石川 義人 院長の独自取材記事
石川小児科医院
(千葉市花見川区/新検見川駅)
最終更新日:2026/06/23
JR中央・総武線新検見川駅から徒歩10分、落ち着いた住宅街の中に「石川小児科医院」はある。1968年に先代が開院して以来、約60年にわたり地域の子どもたちを見守ってきた小児科のクリニックだ。2代目の石川義人院長は、自宅を改装した一軒家風の温かな院内で、アットホームな雰囲気を大切にしながら診療を続けている。そんな同院が近年新たに踏み出したのが、訪問診療という挑戦だ。新型コロナウイルスの流行下で高齢者への予防接種を多く担当したことや、警察嘱託医として「人生の締めくくり」を間近に感じた経験が、その一歩を後押ししたという。話していると自然と元気をもらえる明るく気さくな人柄の石川院長に、訪問診療への思いや診療方針、今後の展望を聞いた。
(取材日2026年5月21日)
約60年続く小児科医院から、訪問診療への新たな一歩
まずは、こちらのクリニックの成り立ちについてお聞かせいただけますか?

1968年に母が小児科のクリニックとして開院して、もうすぐ60年になります。2003年に私が2代目の院長として引き継いでからも、この地域のお子さんたちへの診療を担ってまいりました。クリニックを改築した際には、患者さんの緊張を少しでも和らげれるような、温かみを感じていただけるような内装を心がけましたね。当院は開院以来ずっと小児科のクリニックとして歩んできましたが、近年新たに在宅医療にも取り組み始めました。年月を重ねる中で、高齢の方の医療にも関わりたいという思いが自然と芽生えまして、訪問診療という形で新しい一歩を踏み出したところです。
訪問診療に取り組むことになったきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは2つあります。1つ目は、新型コロナウイルス感染症が流行した際、高齢の方への予防接種を数多く担当したことです。長年お子さんだけを診てきた私にとって、高齢の方とお話しする機会は新鮮でした。接種に来られた方がいろいろと話してくださる中で、こうした時間がこれまでの自分にはなかったなと気づいたのです。2つ目のきっかけは、数年前から委嘱された警察医の仕事を通じて、亡くなった方に向き合う場面が増えたことですね。「人生の締めくくり」というものが身近になり、生まれたばかりの赤ちゃんの時からずっと子どもたちを診てきた自分が、人生の最期に関わる医療にも携わりたいと思うようになりました。自分自身が年齢を重ねたからこその変化だと感じています。
そもそも、先生が医師を志し、小児科の道を選ばれた経緯を教えてください。

両親ともに医師という家庭で育ちましたので、幼い頃から医療が身近にある環境でした。ですが、当時は「自分は親とは同じ仕事をしたくない」という反抗心みたいなものがあったのでしょう。そのことから、まずは理数系の大学に進学したんです。ところが、在学中に卒業後の自分をイメージしてみた際に、「本当にやりたいことは医業だった」と気がつき、医学の道へ進路変更しました。小児科を選んだのは母のクリニックを継ぎたいという意識もありましたが、恩師から「将来ある子どもたちを診ていきたい」という言葉を聞いて共感したことが大きかったですね。
「もしもし」の聴診で場が和むような温かな訪問診療を
訪問診療では、具体的にどのような診療に対応されていますか?

