横井 英人 副院長の独自取材記事
久里浜横井クリニック
(横須賀市/久里浜駅)
最終更新日:2025/03/03

「久里浜横井クリニック」は院長である横井隆志(よこい・たかし)先生が1990年に開業したクリニック。久里浜駅から徒歩3分、京急久里浜駅西口から徒歩4分と通院しやすい場所にあり、長く横須賀市の地域医療を支えてきた。現在は、救急と外科を専門としている次男の横井英人(ひでと)副院長、脳神経外科を専門としている三男の横井育宝(やすたか)先生も加わり、親子2代でクリニックを支えている。在宅診療に力を入れており、救急専門の医師が中心となって在宅診療を行うのが最大の特徴というこのクリニックは、2025年6月に移転リニューアルを予定している。今回は、「横須賀の地に育ててもらった」と言う英人副院長に、クリニックの強みや大切にしていること、リニューアルへの思いなどについて話を聞いた。
(取材日2025年1月21日)
父の背中を見て地域医療を志す
これまでのクリニックの歴史についてお聞かせください。

院長である父が1990年に開業しました。それ以前の父は勤務医として救急医療や外科の現場で働いており、非常に過酷な生活を送っていました。夕食後の家族団らんの時間に病院から連絡が入り、緊急手術のために病院へ向かう姿を何度も見たのを覚えています。帰宅後には「こんな手術をしたんだよ」と話してくれることもあり、子どもながらに「すごい仕事だな」と感じていました。当クリニックは、そんな父が「家族との時間を大切にしたい」との思いから開業したと聞いています。とはいえ、開業医の仕事が楽というわけではありません。月曜〜土曜までの診療を、体を壊すことも弱音を吐くこともなく35年以上も続けてきたその姿には本当に驚かされます。それだけ、地域医療への強い思いがあったのだと感じています。
英人副院長が医師になられたのも、院長の影響が大きかったのですか?
そうですね。父と一緒に街を歩いていると患者さんから「先生、いつもありがとうございます」と声をかけられたり、学校の先生が父のことを「先生」と呼んだりする姿を見ると、子どもながらに誇らしかったのを覚えています。小学校の運動会で、騎馬戦で落下した生徒に、教師よりも保護者よりも早く1番に駆け寄って救護していた父の姿も、私が医師を志した原点の一つです。そして、医師になろうと決めた時から、地域医療に貢献できるようになりたいという思いを抱いていました。いつか父と一緒にこのクリニックで働きたいと思い、救急医療をはじめ、成人も小児も、内科も外科も幅広く経験を積んできました。クリニックに必要な人材になりたかったからです。そして弟も、父や私と診療科が重ならない形でクリニックを支えられる診療科として脳神経外科を選びました。
現在のクリニックについてお聞かせください。

開業から35年がたつ中で、地域の医療環境は大きく変化してきました。駅前にはいくつもの医療ビルが建ち、駅から少し離れたこのクリニックが、徐々に衰退していくのも感じていました。そこで、2022年に私が診療に加わり、救急医療で培った経験を生かして在宅診療を始めることにしたのです。在宅診療は未経験でしたが、これまで救急医療や外科、さらには離島医療にも携わってきた経験があることから、必ず地域の役に立てると確信しスタートしました。おかげさまでこの3年間で着実に成長を遂げ、今では地域の方々に貢献できていると胸を張って言えます。
親子それぞれの得意分野を生かした診療連携が強み
6月に移転リニューアルすると伺いました。

