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石川友章 院長の独自取材記事

医療法人社団方伎会 石川クリニック

(日野市/高幡不動駅)

最終更新日:2019/08/28

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京王線高幡不動駅から歩いて5分ほど。関東3大不動の1つ、高幡不動尊金剛寺に向かう参道沿いの建物で平成元年に開業した漢方専門の「石川クリニック」は、1995年に参道から少し離れた今の場所に移転、通算の歴史は27年余りに及ぶ。石川友章院長のもとには、地元はもとより、遠方からもたくさんの患者が訪れ、その診断と漢方薬の処方には厚い信頼が寄せられている。江戸時代には医療として世界最高のレベルにあったという日本の漢方のエッセンスを受け継ぎ、西洋医学の技術も活用した、現代式の漢方医療を実践。「ほかでは難しい病気も、漢方でなら治せるかもしれません」と語る声はどこまでもおだやかで、きっと患者の不安を和らげ、静かに励ますことだろう。そんな石川院長に、漢方の基本的な考え方や診断法などを中心に語っていただいた。
(取材日2015年10月5日)

漢方とは全身的な「治療学」である

診療科目と漢方との関係について教えてください。

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当院は診療科目として内科、胃腸科、小児科、皮膚科、神経科および心療内科を掲げていて、それぞれを受診される患者さんに、漢方に基づく診療を行っています。少し分かりにくいでしょうが、国の定める標榜科目の中に“漢方科”の区分がないため、このような形となっているわけです。私は医師免許を取って内科でスタートした後、漢方を本格的に学んで、日本東洋医学会認定の漢方専門医となりました。漢方とは基本的に体全体に対する「治療学」なので、西洋医学のように診療科目や診断名が細かく分けられていないことも、分かりにくさを助長しているかもしれません。例えば、皮膚科は私の専門ではないですけれど、漢方的な手段によって治療はできるんです。従って、普通の皮膚科でなかなか治らない患者さんの紹介を受けることも度々あり、患者さんの混乱を避けるため、皮膚科も標榜しているという事情があります。

漢方は急性期の治療にも有効ですか?

漢方には気長に体質改善を促す治療法というイメージがあって、それも間違いではありません。でも、急性期に治したい時にもしっかり役立ちます。一番いい例は、激痛を伴うこむら返りです。分析的な科学では原因を1つに特定しにくい症状ですけれど、正しく処方した漢方薬を飲めば、およそ2分から4分で痛みが取れます。また、あまり知られていないのがインフルエンザで、急性期に来院された場合、葛根湯や麻黄湯で1、2時間のうちに発熱を和らげ、治癒に向かわせることが可能です。時間がないといえば、昔、私の父が、心電図上はっきりとした狭心症発作と思われる胸の痛みを訴えたことがあります。すぐに3つの生薬を集め、本来は煎じるんですがミキサーで粉末にしてからお湯で成分を出して飲ませることで、痛みも取れ、心電図も正常化しどうにか急場を切り抜けられました。

漢方と西洋医学の併用について、どのような考えをお持ちですか?

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漢方医学が隆盛を極めた江戸時代とは違って、今は漢方だけを学んだ医師はいませんから、裏返せば、漢方専門医も西洋医学にちゃんと通じています。ですから、患者さんの危機管理を高めるという観点から考えて、昔風の漢方のやり方だけを押し通すのではなく、西洋医学の優れた部分を組み合わせたほうがいい、というのが私の考えです。漢方の診断法では脈診や腹診によってさまざまな体の異状を察知するわけですが、例えば心不全が疑われる患者さんの場合、今の状態を説明するために、心電図やレントゲン写真も活用しています。ただ口頭で伝えるより、理解しやすいのは間違いないでしょう。このように画像や数値で明瞭に示せるところが西洋医学の良さなので、上手に取り入れることで、患者さんに漢方の診断をより納得していただけると思います。

「根拠に基づいた医療」を漢方は先取りしている

漢方薬の優れている点について教えてください。

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よく「漢方薬は副作用の心配がない」と言われますが、これには少し説明が必要です。西洋医学の薬にはその根底に、もとは毒物である成分の作用を、解熱などさまざまな目的に利用するという考え方があります。ですから熱を下げる以外に何らかの副作用も伴うことになりますが、一方で、漢方薬に用いる生薬に副作用が一切ないかというと、そんなことはありません。ただ、漢方では患者さん一人ひとりの状態に合わせて、例えば今の患者さんの体力なら少し毒作用があっても大丈夫だといったような判断をした上で、病態になるべく影響が及ばないように生薬を選んでいます。同じ葛根湯でも、患者さんによって中身を微妙に変えているんです。このことが副作用によるダメージの少なさにつながっているわけですが、それには医師の正しい見立てが不可欠であることもご理解いただきたいと思います。

漢方独自の診断法とはどのようなものですか?