訪問先では問診や聴診、血圧測定といった基本的な診察に加え、必要に応じて血液検査や尿検査なども行います。他にも、状態を見ながらお薬の処方や調整も行いますし、ご本人やご家族と相談しながら、治療の方向性を一緒に考えていきますのでご安心ください。小児科の外来で長年続けてきた「診察所見と経過で判断する」という診療姿勢は、訪問診療の場でも生きると信じています。必ずしも検査しなくとも、対応できることはたくさんありますからね。もちろん、私一人では対応しきれない場面もありますから、必要だと判断した場合は連携する病院や専門の先生に紹介できるように、体制を整えています。通院そのものがご負担になっている方や、入院は望まないという方の日々の療養を、ご自宅で支えていくことが訪問診療の役割だと考えています。
患者さんへの声かけなどで意識されていることはありますか?
先日、高齢の患者さんに、「もしもししましょうか」とつい声をかけてしまいました(笑)。小児科でお子さんに接するときの習慣がそのまま出てしまったのですが、ちょっと場が和みました。内科の先生はまずそんな言い方はしませんからね。お子さんも高齢の方も、ご自身の症状をうまく言葉にできないことがあるでしょう。ですから、ご本人だけでなくご家族からも丁寧にお話を伺うことを大切にしています。また、訪問先は患者さんが毎日生活している場所ですから、当たり前のことですが、礼節を持って伺うことを大事にしています。診療の際、時には立ち入ったことをお聞きするケースも少なくありませんからね。さらに、お顔を見て、直接お話しして、はじめてわかることもありますので、しっかりと患者さんに向き合って診療することも重視しています。
先生の診療方針の根底にある考え方をお聞かせください。

開院当初からずっと掲げているのは、「過不足のない医療」ですね。こう思うようになったのは、研修医の頃に聞いてからずっと心に残り続けている、「決して悪くしない医療をしないとね」という先輩の医師の言葉です。この考えこそが、過不足のない医療だと思いました。大学病院に勤務していた時には、重篤な症状のお子さん、そしてその親御さんに難しい治療選択を迫る場面も少なくありませんでした。その際、自分たちにできることの限界を感じるとともに、自分たちの選択がその子の将来を変えてしまう可能性があるのだということを痛感したのです。だからこそ、必要にして十分な治療とは何かをいつも考え、過剰な検査や治療はしないことを常に意識しています。早く治そうと図ることも大切ですが、まずは安全性に配慮した治療を選ぶという、その時代に合った診療を心がけています。
診療を求める人々の声に、気持ちに応え続けたい
小児科の診療についても伺えますか?

もちろん、小児科の外来診療はこれからも続けていきます。訪問診療を始めたからといってそちらに完全に移るということではなく、できる範囲で両方に取り組んでいくつもりです。不安を抱えてお子さんを連れて来られた皆さんに、安心して帰っていただけたらうれしいです。当院には、小さい頃から来院していたお子さんのご家族から「おばあちゃんも診てほしい」と頼まれて訪問診療につながったケースもあります。そうした世代をまたいだつながりは、長くこの地域で続けてきたからこその財産です。
スタッフさんについてお聞かせください。
当院のスタッフは、全員が20年近く一緒に働いてくれています。だからこそ、厚い信頼関係が築けていると感じていますね。私の心情や理念と言ったら大げさですが、多くを言わなくても私の考えを適切にくみ取り、対応してくれているんです。例えば、いつも笑顔で優しく迎え入れるなど、スタッフ一人ひとりが患者さんに寄り添う姿勢を大事にしています。スタッフの支えは非常に心強く、いつも頼りになる存在です。ここまで診療を続けてこられたのは、スタッフの力が大きく関係しているでしょう。
最後に、地域の患者さんや読者の方へメッセージをお願いします。

私が大切にしているのは、患者さんと医師が対等でいられる関係です。「お医者さま」の時代があり「患者さま」の時代になり、いろいろ変わってきましたが、私はずっと「患者さんは患者さん、お医者さんはお医者さん」だと思っています。フラットな関係性で、「先生、診てよ」と言われたら「ああ、いいよ」と応える。そんなふうに気軽に頼っていただける間柄でありたいですね。特別な技術や飛び抜けたスキルがあるわけではありませんが、「先生に診てもらいたい」とわざわざ足を運んでくださる患者さんがいらっしゃる限りは、ずっと診療していきたいと思っています。当院を選んで来てくださる方々の気持ちにきちんと応え続けるためにも、この先も変わらず地域に根差した診療を届けていきたいと考えています。

