奥隅 廣人 院長の独自取材記事
奥隅医院
(松戸市/上本郷駅)
最終更新日:2025/02/05
新京成線上本郷駅南口を駅前のメインストリートを歩くこと3分。地域の健康を担ってきた「奥隅医院」が、新たな場所で診療を開始した。地域医療の架け橋としての役割をさらに強化し、より多くの患者に寄り添う環境を整える。「迷ったらまずは相談してください」と話す奥隅廣人院長は、患者と直接向き合い、どんな小さな不安にも耳を傾けることを信条としている。地域の医療機関との密接な連携により、症状に応じた適切な治療を迅速に提案。リニューアルした診療所では、独立した検査室を設け、従来よりも快適な空間を提供しながら、生活習慣病の早期発見や専門的な検査の充実を図る。長年地域に根差してきた診療所の役割を絶やすことなく、より多くの患者が安心して通える場所へと生まれ変わった奥隅医院。リニューアルに踏みきった思いについて聞いた。
(取材日2025年1月16日)
地域に寄り添い医療の架け橋となる診療所
リニューアルの経緯を教えてください。
移転前の診療所は、医師である父の代から50年ありました。建物自体は頑丈でしたが内部の老朽化が進み、リフォームでは抜本的な改善が難しい状況でした。さらに、住宅街に位置していたため、新しい住民には認知されにくいという課題もありました。地域の患者さんとのつながりを守り、これからも医療を提供し続けるためには、新しい環境が必要だと考えました。そんな中、一昨年の秋に理想的な場所でテナントが空き、移転に向けた手続きを開始。こうして、新たな環境での診療ができるようになり、町の医療を絶やすことなく、この地域で診療を続けられることを何よりうれしく思っています。これからも町の診療所として、寄り添いながら、安心して通える環境づくりに励みます。
リニューアルにあたり、こだわった施設や設備はありますか?
患者さんが快適に過ごせる空間づくりを最優先に考え、待合室の広さを大幅に拡張しました。待合スペースと診療スペースを分けることで、より明るく快適な環境を整え、小さなお子さんからご高齢の方まで、安心してリラックスできる空間となっています。さらに、診察室と検査室を分離し、内視鏡・超音波・エックス線など各種検査室を設けることで、健康診断や検査のニーズにも柔軟に対応できるようになりました。旧診療所には、春に満開となる桜の木があり、地域のシンボルとして親しまれてきました。新しい診療所へ移植することはできませんでしたが、その存在を感じてもらえるよう、ロゴマークや内装、外装に桜をモチーフとして取り入れています。桜色や若草色の壁を採用し、旧診療所の親しみやすさを大切にしたデザインにしました。
リニューアル後、患者層にどのような変化がありましたか?
現在の場所は旧診療所から200mほどしか離れていませんが、駅から真っすぐのメインストリート沿いで、町の人々が行き交う生活の場となっています。そのため、診療所の認知度が高まり、お子さんからご高齢の方まで通院される患者さんの層が広がりました。今の時期は、風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症での受診もありますし、地域の小児科が少ないことも影響して、お子さんの受診も多いですね。遠くの診療所を利用していた方や、当院を知らなかった方も来ていただけるようになりました。全体に層が若返ったと言いますか、患者さんが自分の病状に関心を持ち、積極的にご相談くださるケースも増えていて、診療所としての役割がさらに広がっていると実感しています。
子どもから高齢者まで地域医療の最初の窓口に
先生の治療方針をお聞かせください。
私の診療方針は、「患者さんを断らない」こと。外科の医師だった父の影響を受け、人の役に立つ仕事に魅力を感じるようになり、自然と外科の医師を志しました。専門は消化器ですが、幅広い症状にも対応し、患者さんに寄り添う医療を提供しています。また、当院の休診日には、地域の病院の消化器内科の外来診療も担当しています。専門的な治療が必要な患者さんはその病院につなぎ、病院の設備を活用して私が診療することで、患者さんのメリットとなっていると思います。病院の先進の設備を用いることで、例えば、がんが見つかることもありますからね。病院で手術をした患者さんのアフターフォローも当院でできますから、今後も地域医療との連携を強化し、より良い医療の提供に努めていきたいですね。
