高木 恒雄 先生、高木 康博 院長の独自取材記事
高木医院
(船橋市/京成船橋駅)
最終更新日:2024/04/16
京成船橋駅から徒歩5分。フレンチレストランと見間違うようなモダンな建物が目を引く「医療法人社団ヨゼフ会 高木医院」は、この街に開業して150年以上。明治時代から代々この地で治療にあたり、地域の健康を支えてきたクリニックだ。現在は「大先生」こと高木恒雄先生と、「若先生」こと院長の高木康博先生の2人体制。ともに日本循環器学会循環器専門医で、心筋症や不整脈などはもちろん、風邪や腰の痛み、めまいがするといった症状まで幅広く診療。また、地域の在宅医療体制の充実にも取り組んでいる。大きな窓から木々の緑が望める待合室で、両先生に話を聞いた。
(取材日2016年5月17日/再取材日2023年4月26日)
街とともに150年以上の時を歩むかかりつけ医院
とても歴史のあるクリニックだと伺いました。
【恒雄先生】明治時代に開業してから私で4代目で、ずっとこの街でかかりつけ医をしています。前院長である父からここを継いだのは1983年頃です。当時は高血圧や心臓病の患者さんが多く、この辺りでほかに循環器を診る医師がいなかったので、夜中に心筋梗塞の患者さんが運ばれてくることもしょっちゅう。県の救急センターができた後は、よく救急車に同乗して心筋梗塞や脳梗塞の患者さんを送ったりもしていました。今も胸の痛みなどで来られた、循環器に関わる患者さんも診ていますが、全体で見ると風邪などの一般的な内科疾患で来られる方のほうが多いです。
恒雄先生は、医師会で地域の医療システムづくりに取り組まれていたそうですね。
【恒雄先生】1983年に船橋市立医療センターをつくる時にセンター内で病診連携の仕組みをつくり、実践したのが最初です。診療が終わってから毎日医療センターに行き、急患の対応と往診も行っていたので、当時はとても忙しかったです。平成に入ってからは、24時間体制で出動できるドクターカーをはじめとする救急医療体制を整え、在宅医療システムの構築へと進めていきました。市民も一緒に地域医療を考える啓発活動は、今も続けています。
【院長】当時僕はまだ子どもでしたが、父は診療に救急に医師会の仕事にと、とにかく忙しそうでした。患者さんに感謝され、どこへ行っても「先生、先生」と慕われている姿を見て、「大変そうだけどやりがいがあるのだろう」と思い、それが医師をめざすきっかけになりました。
お二人とも循環器がご専門ですが、特に力を入れている治療はありますか?
【院長】当院では専門に限らず内科全般を幅広く診ていて、特に生活習慣病の管理・予防に力を入れています。というのも、循環器の重い病気には心筋梗塞や脳梗塞などがあり、これは高血圧や糖尿病、高コレステロール血症、肥満といった生活習慣病が血管に負担をかけ続けた結果だからです。有名な医学者で内科医のウィリアム・オスラー博士が「人は血管から老いる」という名言を残したように、血管がダメージを受けるとつながっている内蔵もダメージを受けてしまい、実年齢よりも早く病気を発症するリスクが高まるといわれています。年齢を重ねれば血管が老けることは避けられませんが、今は「人生100年時代」。健康寿命を長く保つためにも、血管を守る意識は必要です。そのために生活改善などを通して患者さんをサポートすることが、私たちの役目だとも思っています。定期健康診断で数値が引っかかった方は、一度来院していただきたいですね。
時間をかけて長く付き合える関係を築いていきたい
診療体制について教えてください。
【恒雄先生】私と院長で週に半分ずつ担当しています。院長は週に1日、すぐ近くにある板倉病院でも診療していますね。
【院長】私が手伝いに行っている板倉病院には、当院の患者さんもよく紹介しています。必要な時には検査をお願いできて、患者さんが不調な時は入院し、良くなればまた当院に戻って来る。そんなふうに密に連携を図れる病院がすぐ近くにあるのは心強いですね。当院に通う高齢の患者さんは、多くが高血圧、糖尿病、動脈硬化などの慢性疾患を抱えています。ちょっとした不調はどうしてもあるので、そんな時に少し入院して体調を整えるための病院があることは大切なんです。
診療における目標や、心がけていることは何でしょうか?
