成毛 哲 院長の独自取材記事
成毛医院
(市川市/南行徳駅)
最終更新日:2025/10/29
1984年の開院以来、地域に根差した診療を続けてきた「成毛医院」。2016年のリニューアルを機に副院長として診療に携わり、2025年に院長へと就任した成毛哲先生は、消化器内科を専門としながら、かかりつけ医として幅広い診療にあたっている。診療の根底にあるのは患者一人ひとりとの会話を大切にすること。一般診療から内視鏡検査まで、丁寧な説明と寄り添う姿勢を重視し、気になったときに気軽に足を運べるクリニックであることを心がけている。父の志を受け継ぎつつ、自らの経験と工夫を重ねながら、地域の健康を支える。穏やかなほほ笑みと優しい相づちが印象的な院長に、医師になったきっかけや医院への思いなどを聞いた。
(取材日2025年9月17日)
父の思いを継ぎ、生まれ育った地域に寄り添う
院長職を引き継がれた経緯についてお聞かせください。

2016年のリニューアル時から副院長として当院に勤務し、前院長である父とともに二診体制で診療にあたってきました。患者さんとの関係性も、父と診る中で少しずつなじんでいけたと思います。父が80代を迎えた頃からは診療の多くを任されるようになりました。2025年5月に父の逝去をきっかけに院長を引き継ぎましたが、長く一緒に診療してきた分、自然な流れで引き継げたと思います。父は家族にはあまり多くを語らない人でしたが、患者さんにはユーモアを持ってさまざまな言葉を伝えてきたようです。そのうちの一つがホームページにも掲載している当院のスローガン「家族を大切に夢を持って、明るく楽しく格好良く、格好良くいかなくてもまた格好良し」です。自分らしさを模索しながらも、父の言葉を大切にして診療に臨んでいきたいと思っています。
幼少期からこちらはなじみ深い場所だったのでしょうか。
1984年に開院した当院ですが、実家はその上階にあります。そのため、クリニックは日常の風景の一部でした。職場と家庭が地続きのような環境で育ったのは、今振り返ると特別な経験だったと思います。また生まれ育った地域のため、よく知っている場所で診療にあたることができているのはうれしいことです。時々同じ小学校に通っていたという患者さんがいらっしゃることもあります。この地域は昔から住む方と新しく移り住んだ方が混在し、世代も幅広いのが特徴です。そして、気さくでお話好きな方が多く、日々の診療での会話からも活力をいただいています。
医師をめざしたのはお父さまの影響があったのでしょうか。

両親から医師になれと言われたことは一度もありませんでした。医師になろうと思ったきっかけは、高校生の時の経験でした。実家がクリニックだったこともあり、友人から「風邪のときはどうしたらいい?」などと体調の相談を受けることが多く、父に尋ねたり自分で調べて答えたりしていました。「体調が良くなった」と感謝されることもあって、とてもうれしかったんです。そこで「人の役に立つっていいな」と感じたのが原点です。地域の人と近くで関わる町のお医者さんというスタイルにやりがいを見出し、医師の道を志しました。
患者に合わせた診療スタイルで対話を重視
患者さんの層や診療のこだわりについて教えてください。