最も特徴的なのは脈診と腹診で、そのほかの問診や視診などは西洋医学と基本的に変わりがありません。西洋医学で「脈を取る」というと脈拍の数や速度、不整の有無をみるわけですが、漢方の脈診はもっと微妙な、脈の性質まで調べます。脈が通常より沈んでいる、脈拍が微弱といったことから、患者さんがうつ状態にあることも見当がつきます。そうした脈の状態と患者さんの年齢を考え合わせることで、仕事のストレスで参っているのかなとか、夫婦や親子の関係に悩んでいるのかなとか、今の生活の状況までも垣間見えますね。もちろん具体的にプライベートを詮索することはありませんが、こうしたおおよそのところが分かるだけで、診療時間の短縮に大いに役立ちます。患者さんご自身が話したがらなくても、脈とお腹はウソをつかないというのが実感ですね。

腹診の特徴についても教えてください。

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肝臓を例に説明すると、ベッドに横になっていただき、手でお腹を触ってみて、腫れがないかなどを診ます。この時、肝臓そのものに触れているのではありませんが、肋骨の下あたりの感触に抵抗が感じられれば、これは「胸脇苦満」という状態であると分かるのです。こうした腹診で確かめられる個々の状態などを「証」といい、これは今の医療界でよく耳にする“エビデンス”(医療を行う際の根拠となるもの)に近い概念だと思います。1700年代に日本で書かれた「腹証奇覧」という漢方医学の書物には、この証の分類によって、どの場合にどのような薬を処方すればいいのかが詳しく書かれています。つまり、西洋医学で最近重視されるようになったエビデンス・ベースト・メディシン(根拠に基づいた医療)の考え方を、漢方は300年近くも先取りしていた、と言ってもいいでしょう。

漢方の門を叩いたのは「治したい」の一念から

先生が漢方の専門医になろうと思った理由をお聞かせください。

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やはり1人でも多くの方の病気を治したいからで、漢方を専門にしたこともその一環に過ぎません。今の日本では漢方が特殊な分野になっているので、これを極めること自体が目的のように見えるかもしれませんが、そうではなく、西洋医学の治療に足りないものを補えると思ったから漢方に切り替えたんです。最初は母校の慈恵医大で先輩だった方に基礎の手ほどきを受け、内科医師になってから5年ほど独学で学んだ後、師匠に当たる山田光胤先生と出会ってさらに知識を広げ、経験も積みました。すべて大学の外での修業でしたが、「治したい」という強い気持ちがあるから、特に苦労をしたとは思いませんね。漢方だけでなく、内科に勤務していた間、感染症を中心に勉強したり、内視鏡や透析まで経験したことも、医師としての財産になっています。

先生からみて漢方の一番の良さはどこにあると思いますか?

日本で大きく花開いた漢方医学の原点は、中国から伝来した「傷寒論」という書物です。傷寒すなわち腸チフスなどの高熱を伴う急性疾患の治療法について書かれているのですが、この中に、医者が判断を誤ったから患者が下痢をしてしまった、という内容の記述があります。いいなと思うのは、これに続けて、誤診で下痢をさせてしまった場合にはこうしなさいと、失敗への対処の仕方が詳しく説明してあること。つまりこの書物は、医師も人間、時には間違えるものだという認識の上に成りたっているのです。もちろん、誤診をしても構わないと言うつもりはありません。しかし、ミスは絶対にあってはならないとただプレッシャーをかけるのと、いくら努力してもミスは起りうると想定しておくこととは違います。こうした態度に漢方の知恵、懐の深さを感じますね。

最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

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医療が提供するべきものは「安心」だと思っています。病気を治すことが一番の安心ですが、結果のことだけを言いたいのではありません。患者さんにもよくお話しするのですが、病気に立ち向かうとき、昨日より今日、今日より明日はもっと良くなると思えるなら治る見込みがあるし、逆に悪くなるんじゃないかと不安に駆られると、本当に症状が悪化していくものです。患者さんが心安らかに治療を受けられるかどうかは、もちろん私たち医師にかかっている部分が大きいですが、患者さんご自身の気持ちの持ちようでもあります。だから、体調を崩してもあまり悲観的にならず、きっと治るんだと思うようにしてください。いつでもご相談に応じます。二人三脚でがんばりましょう。

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