【恒雄先生】長く通ってくれている方を、最後の看取りまで面倒を見たいと思っています。患者さんもそれを希望されている人が多いですね。
【院長】1つは検査・検診で病気の早期発見に努めること。もう1つは、慢性疾患の患者さんがその時々の体調に一喜一憂したり、振り回されたりせず、病気と付き合っていくためのサポートをしたいですね。慢性疾患はその場で決着をつけるというようなものではありませんし、治療には生活リズムを整えたり、食事管理や運動をしたりといったご本人の努力も必要です。ただ人によってライフスタイルは違うものですから、お一人お一人に合ったご提案ができるように話し合い、ペースを乱さず長く通える方法を探すことを心がけています。
こちらでは検査機器も充実しているそうですね。
【院長】心電図、24時間心電図、運動をしながらの心電図や不整脈、血圧の変化を見るトレッドミル検査、動脈硬化を判定するために血圧と脈波を測るCAVI(キャビィ)検査、エコー検査と一通りはできますし、血糖検査の機器も2台あります。検査は予約制ではないので、必要とあらばすぐに検査可能です。当院では結果も即日お伝えできるので、タイムロスなしに次の行動に移っていけることもメリット。とはいえ、最近はコロナ禍での受診控えもあり、検査をする習慣が途切れてしまった方も多く見受けられます。特にがんは、気づいた時に重症化しているリスクもあるので、早期発見のためにも1年に1度は検査を受けてほしいですね。定期検査の目的には病気の早期発見もありますが、クリニックに通う習慣を持つことで、健康意識を維持しやすいこともあります。健康について医師にアドバイスをもらう感覚で、症状がなくとも受診してほしいですね。
街のクリニックを上手に利用してほしい
訪問診療もされているんですね。
【恒雄先生】もともと当院に通ってくださっていた人を中心に、心不全や脳梗塞、神経疾患で寝たきりの方を長く診ています。昔は訪問診療を行うには、家で患者さんを看病する家族がいることが条件でした。現在は看病する家族がいなくても訪問ヘルパーや看護師など社会資源を活用して訪問診療を行い、自宅での療養を支えていこうという流れですが、実際のところまだ実践するのは難しく、最後は施設へ入ることになった患者さんもおられました。自宅療養を支えるシステムづくりにはまさに今取り組んでいるもので、船橋市の在宅医療ネットワーク「ひまわりネットワーク」と連携して、どうやったら可能か提案しているところです。
今後、さらに取り組みたいことなどはありますか?
【恒雄先生】今から数十年は高齢者の医療が社会的な問題になるでしょう。医療機関やクリニック単体では、今まで通っていた患者さんですら最後まで看取ることが難しくなってきている現状があり、地域ぐるみで連携して、地域の高齢者を診ていくというシステムがどうしても必要です。少しずつ動いていますが、個々のクリニックがもう少し積極的に参加する体制をつくっていければと思っています。
【院長】最近は訪問診療や往診を専門に行う医療機関も増えていますので、従来の仕組みに捉われず、協力していきたいですね。もちろん、通い慣れたかかりつけ医に最後まで診てほしいという方もいらっしゃいますから、当院でもできる限り力を尽くします。
最後に、地域の人たちに向けて一言メッセージをお願いします。
【恒雄先生】「かかりつけ医を持ちましょう」という一言に尽きます。
【院長】クリニックは医療への窓口。小さいけれど、どのクリニックもしっかり連携しています。相談していただければ有意義な情報が得られるかもしれないし、必要ならすぐに大きな病院へ紹介することもでき、時間・お金の節約にもつながるので、上手に活用してほしいですね。一度行ったクリニックに通い続けなければいけないというわけではないので、近くの所にまず行ってみて、自分に合う先生を探しましょう。それから、当院では患者さんが不安なく通えるように感染症対策も徹底してきました。新型コロナウイルス感染症は5類になりましたが、引き続き細心の注意を払いたいと考えていますので、発熱症状がある方は、今後も事前に電話していただいてから受診をお願いします。院内感染を防ぎ、安心できる医療を提供するため、皆さんにもご協力いただけますと幸いです。