当院には消化器症状で受診される方が多いですが、風邪や生活習慣病、健康診断など幅広い相談が寄せられます。診療で大切にしているのは患者さんとの対話です。病状や生活習慣、時には世間話も含めて患者さんの声に耳を傾けます。説明を丁寧にしたほうが安心できる方もいれば、簡潔で要点を押さえた説明を望まれる方もいます。フレンドリーなやりとりが好きな方もいれば、ある程度距離感を大切にしたい方もいます。声のトーンや言葉遣いを含めて工夫し、相手に合わせることを意識しています。日々の会話の積み重ねが信頼につながり、治療の質を高めると考えています。これはスタッフとのやりとりにも通じていて、お互いに思っていることを言いやすい関係性を心がけています。事業効率も上がりますし、何より私たちに余裕がなければ、患者さんにも伝わります。具合が悪くて来院されたのに心配をかけては元も子もありませんよね。
力を入れている治療について教えてください。
特に力を入れているのは私の専門である内視鏡検査です。内視鏡は、胃や食道、大腸などに発生するがんの診断はもちろん、潰瘍や炎症、ポリープ、逆流性食道炎といった幅広い病気の発見にも役立ちます。胃内視鏡検査は経鼻内視鏡を採用し、鼻のむくみ取りや粘膜の麻酔を丁寧に行って痛みを抑えるなど、負担の少なくするための工夫をしています。高齢の方が多いため、血圧の低下や呼吸への影響を鑑み、全身麻酔は使わず、声をかけながら安全に配慮して進めます。大腸内視鏡検査も同様に、患者さんの負担とリスクを最小限に抑えるよう努めています。画質にこだわった内視鏡を導入し、見落としのない検査をめざしています。内視鏡検査に痛みやつらさのイメージを持たれている方もいらっしゃいますが、機器や技術は大きく進歩し、以前に比べて体への負担はぐっと少なくなっています。その上で、より精密な観察や診断ができるようになっています。
院内の設備などでこだわっているところはありますか。

2016年のリニューアル時には、前院長とともにクリニック全体の改装に携わりました。特に私の専門である内視鏡検査については、地域の方々に安心して受けていただけるよう、専用の検査室や換気設備を整えています。住宅街の中にあるクリニックだからこそ、安全性には十分に配慮し、独立換気を採用しました。さらに感染症対策として隔離待合を設けたり、診療用ベッドにカーテンを設置したりすることで、プライバシーの確保と感染症予防の両立を図っています。待合室から検査室への動線も分け、スムーズかつ安心して受診いただける環境を整えました。また、院内処方を継続している点も当院の特徴です。薬局へ足を運ぶ必要がなく、院内ですべて完結するため、高齢の方にとっても大きな負担軽減につながっています。
内視鏡をはじめとする豊富な経験を地域に還元する
院長就任前のご経験を教えてください。

勤務医時代には、内視鏡治療と化学療法を専門に診療にあたり、胃がんなどの研究も行ってきました。自分の手で治療を行えることから外科に魅力を感じていましたが、自身のイメージする地域の人の声を聞く医療のあり方とは異なっていると思いました。しかし消化器内科であれば内視鏡を使うことで診断だけでなく治療まで行える点に惹かれました。実際に取り組むと高い技術を要するため、厳しい訓練が必要でしたが、治療後には「終わりましたよ」と伝えられることがとてもうれしかったです。担当した患者さんから握手を求められたり、感謝の言葉をいただいたりすると、やっていて良かったなと思えました。
総合病院でご活躍されていた中で、なぜクリニックで後を継ごうと思ったのですか。
総合病院では、ターミナル期の患者さんと向き合うこともありました。診療の中でたくさんの会話をさせていただいたことが私にとって非常に大きな学びでした。技術や知識を高めていくことも重要ですが、私は医師として患者さんからお話を伺うことが何よりの経験だと感じています。総合病院でキャリアを積む道もありましたが、やはり生まれ育った場所で父のクリニックを継ぎ、患者さんに寄り添うことこそが自分の役割だと考えました。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

気になる症状があれば、まずは気軽に受診していただきたいと思います。ご自身では病気かどうかわからない曖昧な症状も、不安なまま過ごすより、一度相談してもらえれば安心につながると思います。患者さんのお話を伺い、必要に応じて検査や専門医療につなげていくのが町のクリニックの役割です。今後も特別なことをするのではなく、来て良かったと思っていただける診療を地道に、細く長く続けたいです。待ち時間をいただくこともあるかもしれませんが、皆さんのお話を丁寧に伺うことを続けたいと思います。内視鏡検査については、一部ウェブ予約も導入しています。基本的には当院は、予約制ではありませんので困ったことがあればいつでも気軽にお越しください。

