら対応します。医師として一番やりがいを感じるのは、早期に病巣を発見し、治療が終わった患者さんと再会したときです。医療従事者は、疾患を治すだけでは不完全で、心のケアも同時に考えるべきであると感じています。
患者の悩みの大きさを推察することから始まる診療
医師をめざした理由を教えてください。
父は商社に勤めていたので転勤が多く、子ども時代を関西圏と米国ロサンゼルスで過ごし、東京で過ごすようになったのは中学生以降のことです。幼少期からプラモデルやラジオコントロール型飛行機の模型を作ることが得意で、手先が器用な子どもでした。高校生の頃、自分が社会で役に立てる・手先の器用さを生かせる職業を考えたときに思いついたのが、外科の医師だったんです。今思えば、職人やエンジニアなどの選択肢もあったのかもしれません。当時の情報収集源はテレビが主流で、まだ世の中を広範に見ることができなかったので、医師以外の選択肢には気づきませんでしたね。
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?
患者さんの中には、心の内を表現できる方と難しい方がいます。心の声を発することが不得手な方であったとしても、話しやすい環境をつくることは私の仕事の一つです。患者さんの雰囲気から、その方に適した「言葉選び」を丁寧に行い、オープン型の質問を投げかけて、長めの回答を求めるように心がけています。心を開くのに時間を要する方の場合、患者さん本人から入手できる情報量は乏しい状況にあることが多いですが、その時点で大切なのは「大きな悩みを抱えているかどうかを推察する」こと。重大な不安を相談するために来院した方に対しては、積極的にアプローチを行い、心を開いていただけるように努めます。数多くのクリニックの中から当クリニックを選び、相談するためにわざわざ出向いてくれた患者さんの不安に対して、誠意を持って接したいです。
スタッフとのコミュニケーションにおいて意識していることはありますか?
当クリニックには、看護師3人と医療事務スタッフ4人が在籍しています。毎日この人数で患者さんに対応しているため、スタッフの労力はとても大きいのですが、スタッフは常に患者さんに対して笑顔で、温かなまなざしで接してくれます。その姿を見て感じることは、スタッフへの感謝と誇らしさです。こうしたスタッフの尽力のおかげで、院内は和やかな雰囲気で包まれています。かけがえのないスタッフに働きやすい環境を提供したいという思いから、日頃よりスタッフとはできるだけ多くのコミュニケーションを取るように心がけ、公私にわたる悩みなどにも耳を傾けています。職場の共有スペースでは話しにくい相談もあると思うので、マンツーマンの面談機会などを活用しながら、意思の疎通を図っています。
健康寿命を長くするための予防医療に尽力したい
今西院長が予防医療に関心を持った理由を教えてください。
30代の頃までは、健康を特に意識しなくても何も問題はなかったのですが、40代で受けた血液検査で、「高めのコレステロール値」を目の当たりにしました。この出来事がきっかけで、年齢を重ねたら若い頃とは異なる生活習慣を身につける必要があることを実感。それまでは外科に専念していたものの、予防医療やエイジングケアという言葉を頻繁に耳にする時期だったこともあり、こちらの分野にも興味が湧いてきました。当院には健診で異常値の指摘を受けた患者さんが多く来院します。こうした患者さんに向けて「健康寿命を長くすること」に関心を持っていただけるように働きかけ、適切なアドバイスを提示することにも尽力していきたいと思っています。
今後の展望についてお聞かせください。
体の調子に不安があり医療機関に行きたいものの、医療機関に足を運ぶこと自体が感染症にかかるリスクにつながると考えられていた時期がありました。そうした患者さんの不安を少しでも取り除きたいという思いから、得意分野の一つでもあるITスキルを駆使して、ホームページにAI技術を活用した診断支援ツールを掲載しました。通常の医療ではありませんが、皆さんの不安に寄り添う方法としてスタートさせました。現在、このツールの進化版を構想しています。ITを活用し場所や時間の制約を受けずに医療を提供できる点に魅力を感じたので、ぜひ実現させたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
当院には子育て世代の患者さんも多く、ご家族を優先するがあまり、ご自身の健康に対する意識を軽視しがちな方がいらっしゃいます。ですがご自身の健康も大切なので、不安がある場合は医療機関を受診し、予防医療にも目を向けていただけたらと思います。定期健診を習慣化することで、異常がない場合は安心でき、仮に病巣が見つかった場合は早期の治療につながります。どんなに小さな不安でも結構です、全スタッフが心を込めてその不安に耳を傾けて相談に乗りますので、気軽にご連絡ください。