父が大切にしてきた「病気を診るのではなく、人を診る」という理念と、質の高い医療サービスはそのままに、さらに充実した体制を整えます。大きな変化の一つとして、比較的軽症の方を対象とした一次救急の受け入れを開始します。また、入院病棟の新設も予定しています。例えば、高齢の方が転倒後に搬送され、骨折や脳損傷などの異常が見つからなかった場合、通常は帰宅となりますが、当クリニックでは一晩でも入院できることで安心を提供できると考えています。さらに、介護者のレスパイト目的での入院や、お看取りの場としても役立てていただけたらと思います。もう一つの取り組みとして、消化器内科の女性医師を迎え、麻酔下で患者さんの苦痛に配慮した、胃・大腸内視鏡検査による本格的ながん検診をスタートします。常勤医師を増やし、地域の皆さまにさらに頼りにしていただける大型の多機能クリニックをめざします。
新しいクリニックは、どのような施設になりますか。
1階が救急車の受け入れスペースです。エックス線撮影やCT、MRIといった検査設備も完備し、スムーズに検査や診断ができるよう配置しています。そして、より高度な医療が必要と判断された場合は、連携している横須賀市立総合医療センター(現・横須賀市立うわまち病院)へ迅速におつなぎすることも可能です。また、2階は外来の診察スペース、3階が入院病棟となっていて、シンプルで安心感のある一般病室と、シックで高級感漂う特別室を用意しました。4階には医局や事務スタッフのオペレーションルームなどがあり、5階がリハビリテーション室となる予定でいます。屋上には人工芝を敷き、入院患者さんが外の空気を感じながら歩行リハビリテーションを行えたらいいなと考えています。
親子2代でクリニックを経営されているメリットはどのような点でしょうか?

診療の連携が自然に取れるのが最大のメリットではないでしょうか。父の豊富な経験と地域に精通した知識を基盤に、私と弟がそれぞれの得意分野で補い合っています。私は救急医療や在宅医療を幅広く担当し、弟は専門的な治療を担うエキスパート。それぞれの持ち味を尊重し、良い部分を最大限に発揮しながら、足りないところを補い合えるのが大きな強みです。性格も三者三様で、父は誠実で地元愛も深く、私は考えるより先に行動するタイプ、弟は慎重で論理的に考え、記憶力も優れています。違う性格が絶妙に噛み合い、チームとしての安心感を生み出していることが私たちの誇りです。
感謝を胸に、ここ横須賀の地域医療を支えたい
先生が診療で大切にしていることを教えてください。

医師として、自分の意見を押しつけないことを大切にしています。治療方針を決めるのはあくまで患者さん自身やご家族であり、医療者は選択肢を提供する立場だと考えています。患者さんやご家族の希望を最優先にしたいので、「薬はなるべく飲みたくない」「自宅で過ごしたい」など、どんなことでも遠慮せず話してほしいです。私自身、特に在宅医療に力を入れていることもあり、ご家族が「家に連れて帰りたい」と思っているのに、医療者の都合で退院がかなわないような状況はつくりたくありません。不安なく帰れるよう全力でサポートするのが自分の役割だと思っていますので「これは無理かもしれない」と思わず、どんなお願いでも気軽に話してください。できる限り希望をかなえられるようサポートしますし、本当に難しい場合はそのようにお伝えします。
今後の展望を聞かせてください。

まず、リニューアル後のクリニックを年中無休で365日稼働させることを目標としています。休日や夜間だから対応できないという状況をなくし、何かあったときに頼れる体制を整えたいと考えています。もう一つの目標は、啓発活動です。人生100年時代、ただ長生きすることよりも、健康寿命を延ばすことが重要です。そのため、予防医学や健康維持についての情報を広く発信し、多くの人に健康意識を持ってもらいたいと思っています。現在も動画配信サイトやSNSを通じて情報を発信していますが、クリニックの情報などにとどまらず、より幅広く役に立つ知識や健康情報を届けたいと考えています。地域医療を担う存在として、疾患の治療だけでなく健康維持にも積極的に貢献していきたいです。
読者へのメッセージをお願いします。
当クリニックの院長である父が横須賀市で開業してから35年、地域の皆さまに頼っていただき、支えていただいたからこそ、家族が不自由ない環境で育つことができました。私が医師になれたのも、この環境があったからです。そう考えると私は横須賀の地に育ててもらったといっても過言ではなく、この地域に恩返しをしたいという思いが、今回のリニューアルにつながっています。この大型多機能クリニックをめざすことは、家族一丸となって挑む大きな挑戦です。今までも、そしてこれからも、地域の皆さまに感謝し、現状に甘んじることなく、自分たちができることを模索していきます。何かあったらいつでもご相談いただければと思います。