検査設備が充実しているそうですね。
これまで診察室で行っていた、内視鏡検査、超音波検査、エックス線検査は、それぞれの検査室を設けました。検査室を独立させることで、診療効率の向上も見込めますし、患者さんはリラックスして検査を受けられます。一般的な検査としては、採血検査や尿検査、心電図検査など、生活習慣病の早期発見につながる検査を実施しています。また当院は胃の内視鏡検査に力を入れていますので、患者さん自身も映像を確認できる高解像度の内視鏡を導入しました。肺がん検査で使用するエックス線検査装置は、骨密度の測定もできるような患者さんのニーズに合わせたものを選びました。消化器疾患の早期発見に欠かせない超音波検査装置は、コンパクトな機器を用いて駆動力を重視して採用しています。今後は、ホルター心電図の導入も予定しているんですよ。
診療において大切にされていることを教えてください。
どんな患者さん、疾患であっても、「人の体を診る」という一つの医療を提供するよう努めています。そのため、患者さんの症状や状況に応じて、適切な提案をできる診療所として機能できるように、日々尽力しています。小児科、整形外科、婦人科など信頼できる地域の先生方との関係性を深め、必要な場合はすぐに紹介できる体制を整えているのです。ご家族そろって頼っていただけて、良くなったら明るい笑顔を見せに来てもらえるような、そんな診療所でありたいです。
診療所は「病気を未然に防ぐ場所」気軽に相談を
先生の地域医療への取り組みについてお聞かせください。
学校医として地域の学校での内科健診や、松戸市夜間小児急病センターでの急患対応にも従事しています。また、近隣の学校で健康に関する授業を行うプロジェクトに、10年以上携わってきました。これは、子どもたちを通じて、地域全体の健康意識向上をめざすための活動です。なので実は、地域の子どもたちにはよく知られた存在なんですよ。また、長年通院されていた患者さんで、通院が難しくなった方に訪問診療を行っています。患者さんへの感謝の気持ちを込めて、足が不自由な方も安心して治療を受けられるようご自宅での診療を提供しています。訪問診療のニーズは今後さらに高まるでしょう。地域医療の一環として、必要に応じた訪問診療の拡充にも取り組みたいです。
今後の展望を教えてください。
地域に根差し、患者さんが気軽に相談できる診療所をめざしています。「こんなことを聞いてもいいのかな」と悩まず、どうぞ遠慮なくお越しください。私の口癖は、「迷ったら、まずお医者さんに相談してください」です。現在は小児科の知識を深め、より幅広い年齢層の患者さんに対応できるよう、日々学びを重ねています。私は、地域全体を「一つの大きな病院」と考えています。大学病院や大規模な医療機関では、複数の診療科が連携し、医師同士が気軽に相談できる環境が整っていますが、診療所ではその体制が十分でないこともあります。だからこそ、地域の医師同士が連携し、信頼関係を築くことで、より良い医療を提供できると考えています。
読者にメッセージをお願いします。
「健康は何よりも大切」ですよね。特に子育て中の親御さんは、お子さんを優先し、ご自身の健康を後回しにしがちかもしれませんね。しかし実は、お子さんの健康管理が親御さんの健康につながると考えています。その一つが予防接種です。お子さんの感染症を防ぐことが、ご家族の感染症対策に役立つと思いませんか? 大きな病院は主に治療を行う場所ですが、当院のような町の診療所は病気を未然に防ぐための場所でもあります。こうした違いを多くの方に知っていただけるとうれしいですね。患者さんのお話を丁寧に伺うため少しお待たせしてしまうこともありますが、体調が優れない中で来院される方にも、快適にお過ごしいただけるよう、待合室の環境を整えています。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談くださいね。